ルル、飛び出す
その頃ピンデチでは、おばあさんのお店の隣で深夜営業をしているロビの店に数人のプレイヤーが訪れていた。
ロビはおばあさんの友人で、後輩のミツとゆぅと一緒にクリア保証でクエストを手伝う仕事を現実世界で販売していた。
「クエストの手伝いを装ってプレイヤーを倒してるのって、お前たちじゃないよな。おれの友達けっこう殺られたんだけど」
ロビは困った顔で頭を下げながら説明した。
「たしかに僕たちはクエストのお手伝いをしていますが、主にイークラトで活動しておりまして……」
「なんか、やられた友達が赤い剣を持ってたって言ってたぞ。それってレッドドラゴンの剣だろ? レッドドラゴンってイークラトだよな」
「いえいえ、僕たちはホワイトドラゴンの剣と防具一式で戦っておりますので……」
すると、ミツがホワイトドラゴンの槍、ゆぅがホワイトドラゴンの片手剣を見せると、ハイレベルな武器にプレイヤーたちは驚いた。
「え、これ、本物?」
それを聞いたロビは自分の杖も出して見せた。
「はい。ちなみにですが、この杖もホワイトドラゴンのものです」
「え、マジで?」
プレイヤーたちは珍しそうに見ると、ロビに言った。
「すまなかった、勘違いしてたみたいだ。ごめん」
「い、いえいえいえ!」
すると他のプレイヤーも謝りながら言った。
「疑ってごめんなさい。そんな装備持ってるレベルなら、わざわざレッドドラゴンの装備は使わないですよね」
「え、ええ。ははは。でも僕たちも、手伝いを装ったプレイヤーキラー(プレイヤーを殺すプレイヤー)の話は聞いています。僕たちも何とかしなければと思っていたんです」
「そうですよね。評判が悪くなりますよね」
「はい、そうなんです」
それを聞いたプレイヤーたちは口々にロビに言った。
「すまなかった。このお店は信用できるってツイッタグラムに書いておくよ」
「わたしも書いておきますね」
「おれも拡散しておきます! 疑ってすみませんでした」
「あ、ありがとうございます!」
ロビは帰っていくプレイヤーたちを見送ると、ミツとゆぅに話した。
「そろそろ僕たちも動かなきゃならないみたいだね」
「うん」
「はい」
物静かなミツとゆぅは、静かに返事をした。
その頃、おじいさんたちはメインクエストを進めるためにハーイムの町の入り口に居た。
先頭を歩く黒猫は立ち止まって振り返ると、みんなに尋ねた。
「みなさんの中で、海賊と戦うのを楽しみにしていらしゃる方はおりますか」
「えっと……、できれば戦いたくないかなぁ」
「船が手に入れば何でも……」
「他の大陸に行って美味しいもの食べたいだけで……」
「戦うの、苦手で……」
「花を集めたいだけなので……」
すると黒猫はハーイムの町の中へ向かいながらみんなに言った。
「承知しました。では付いてきてください。敵は全てプレイヤーではないので我が倒します」
「「ええ!?」」
みんなは驚きながらも黒猫に付いていくと、前からNPCの町人が走ってきた。
「うわー、助けてくれー海賊だー」
「ひゃっはー! この町のお宝はオレたちがもらったぜー!」
海賊を確認した黒猫は、みんなに言った。
「みなさん、少しだけ目を瞑っていてください。あまり見ないほうが良いと思います」
「「はい」」
みんなが目を瞑ると、
パンッ! ブシャァ
「へぶっ」
パンッ、パンッ! ブシャァ
「うげっ」
「ぎゃっ」
何かが破裂する音と悲鳴が3回した。
「みなさん、目を開けていただいて結構です。先へ行きましょう」
みんなが目を開けると消滅していく海賊たちが居た。
「う、うわ。強っ」
「え、なに、もう倒したの?」
「猫ちゃん、すごい!」
するとNPCの町人は、いつものように言った。
「ありがとうございます! お守り頂いたお礼に、ぜひ伝説の宝玉を見ていってください」
NPCの町人は村の中心の大きな宝物庫へ案内すると、扉を開けた。
それを見た黒猫はみんなに言った。
「みなさん、また目を瞑ってください」
「「はい」」
「はっはっはー! 我こそは世界の海を股にかける海賊……、く……」
グググ……、パンッ!
