ようこ、受験する
ドラちゃんがピンデチの入り口に着地すると、コーシャタ行きのバスが待機していた。
すると運転手をしている昨日の総司令官、山口がドラちゃんに駆け寄ってきて挨拶をした。
「これはこれは、ドラゴン殿! 昨日は素晴らしいご活躍ありがとうございました!」
「はっはっは! 洋子様のためなら当たり前です!」
すると同じく運転手の木下と大槻がやって来てドラちゃんに挨拶をした。
「昨日はお疲れ様でした!」
「素晴らしいご活躍、恐れ入ります!」
「ありがとうございます! 全ては洋子様のためです」
すると洋子は少し恐縮しながら元自衛官の3人に挨拶をした。
「こんにちは。すみません、わたしドラちゃんの主人の洋子なんです。今まで若い姿で嘘をついていて……」
それを聞いた山口たちは笑顔になって洋子に答えた。
「おぉ、そうでしたか!」
「今のお姿のほうが素敵ですよ」
「我々と同世代とは嬉しいですね」
それを聞いたおばあさんも笑顔になると、嬉しそうに頭を下げた。
その時、木下が「あっ」と思い出しながら山口に相談を始めた。
「山口殿、バスが定員オーバーで乗りきれなくなりました。どういたしましょうか」
「どのくらい乗れないのだろうか」
「ざっと10名程です」
それを聞いたおばあさんがバスの待機しているほうを見ると、不安そうな顔をしてバスに並んでいるプレイヤーたちが見えた。
おばあさんはその様子を見てドラちゃんに尋ねた。
「ねぇドラちゃん。わたしは試験を受けてくるから、あの並んでいる方たちをコーシャタへ連れていってあげてくれないかしら」
「はい洋子様。お安い御用です」
それを聞いた山口は慌てた表情でおばあさんに言った。
「本当によろしいのでしょうか。お手間をかけてしまいますが……」
「ええ、ドラちゃんも了承してくれましたし」
「大変助かります。ありがとうございます!」
山口はお礼をすると、不安そうに待っているプレイヤーたちに大きな声で呼びかけた。
「バスは定員になりましたが、並んでいる皆様はこちらへいらしてください!」
すると、バスに並んでいるプレイヤーたちが走ってやって来た。
「皆さん、今日は特別にドラゴン殿でコーシャタへお送りします。どうぞ尻尾からドラゴン殿にお乗りください!」
ドラちゃんは尻尾を伸ばした。
ザワザワザワザワ……
プレイヤーたちは少し怖がったが、次々と尻尾からドラちゃんの背中に登っていった。
そして全員が背中に乗ると、ドラちゃんは背中のプレイヤーたちに言った。
「みなさん、わたしの突き出したウロコにしっかりと掴まっていてください!」
「「はい」」
「では行き飛びますよ!」
バサッ バサッ バサッ
ドラちゃんはフワリフワリと優しく飛び上がると、ゆっくりとコーシャタへと向かった。
「すごい! はじめて空飛んだ!」
「写真撮ってツイッタグラムにアップしようよ」
「そうだね! すごい!」
ドラちゃんを見送った山口は、おばあさんに再びお礼をした。
「洋子さん、大変助かりました。このお礼は後ほど必ず致します。では我々は出発いたしますので、すみませんが失礼致します」
「いえいえ大丈夫ですよ、お仕事頑張ってくださいね」
山口たちは、おばあさんに敬礼をすると次々とバスに乗り込んで出発していった。
おばあさんは山口たちを見送ると、試験を受けにピンデチのデータセンターへと向かった。
その頃、バリードレの外れの山には昨日倒されたベンドレの元メンバーたちが集まっていた。
「なぁ、すげぇ気分悪いんだけど」
「ああ。昨日さんざんやられたからな」
「おれもワケわかんねぇアルマジロにやられてよ」
「うわ、なんか最低だな」
元メンバーたちは大勢で集まって昨日の愚痴を言い合っていた。
「てかさぁ、やられたまんまで気が収まんないんだけど」
「だよな」
「じゃあ、プレイヤー狩りにいく?」
「は? おれらステータスほとんど戻ってねぇぞ」
「ああ」
「っても、雑魚相手なら問題ねぇだろ」
「お、いいねー」
「ピンデチか?」
「あぁ。雑魚しか居ねぇ」
