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ひろし、再び

 ー 現実世界、おじいさんとおばあさんの家 ー


 おじいさんとおばあさんは現実世界に戻って夕食をとっていた。


「いやぁ、おばあさんのお店の前をいつも(とお)ってたなんてなぁ」


「うふふふ。なんだか今日一日で色々スッキリしたわ」


「ははは、それは良かった」


 ピロリロリン


「おや? メッセージかな」


 おじいさんがスマホを見てみると、イリューシュからメッセージが来ていた。


 ーーーーーーーーーー

 イリューシュ:こんにちは、ひろしさん。明日の日中なのですが、お時間ありますか?


 ひろし:こんにちはイリューシュさん。はい、大丈夫です


 イリューシュ:実は社長から野球場のテストをお願いされたのですが、ピッチャーお願いできませんか?


 ひろし:ほんとうですか?やらせてください


 イリューシュ:ありがとうございます! 明日はゲーム(じゅう)の野球経験者が集まってテスト試合をするんです。


 ひろし:よろしくおねがいします


 めぐ:わたし見に行きたい!


 アカネ:あたしも!


 漆黒の剣士:わたしも行きたいです


 つむぎ:わたしも見たい!<キラキラ>


 ひろし:きんちょうします


 イリューシュ:見学は自由ですからみんなで応援しに行きましょう! ひろしさん、明日の午前10時にG区画の家にお願いしてもいいですか?


