ひろし、出発する
おばあさんたちとロビたちは黒猫とドラちゃんが店番をしているスマイル道具店でお喋りを楽しんでいると、哲夫と和代と美咲がやってきた。
「「こんばんは!」」
「「こんばんは!」」
「哲夫さん、和代さん、美咲さん、こちらの方はロビさん、ミツさん、ゆぅさんです。とてもお強くて……」
おばあさんがロビたちを紹介していると、マユとメイとナミもやってきた。
「「こんばんは!」」
「「こんばんは!」」
「あら、ちょうどよかったわ! こちらの方は今日お手伝いしてくださる……」
こうして、おばあさんがロビたちを紹介すると、みんなは挨拶を交わしてフレンド交換をした。
黒猫とドラちゃんは猫と小さなドラゴンの姿に戻ると、黒猫が提案した。
「みなさん、少し早いようですがバリードレへ向かいませんか?」
「うん」
「いこう!」
「ぅん」
「だね」
「そうしましょう」
「そうね」
「ああ」
おばあさんたちは店を閉めるとピンデチの村の外へ出た。
そしてドラちゃんに乗り込むとバリードレの町へと飛び立った。
ー おじいさんとおばあさんの家 夜22:30 ー
おじいさんは目をこすりながら寝室から出てくると、テーブルの上に書き置きがあった。
『お饅頭どうぞ。頑張ってくださいね』
「ああ、ほんとうに助かるなぁ。ありがたい」
すると、おじいさんは居間の座椅子でVRグラスをかけているおばあさんを見つけた。
「あぁ、今日は遅くまでやってるんだなぁ。よっぽどお店が楽しいんだな。ははは」
おじいさんは、まさか20歳のおばあさんが同じ戦いに参加するとは思ってもいなかった。
おじいさんはテーブルに座って饅頭を頬張ると、食べながら今日のことを考えた。
「こんな大きな戦いは初めてだなぁ。大丈夫だろうか……。相手は多いだろうなぁ……。足を引っ張らないようにしなければ」
おじいさんは独り言を呟きながら饅頭を食べ終わると、書き置きに「ありがとう、行ってきます」と書き足した。
そして「ふぅ……」と息を吐くとVRグラスをかけた。
◆
おじいさんが時計台の前に来ると、元自衛官の3人が待っていた。
「こんばんは、ひろしさん」
「あ、こんばんは! お早いですね。今夜は宜しくお願い致します」
「宜しくお願い致します」
すると上官の山口が少し嬉しそうに言った。
「我々も、なんといいますか……、ワクワクしているんです。夜戦の訓練は総合火力演習以来ですので、何十年ぶりか」
「いやぁ、みなさん本当に心強いです」
「ちなみに、ひろしさん。戦地には行かれましたか」
「あ、はい、近くには行きました。荒野のような場所で、茶色い岩肌の山々がありました」
「なるほど……。木下、大槻! デザートだ」
すると横に居た木下と大槻と一緒にベージュのカモフラージュ柄に服を変更した。
「あぁ、みなんさん、とても格好良いですね!」
おじいさんがそう言うと元自衛官の3人は笑顔で敬礼した。そして上官の山口が言った。
「我々は地道に数々のモンスターを倒し、経験を積んでまいりました。今こそ、それが試される時が来ました」
「みなさん、本当に心強いです。突然のお誘いにも関わらず、ありがとうございます」
「いえ、我々の幸せは国民のみなさんの安寧。ゲームの中でも、それは変わりません」
「みなさん……」
おじいさんが感動していると、次々とメンバーがログインしてきた。
「あぁ、黒ちゃんさん、アカネさん、大熊笹さん、めぐさん、イリューシュさん……」
「こんばんは、ひろしさん」
「うっす、じいちゃん」
「ひろしさん、こんばんは」
「おじいちゃん、早いね」
「ひろしさん、こんばんは」
すると、おじいさんは元自衛官の3人を紹介した。
「みなさん、こちらが元自衛官のお三方です」
「山口です」
「木下です」
「大槻です」
「「宜しくお願い致します」」
「「よろしくお願いします」」
「あ! これはイリューシュ先生ではありませんか! お世話になっております!」
山口がイリューシュに気づくと木下と大槻も一緒に敬礼をした。
イリューシュは社長に頼まれて、引き続き3人の弓の指導をしていたのだった。
「イリューシュ先生! 先生のお陰で我々は格段に上達いたしました。本日はどんな強敵にも一矢報いるつもりで戦います!」
「みなさん、ありがとうございます。ですが、今日は無理をなさらずお気をつけてくださいね」
イリューシュたちが話していると、何処からともなく、おばあさんの眷属の黒猫が現れた。
そして、近づいてくるとおじいさんたちに話しかけてきた。
「みなさん、我は洋子殿の使い。ご一緒に戦いの地、バリードレへ参りましょう、村の外にドラゴンが待っております」
それを聞いたおじいさんたちは、黒猫と一緒に村の外へと向かった。
ー ピンデチの村、入り口 ー
おじいさんたちが村の入り口から外へ出ると、大きな黒いドラゴンになっているドラちゃんが待機していた。
黒猫はドラちゃんのところへ歩きながら案内した。
「みなさん、どうぞ尻尾からドラゴンの背にお乗りください」
ドラちゃんはゆっくりと尻尾を降ろし、みんなが乗れるようにした。
おじいさんたちは、次々とドラちゃんに乗り込み、バリードレへと出発した。
◆
ドラちゃんがバリードレへ向かう途中、元自衛官の山口が黒猫に尋ねた。
「猫殿、敵の潜伏先をご存知でしょうか」
「申し訳ございません。我も把握していないのですが、あの山間が明るいのが気になっておりまして」
「なるほど。少し近くを飛べませんでしょうか」
「わかりました。ドラゴンは黒いゆえ、夜空には隠れましょう」
黒猫はそう言うと、ドラちゃんに明るい山間の方へ飛ぶように指示を出した。
ドラちゃんは見つからないように山間の上空の高い高度を飛ぶと、山口は上から山間を観察した。
「猫殿、沢山のプレイヤーたちが居るようですね。しかも全員黒装束とは」
「はい。中央の広場では沢山の品を分けているようです。アジトと見て間違いないかと」
「ふむ。5つの道が中央の広場へと繋がっている。道の太さはだいたい均等で逃げるにも適している……」
その横では木下がスケッチブックに物凄い速さで地形をスケッチしていた。
そして大槻は空の上から双眼鏡で敵プレイヤーたちの状態を把握した。
「山口殿、敵は弓兵3割、近接武器5割、その他2割ほどです」
「そうか。あの高い北西の山の上からは5つの通路全てが見渡せそうだ。敵は弓兵をあそこへ配置すると思うのだが、どう思うか?」
「わたしもそう思います。もし敵の弓兵が配置されなくとも、まずは北西の山の制圧が先かもしれません」
山口と大槻は目を合わせて頷くと、山口は黒猫に言った。
「猫殿、ありがとうございました。目的地へ向かってください」
「わかりました」
ドラちゃんは空中で進路を変え、黒の屋敷があるバリードレの町へと向かった。