「ひぶっ!」
『15ポイントのステータスポイントを獲得しました』
『メインクエスト 第二章 完』
「え、やった! クリアした!」
「うそ、早っ!」
「うれしい!」
「よかったー」
「やったー、良かったね!」
みんなが嬉しそうにしていると、おじいさんが笑顔でみんなに言った。
「町の奥に船があるはずですから、船に乗ってピンデチへ戻りましょう」
「「はーい!」」
こうしておじいさんたちは船でG区画の海岸へと戻っていった。
◆
おじいさんたちは船でG区画の海岸に帰ってくると、みんなで時計台へ向かって歩いていった。
そしてその途中で、おじいさんはみんなに言った。
「みなさん、わたしはあちらの家に行きますので、ここで失礼致しますね」
「ありがとうございました、おじいさん!」
「助かりました!」
「ありがとうございます」
「助けてくれて、ありがとございました!」
「本当に助かりました」
「ひろし殿、我も店に戻りますゆえ洋子殿によろしくお伝えくださいませ」
おじいさんは頭を下げながら笑顔でみんなに手を振るとG区画の家へと向かった。
そして、いつものように坂道を登っていくと、家の前に若い男性の騎士が3人いた。
「おや? イリューシュさんのお友達だろうか……」
おじいさんは騎士たちに近づくと3人に挨拶をした。
「こんばんは。イリューシュさんのお友達ですか」
「え!?」
「誰だ!」
「う、うわっ!」
「はじめまして。わたしはこの家に住まわせていただいている者です」
「やべぇ」
「逃げろ!」
ダダダダダダ
2人は逃げ出したが、1人だけ真面目そうな男性が残って、おじいさんに話しかけた。
「こ、こ、こんばんは。ぼ、ぼくは、つむぎさんに、花を持ってきました」
「あぁ、つむぎちゃんに会いに来たんですね。ええと、中に居るのかな」
おじいさんが家の中に入ると、奥の部屋から声がした。
奥の部屋の扉は開いていて、部屋の中ではルルとベンドレ、そしてつむぎとChocoとミッチが花をテーブルの上に置きながら話をしていた。
「みなさん、こんばんは」
おじいさんが挨拶をすると、みんな一斉に笑顔で挨拶を返した。
「あ、こんばんは、ひろしさん」
「お邪魔していますー」
「こんばんは!」
「ひろじいちゃん!」
「こんばんは」
「つむぎちゃん、若い男の子が花を持ってきたって玄関で待っているよ」
「えっ!?」
するとChocoとミッチは嬉しそうにつむぎに聞いた。
「海くん!?」
「うそ、ほんとに!?」
「え、う、うん、たぶん。お花お願いしたの」
つむぎは恥ずかしそうに玄関に走っていくと、みんなもコッソリと付いていった。
ルルは恥ずかしそうに走っていくつむぎを見ると、嬉しそうにベンドレに言った。
「あの顔、恋してるわね」
「お、おお。青春だな」
Chocoとミッチもニコニコしながら付いていくと、つむぎは玄関の外へ出て静かに玄関を閉めた。
みんなは一斉に玄関に耳を押しつけると、玄関の向こうからつむぎたちの会話が聞こえてきた。
「海くん、ありがとう。本当にお花を取ってきてくれたんだね。大変だったでしょ」
「い、いや、ぜんぜん! ま、またいつでも頼んでくれよな」
「うん、ありがとう。うふふ」
「へ、へへへ。あの……、つむぎちゃん! こ、こんど一緒に……」
「……え? 今度一緒に……?」
玄関の裏に居るみんなは一斉に耳を玄関に押し付けた。
「あ……、いや、何でも無い……、ごめん」
バァン!!!
「うわぁ!」
「きゃぁ!」
突然ルルが玄関を開けて飛び出し、海を指さしながら言った。
「ちょっと! なによ、何でも無いって! ズッコケたじゃない!」
「え、あ、す、すみません!」
するとベンドレがルルを止めながら言った。
「ま、待つんだルル! 男にも色々あるのだ!」
「だめよ! こういう時はビシッと! ビシッと決めないと!」
それを聞いていたChocoとミッチもウンウンと頷いた。
ルルはフンフンと鼻息を荒くすると、片手を腰に当てて玄関を閉めながら言った。
「はい、もう一度やり直しね」
パタン
「え……、ええ!?」
動揺する海は、恥ずかしそうにしているつむぎを見ると、体中から大量の汗をかき始めた。




