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ひろし、まん丸を手に入れる

 ルルが玄関を閉めると、ベンドレは思わずルルに言った。


「お、おい。あれでは、いくらなんでも緊張してしまうんじゃないか?」


「いいのよ。ってか、女の子がデートのお誘いに気づかない訳がないじゃん。誘わないで帰っちゃったら()めるのよ。あたしはチャンスをあげたの!」


 それを聞いていたChocoとミッチも笑顔で大きく頷いた。


 するとまた玄関の外から海の声が聞こえてきた。


「お、おれ。フレア・ウィルスのせいで学校でつむぎちゃんに会えなくてさ……。でも会いたくて、このゲーム始めたんだ」


「う、うん」


「こ……、こんど、一緒にコーシャタに遊びに行ってください!」


「……はい」


 バァン!!!


「うわぁ!」

「きゃぁ!」


 ルルは再び玄関を開けて飛び出すと、腕を組みながら海に言った。


「上出来ね! やるじゃない」


「え、は、はい!」


「ねぇ2人とも、その道を下ると海岸があるの。そこで綺麗(きれい)な貝殻を20枚集めてきてくれない? お店の飾りに使いたいの」


「ええ!?」


「はい、はやく2人で行ってきて!」


「は、はい!」

「はい!」


 海とつむぎは返事をすると恥ずかしそうに笑いながら道を下っていった。


 ルルは2人を見送ると笑顔で家のみんなに言った。


「面白いもの見せてあげる。家から海岸のほうを見てて」


「おお」

「え、なんだろう」

「たのしみ!」

「楽しみですね」


 ルルは、つむぎたちから少し離れて身を(ひそ)めながら道を下っていった。



 海とつむぎは海岸に着くと、貝殻を探し始めた。


「海くん、これ綺麗」


「ほんとだ。あ、ここにもあったよ」


「ほんとだ、きれいだね」


「うん」


 それを見ていたルルは杖を高く(かか)げると笑顔になりながら呟いた。


「ふふ、いい雰囲気ねー。あたしの最高魔法で盛り上げてあげるわ」


 ルルが詠唱を始めると、海の上に無数の小さな魔法陣が現れた。


「え? 魔法陣!」


 つむぎがそれに気づいて指を差すと、海も空を見上げた。


 その瞬間、無数の光の矢が海に向かって落ちていき、美しい流星群を作り出した。


「わぁー、きれい!!」

「ほんとだね!」


 ルルは笑顔で空を見上げる2人を嬉しそうに見ながら、MPが尽きるまで流星群を作り続けた。


 ◆


 しばらくして流星群が消えると、家から見ていたおじいさんたちも笑顔で家の中へ戻っていった。


 そして程なくして、つむぎとルルも家に戻ってきた。


「ただいまー」

「ただいま」


 ミッチとChocoは走ってつむぎを迎えた。


「流れ星すごかったね!」

「ねぇ。海くん、どうだった?」


「え、う、うん。明日ね、一緒にコーシャタで買い物することになったんだ……」


「ええー、いいなー」

「なんか、あたしが緊張してきた!」


「で、でもね!」


「「え?」」


「ゲームの中で着れる可愛い服持ってなくて……」


 それを聞いたルルはニヤリと笑うと、つむぎに言った。


「うふふ。そういう事なら、お姉さんにまかせて。服あげるわね」


 ルルは服をアイテム欄から探し始めると、つむぎは驚きながらルルに言った。


「え、ええ? いいんですか?」


「いいわよ。あたしも楽しくなってきちゃって。うふふ。……えっと、ティーンならこのスカートと……」


「あ、ありがとうございます!」


「いいの、いいの。……あとは、袖の長いふんわりトップスと……、シューズはコレが良さそうね。はい、オッケ。着てみて」


「あ、はい」


 ポワン


 つむぎはルルから送信された服を身につけると、みんなから歓声があがった。


「「おお~~!!」」


「かわいい!」

「つむぎちゃん、ホントいい感じ!」

「さすがルル、やるなぁ」

「つむぎちゃん、とっても可愛いですよ」


