ひろし、お手伝いする
おじいさんが時計台の前に現れると、なんと時計台の近くで2人の女の子が泣いていた。
「ひどいよ……。お金も取られたのに」
「うん……。だまされちゃったね……」
その話を耳にしたおじいさんは、2人に優しく声をかけた。
「こんばんは。何かあったのですか」
「……はい」
「お金を払ってメインクエストを手伝ってもらう約束だったんですけど……、だまされて後ろから斬られちゃって……」
「あぁ……、それはひどいですね。ところでメインクエストの何章でしょうか」
「2章です」
「船に乗りたいんです」
「ハーイムのクエストですね」
「はい」
「そうです」
「よかったら、わたしにお手伝いさせて頂けませんか」
「え?」
「ほんとですか?」
「はい、ハーイムはクリアしておりますので。少し乗り心地は悪いですがモービルもありますよ」
「ええ!?」
「やった! うれしい!」
女の子たちは笑顔になると、おじいさんも笑いながら言った。
「ははは、良かった。では行きましょう」
「「はい!」」
おじいさんたちがハーイムへ向かうために村の外へ向かって歩きだすと、前からおばあさんの眷属の黒猫が、猫の姿で歩いてきた。
すると2人の女の子たちは黒猫を見て喜んだ。
「あ、ねこ!」
「かわいい!」
黒猫はおじいさんを見つけると、おじいさんに話しかけてきた。
「こんばんは、ひろし殿。黒猫でございます」
「これはこれは、こんばんは」
それを聞いた女の子たちは驚いておじいさんに言った。
「え、喋る!」
「この猫ちゃん、お知り合いですか?」
「はい。お友達で」
黒猫は女の子たちに頭を下げるとおじいさんに尋ねた。
「ひろし殿、どちらへ?」
「これから、こちらのお2人と一緒にメインクエストに行くところなんです」
「そうでございますか。もし宜しければ、我もご一緒させて頂いても宜しいでしょうか。洋子殿の夫であるひろし殿は我が主も同然」
「それは心強いです。ところで黒猫さんのご用事は大丈夫でしょうか」
「はい。我はこれからピンデチのお店に戻って休むだけでしたので」
「お休みのお邪魔ではないですか」
「いえ、まだ時間が早いので問題ございません。お供させて頂きます」
「たすかります。ありがとうございます」
こうして、おじいさんたちはハーイムへと向かった。
◆
ハーイムに到着すると、女の子たちと黒猫は荷台から降りた。
おじいさんも軽トラから降りると軽トラを仕舞って、ウエストバッグから石を1つ取り出した。
すると、
「え!? あの人!」
「あ! あの人だ!」
女の子たちが驚いて声をあげたので、おじいさんは2人に尋ねた。
「あのお若い男性、お知り合いですか?」
「あの人に騙されたんです!」
「また誰かと一緒に居るよ。騙そうとしてるよ絶対!」
女の子たちがそう言った瞬間、若い男性は一緒にいるプレイヤーたちを先に進ませて、後ろで剣を抜いた。
それを見た女の子の1人が大声で叫んだ。
「危ない、逃げて!!」
すると、若い男性と一緒に居たプレイヤーたちは一斉に振り向き、剣を抜いた若い男性に驚いた。
「「わぁー!」」
若い男性は構わずに剣を振りかぶると、一緒にいるプレイヤーたちに斬りかかった。
シャァァァアアアア……、ガン!
「ぐわっ!」
おじいさんは急いで石を投げると、若い男性の頭に命中させた。
石を当てられた若い男性は怒りの形相で、おじいさんのところへ向かってきながら声をあげた。
「おい、ジジィ! お前、最近噂になってる石を投げるジジィだな。けっこうHP減るじゃねぇか」
おじいさんはウエストバッグから石を取り出すと、握りしめて攻撃に備えた。
すると黒猫がおじいさんに言った。
「ひろし殿、あの赤い剣はレッドドラゴンの剣。弱くはなさそうです」
「そうですか。ここは頑張らなければなりませんね。ははは」
「わたしが魔法陣で防御しますので、攻撃をお願いします」
「はい。よろしくおねがいします」
ブゥーン
黒猫がおじいさんの前に魔法陣を展開すると、若い男性は笑いながら言った。
「へぇぇ。その猫、マガイルーの猫の魔道士じゃん。たしか、眷属は倒したら頂きだったよな。こいつはラッキーだぜ」
おじいさんは近づいてくる若い男性に投球フォームをとった。
それを見た若い男性は、おじいさんに言った。
「おいおい、さっきは油断したが、そんな石なんか良く見てれば、簡単に剣で弾き返せ……」
シャァァァアアアア……、ガァン!
「いってぇ!!」
おじいさんが高速ストレートを投げると、若い男性はスピードに対応しきれず肩を撃ち抜かれた。
シャァァァアア……、ガン!
「うぐっ!」
シャァァァアアアア……、ドガァン!!
「ひっ!」
おじいさんは、超高速ストレートを立て続けに投げると、若い男性は逃げ腰になりながら叫んだ。
「な、なんて速い石投げるんだよ! くそ、HPがやべぇじゃねぇか!」
若い男性は慌てて全回復薬を出現させた。そして、飲もうとした瞬間、
パァン……
「なっ!」
黒猫が魔法で全回復薬を吹き飛ばした。
「……くそっ、逃げるが勝ちだ!」
若い男性が慌てて逃げようとした瞬間、
「全てを焼き尽くす魔神よ、我に灰塵に帰す力を与えたまえ!」
「地の力を司りし精霊よ、我にその偉大な力を与えたまえ!」
なんと、女の子たちが同時に詠唱した。
ボワァァアアア!
ドガガガガガン!
「うわっ、くそ!」
女の子たちの魔法は殆ど効かなかったが、逃げる男性の足を止めた。
それを見た襲われていたプレイヤーたちは女の子たちの勇気に答えるように武器を抜いて走り出した。
「おれたちも戦うぞ!」
「ああ! やるぞ!!」
「防御はおれに任せろ」
プレイヤーたちは男性に総攻撃を浴びせた。
「く、くそぉぉ!!」
男性は一斉攻撃を受けるとHPがゼロになり、消滅していった。
「「やったー!!」」
女の子たちと襲われていたプレイヤーたちは一緒に喜ぶと、満面の笑顔でおじいさんにお礼をした。
「ありがとうございます!」
「すごい強かったです!」
「ありがとうございました」
「助かりました!」
「つ、強いですね、おじいさん」
「いえいえ、こちらの黒猫さんのお陰で安心して戦えました」
「ひろし殿、ご謙遜を。我は何も……」
「わ、喋った!」
「え、めっちゃイケボ(良い声)!」
「しゃべる猫だ」
黒猫は驚くプレイヤーたちに頭を下げると、おじいさんはプレイヤーたち尋ねた。
「みなさん、メインクエストでしょうか」
「はい、そうです」
「第2章を終わらせたくて……」
「でしたら、せっかくですから、みなさんで一緒に行きませんか?」
「良いんですか!?」
「みんなで行けば心強いです!」
「やった、嬉しい!」
それを聞いたおじいさんは笑顔でみんなに言った。
「では、一緒に参りましょう」
「「はい!」」
こうして、おじいさんたちは出会ったプレイヤーたちと一緒にハーイムへと向かった。