「やっか?」
「いこうぜ」
元メンバーたちはニヤニヤと笑い合った。
ー ピンデチ ー
その頃、おばあさんはピンデチのデータセンターの端末にかじりついて試験を受けていた。
「ええと……、これは岩キノコね」
ピンポーン
「やったわ! 次は……、あ、これは赤薬草ね」
ピンポーン
「うふふ。いつも仕事でやってる事ね。ええと次の問題は……、砂漠地帯ね」
ピンポーン
♪ タータタタータタター ♪
『全100問正解、おめでとうございます。調合スキルを獲得しました』
「あ! やったわ!」
おばあさんは、調合スキルを一発合格で獲得した。
「これでシャームのお店でも調合できるわね!」
おばあさんは喜んでデータセンターを出ると、小さくなったドラちゃんが待っていた。
「洋子様、お疲れさまでした。結果はいかがでしたか?」
「合格したわ!」
「なんと! さすがは洋子様、素晴らしいです!」
「ありがとうドラちゃん。じゃぁ、さっそくシャームに帰りましょうか」
「はい、そうしましょう!」
おばあさんはドラちゃんを肩に乗せると、歩いてピンデチの村の外へと向かった。
そして、村の外へ出ると何やら争うような声が聞こえてきた。
おばあさんが声のするほうを見ると、若い男女のカップルが3人の騎士に襲われていた。
「すみません! ゆるしてください」
「うるせぇ! 俺たちは何しろムカついてんだよ!」
ズバッ!
「うわぁぁ……」
「た、たすけて!」
若い女性が逃げ出したのを見たおばあさんはドラちゃんに言った。
「ドラちゃん、あの子を助けてあげて!」
「はっ! お安い御用です!」
パタパタパタパタ
ボワン!
ドラちゃんはパタパタと飛んでいくと、店番用のイケメンの姿になった。
そして女性と騎士たちの間に入ると、ポーズを決めながら騎士たちに言った。
「洋子様のご指示は、こちらの女性を助けること。あなたたちが素直に帰るなら許してあげましょう」
「うるせぇ! 邪魔すんじゃねぇよ!」
1人がそう言うと3人の騎士は一斉に襲いかかってきた。
「仕方ありませんね」
パチッ
ドラちゃんは指を鳴らすと、真空波が騎士たちを切り裂いた。
スパッ! スパッ! スパッ!
「え?」
「やられた?」
「ここピンデチだよ……な?」
3人は消滅していった。
その時おばあさんは、遠くに黒ずくめの騎士たちが大勢居るのを見逃さなかった。
そしてその騎士たちはなんと、ちょうどコーシャタから帰ってきたバスへ向かって突撃していった。
「大変! ドラちゃん、バスが!」
「はい、洋子様。バスを守るのですね!」
「ドラちゃん、お願い!」
「お任せください!」
ボワン!
ドラちゃんは大きなドラゴンの姿に変身すると、素早く羽ばたいてバスのところへ飛んでいった。
しかしその時、他の黒ずくめの騎士たちがモービルでやってきた。
騎士たちは、おばあさんを見つけると、モービルを降りて全員で突撃してきた。
「おらぁ! 殺せぇ!」
「ひゃっはー!」
「おらおらおら!」
「あ!」
おばあさんは慌ててお店のグループチャットにボイスチャットを繋いで言った。
「たすけて! ピンデチの入り口に黒ずくめの騎士が!」
おばあさんはボイスチャットを切ると急いで詠唱はじめた。
「凍てつく氷の女神たちよ、我に冷血なる力を与えたまえ。凍る六花の……」
ドッ!
「うっ!」
しかし遠くから矢が飛んできて、おばあさんの詠唱が中断させられた。
すると突撃してきた騎士の1人が声をあげた。
「おらぁ! プレイヤー狩りだぁ!」
「ああっ!」
おばあさんは慌てて安全地帯のピンデチの村へと走り出すと、前から美咲が走ってくるのが見えた。
「洋子さん!」
「美咲さん!」
美咲は洋子とすれ違うように走って出ると、素早くステップして敵の一団に走り込み、次々と騎士たちを突き刺していった。
ドッ! ドド! ドッ! ドドド!
「「うわぁー!!」」
騎士たちは次々と消滅していったが、なんとまた次々と黒ずくめの騎士たちがモービルに乗ってやってきた。