 それを聞いたルルは、どや顔で言った。


「あたし一応アイドルだし、こっちのほうは得意なのよねー」


 つむぎは鏡を見ると、満面の笑顔になってルルにお礼をした。


「ルルさん、ありがとうございます! とっても可愛いです」


「いいのよ。あたし、つむぎちゃんたちに花をやってもらってるし、これくらいお礼させて」


「え、は、はい。ありがとうございます! わたしも、お花がんばります!」


 つむぎは鏡の前でクルクルと回りながら嬉しそうに自分の姿を見た。


 おじいさんも嬉しそうにつむぎを見ていると、ふと床の木箱にまん丸の石がたくさん積まれているのを見つけた。


 おじいさんは石に近づいて見てみると、それを見たベンドレがおじいさんに話しかけた。


「ひろしさん、どうしました?」


「あ、はい。ちょうど野球ボールくらいの大きさで、まん丸なので投げやすそうな石だと思いまして」


「なるほど。この石は装飾用に拾ってきたのですが、石にも投げやすい物があるんですね」


「はい。カーブを投げるときは出来るだけ丸い石を選んでいたのですが、やはり思ったようには曲がらないんです。でも、この石なら……」


「良かったら、いくらでも使ってください。この石はレスカカルというエリアに一杯落ちてるので、また拾ってきますから」


「ほんとうですか? ありがとうございます!」


 おじいさんは深々と頭を下げると石を1つ拾い上げてみた。


「これは! ちょうど野球ボールくらいの重さです!」


「おお、野球ボールはこのくらいの重さなのですね」


 ベンドレも石を1つ拾い上げると重さを確かめてみた。


 おじいさんは嬉しそうに石を5つ拾うと、ウエストバッグに仕舞いながら言った。


「ベンドレさん、これは本当に良さそうです。ありがとうございます」


 それを見ていたベンドレはおじいさんに尋ねた。


「ひろしさん、5つだけで良いのですか?」


「はい、ウエストバッグにはこれくらいしか入りませんので」


「あ、なるほど、石はアイテム扱いにならないのでアイテム欄に仕舞(しま)えないですね」


「ええ、そうみたいなんです」


 するとベンドレは麻の袋を5袋出現させて、おじいさんに渡した。


「ひろしさん、これをどうぞ。この袋に入れた物は『麻の袋』としてアイテム欄に仕舞えます」


「そんな便利な物を頂いても宜しいのでしょうか」


「いえいえ、こんな物で良ければ沢山持っていますから。その袋一杯に丸い石を入れてください。そうしてもらえると私も嬉しいです」


「ベンドレさん、大変助かります。ありがとうございます」


「いえいえ、そんな」


 おじいさんは深々と頭を下げると、嬉しそうに石を麻の袋に詰めていった。



 その頃、つむぎに花を持っていった海は、逃げた友達と一緒にピンデチのカフェに居た。


「海、さっきは逃げてごめんな。でもお前スゲェな、逃げないなんて!」

「海くん、僕も怖くって逃げちゃった。ごめんね」


「い、いやいや、ぼくに勇気が無かったから……。ショウくんとタッくんが居てくれなかったら家にも行けなかったよ」


「い、いやぁ」

「へへ」


 すると、海の友達の元気なショウが言った。


「なぁ、デートの約束できたのか?」


「え? う、うん。一応」


 それを聞いた内気な友達タクが嬉しそうに言った。


「わぁ、良かったね海くん」


「へ、へへ。うん」


 ショウは笑ってる海に言った。


「なぁ、プレゼントはどうすんだ?」


「え? プ、プレゼント?」


「そうさ。初デートにプレゼントは必要だろ?」


「そうか! さすがショウくん。そうだよね!」


「おう。俺んちは姉ちゃんが居るからな。姉ちゃんの通話聞いてるとなんとなく色々わかるんだよ」


「すごいよショウくん! も、もっと教えてくれないかい」


「ああ、いいぜ!」


 すると海とタクは身を乗り出してショウの話を聞き始めた。

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