 ひろし:はい

 ーーーーーーーーーー


 おじいさんは静かにスマホを置くと、ふぅっと息をついておばあさんに話した。


「明日、ピッチャーをやることになったよ」


「ええ!?」


「野球のテスト試合みたいで……。なんだか緊張するなぁ」


「あらあら、またおじいさんの格好の良い姿が見れますね! わたしも見に行けるのかしら」


「ああ、見学は自由だそうだよ」


「まぁ、見に行かなくちゃ!」


「いやぁ、緊張するなぁ。ははは」



 ー 翌日 ー


 おじいさんはバリードレの戦闘跡地(せんとうあとち)に新しく出来た野球場へイリューシュと一緒にやってきた。


 この野球場は社長と専務の大谷が、この場所が再び戦闘に使われないように建てたものだった。


 おじいさんはイリューシュの案内で球場に入ると、渡された青軍のユニフォームに着替え、イリューシュと一緒にグラウンドへ出た。


 グラウンドでは沢山のプレイヤーたちがキャッチボールをしていたが、それを見たおじいさんは驚いた顔でイリューシュに言った。


「イリューシュさん、あの方は元プロ野球選手の初柴選手では……」


「あ、今日はプロ・アマ問わず集まっていると言っていました」


「本当ですか!? あ、あの方は、田城選手!」


「ふふふ。なんだか凄い人たちが居るみたいですね」


「え、ええ。これは緊張してきました……」


 その時、社長がやって来て大きな声でみんなを集めた。


「みなさん、おはようございます! 集合おねがいします!」


「「「はい!」」」


 ダダダダダダダダダ


 プレイヤーたちは社長の元へ集まった。


「みなさん! 本日はよろしくおねがいします!」


「「「オナシャース!」」」


「本日のチームはAIで平等に分けさせてもらいました。今日は急な開催で9人ずつギリギリですので、代打は無しでお願いします」


「「「はい!」」」


「本日は赤軍と青軍に分かれて模擬戦を行っていただきます。赤軍のキャプテンは初柴さん、青軍のキャプテンは田城さんとさせて頂きました」


「「「はい!」」」


「今日は監督も居ませんので各自のご判断で楽しんでください! ではスタンドにお客様をご案内しますので準備をお願いします!」


「「「はい!」」」


 すると、田城選手がやってきておじいさんたちに言った。


「青軍のみなさん、こちらへお願いします!」


「「はい!」」


 ダダダダダダ


「おはようございます、青軍のキャプテンになりました田城です! 今日は頑張りましょう!」


「「はい!」」


「ではお互いの自己紹介をしましょう。わたしは田城です。ゲーム好きの元プロ野球選手で、ゲーム実況もやってます」


「「おおーー」」


 パチパチパチパチ


「では、左から。自己紹介をお願いします」


 一番左側に立っていたおじいさんは慌てて自己紹介を始めた。


「ひ、ひろしです。高校時代、甲子園でピッチャーを務めました。本日は宜しくお願いします!」


 パチパチパチパチ


 おじいさんは自己紹介を終えて胸をなでおろすと、今度は胸が高鳴っていくのを感じた。


 ◆


 全員が自己紹介を終えると、キャプテンの田城がおじいさんに言った。


「ピッチャーのひろしさん、わたしたちは後攻ですのでキャッチャーのマサさんと、肩慣(かたな)らしをお願いします」


「あ、はい!」

「はい!」


 すると、マサはおじいさんに話しかけた。


一昨日(おととい)はどうも、翠さんのところの魔術武闘家、マサです」


「あ、これはこれは。一昨日はお疲れさまでした。野球をなさるんですね」


「ははは。一応、社会人野球ではそれなりに成績出してるんっすよ」


「それは素晴らしいですね。今日はリードお願いします」


「いやー、がんばります。今日は楽しみましょう!」


「はい」


 おじいさんは笑顔で答えるとマウンドへと向かった。



 その頃、G区画の家のメンバーとおばあさん、そして課題を急いで終わらせた孫のつむぎが球場のスタンド席に入ってきていた。


 アカネはおじいさんを見つけると、指を差してみんなに言った。


「あそこで投げてるの、じいちゃんだよな!」


「ほんとだ、おじいちゃんだ!」

「ひろしさん、格好良いですね」


「いやぁ、ひろしさん凄いですなぁ」

「ひろしさん、楽しそうですね」


「洋子おばあちゃん。ひろじいちゃん、野球できるんだね」


「そうよ、凄かったんだから。懐かしいわ」


 するとアカネがスタンドの上にお店があるのを見つけた。


「ねぇ! フランクフルトにチョコバナナ、それに焼きそばにお好み焼きもあるよ! とりあえず何か買おうよ!」


 アカネが嬉しそうに走っていくと、みんなも笑顔でついていった。


 ◆


 スタンドが観客でいっぱいになると、スタジアムにウグイス(じょう)のアナウンスが流れた。


『これより、赤軍と青軍によるテスト試合を開始致します』


「「「わーーーー!」」」


『1回表。赤軍の攻撃』


 アカネは焼きそばを食べながら大声でおじいさんを応援した。


「行けー、じいちゃん! 優勝だー!!」


「「ははははは」」


 周りから小さく笑いが起こると、めぐがアカネに説明した。


「アカネ、優勝とか無いから!」


「え、そうなの?」


 アカネが驚いていると、肩慣らしを終えたおじいさんが投球練習を始めた。


 シャァァアアア……、バン!


 おじいさんの速球を見たつむぎは、驚いておばあさんに言った。


「え!? 洋子おばあちゃん、ひろじいちゃん、すごいね!」


「ええ。格好良いエース・ピッチャーだったのよ」


「へぇぇ」


 おじいさんは球の感覚を確かめるように投球練習を続けた。


 シュゥゥウウウ……ググッ、バン!


 緩やかなカーブを受けたマサはニヤリと笑うと、マサはおじいさんに速いカーブを投げるようにサインを出した。


 おじいさんは小さく(うなず)くと、握りを変えて大きく振りかぶった。


 シャァァアアア……カクッ、バチン!


 マサは球の速さと落ちるカーブの落差に対応できず、球を取りそこねた。


「おっと!!」


 マサは立ち上がると球を拾いに行きながら(つぶや)いた。


「これは面白い事になりそうだ。へへ」



 おじいさんたちが投球練習を終えると、赤軍のバッターがゆっくりとバッターボックスに入った。


『さぁー、始まりました! 実況のタックです! 解説は元プロ野球選手の佐藤さんです』


『よろしくおねがいします』


『さて、青軍のピッチャーは、ひろしさんですが、なんとバトロワイベントで石を投げて建物を破壊しています』


『ははは、それは凄いですね。先程投げていた高速カーブは並のピッチャーでは投げられません。面白くなりそうですねぇ』


『はい。そして外野にはあの田城もいます』


『そうですね。これは楽しみです』



 するとその時、主審(しゅしん)が試合開始を宣言した。


「プレイ!!」


「「「わーーー!!!」」」


 スタンドが一気に盛り上がると、おじいさんはゆっくりと両手を上げて投球フォームに入った。


『さぁ、記念すべき第一球……、ピッチャー振りかぶって……、投げました!』


 シャァァアアア……、ズバン!


「ストラィィーッ!!」


「「「わーーー!!!」」」


『ピッチャーひろし、ど真ん中のストレート! ストライク!』


『いやぁ、記念すべき第一球にふさわしい、堂々としたストレートでした』


 おじいさんは緊張しながらも少し笑顔になった。

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