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ようこ、打ち明ける

 その頃、おばあさんは和代とピンデチのお店でお喋りをしていた。


「も~哲夫さん、昨日はH区画の家に帰ってからも、ずーと喋ってて。おれが魔法使いを引き止めたんだー、って」


「うふふ。でも哲夫さん、本当にすごかったですよ」


「そ、そうなんですけどね……。でも朝までずっと喋ってて、今日は全然起きないんですもの。困っちゃうわ」


「うふふ。たまには良いじゃないですか。今日は2人でゆっくりお店番しましょう」


 昨日のパーティーでみんなは遅くまでお喋りしていたので、店にはおばあさんと和代とナミしか来ていなかった。


 そこで3人は今日はゆっくりやろうと話し合い、おばあさんと和代は店番、ナミはイリューシュのところへ弓を習いに向かったのだった。


 そして、おばあさんの眷属の黒猫とドラちゃんは出店したばかりのシャーム2号店の店番をしていた。


 するとその時、マユからお店のグループチャットにメッセージが来た。


 ーーーーーーーーーー

 マユ:だめだ、今日の課題ぜんぜん終わんない!


 メイ:やば、もうすぐ提出期限!ナミ終わってる?


 ナミ:終わってる。ワンタイでトウファたべた


 マユ:ええ!


 メイ:まじか


 ナミ:みんなに、トウファ買った


 洋子:ナミさん、嬉しいわ


 和代:楽しみにしていますね


 マユ:え、ぜったい食べたい、課題がんばる


 メイ:mi too


 マユ:me tooだって


 メイ:まじか、やっぱ英語だめだわ

 ーーーーーーーーーー


「「うふふふ」」


 おばあさんと和代はメッセージを見て笑うと、おばあさんは少しだけ改まって和代に話した。


「和代さん、実は隠していたことがあって……。驚かないでくださいね。実は私75歳なんです」


 それを聞いた和代は驚くこともなく笑顔を浮かべて答えた。


「うふふ。なんとなくなんですけど……、実は同世代みたいな気がしていたんです」


「あら、それなら逆に良かったわ。なんだかずっと嘘をついてるような気がして気になっていて」


「もしかしたら、お店の子たちも何となく気づいているんじゃないかしら」


「やっぱり、そうかしら……。このお店の子たちは優しいから気を使ってくれているのかしらね」


「そうかもしれないわね。でもきっと、哲夫さんは全然気づいてないわ」


「「はははは」」


 するとそこへ美咲が走ってやってきた。


「ごめん、おばあちゃん。寝坊しちゃった」


「大丈夫よ美咲ちゃん」

「こんにちは美咲さん」


「あ、こんにちは洋子さん」


 すると和代が美咲に尋ねた。


「ねぇ美咲ちゃん、もし洋子さんが75歳だったら驚く?」


「え? あ、うん。でも、すごく度胸みたいのがある時があるし、大人だなって思う」


 それを聞いたおばあさんは美咲に年齢を打ち明けた。


「美咲さん、実は私75歳なんです。これからみなさんに打ち明けようと思っていて。美咲さん、顔の戻し方って知ってらっしゃるかしら?」


「あ、本当に75歳なんですね! でも話し方とかがお若くて、お元気ですね」


「うふふ、そう言ってもらえると嬉しいわ」


「洋子さん、左上の歯車マークをタッチしてもらえますか?」


「あ、はい」


「そうしたら、一番下の『アバターの設定』から『再スキャン』を押してみてください」


「ええと……、これね。はい」


 ぼわん


 おばあさんはいつもの姿になった。


「あら、これで元のわたしなのかしら」


 すると和代が笑顔で答えた。


「ええ。洋子さん、こちらの姿のほうが素敵だわ」


 和代の言葉におばあさんも笑顔になると、和代と美咲に改めて挨拶をした。


「改めまして、洋子です。宜しくお願いしますね」


「改めまして、宜しくお願いします」

「洋子さん、これからもよろしくお願いします」


 3人は笑顔で挨拶を交わすと、おばあさんは和代と美咲に言った。


「美咲さんが来たことですし、私はシャーム2号店の様子を見てきますね」


「はい、宜しくお願いします」

「助かります」


「では、行ってきますね」


「「いってらっしゃい」」


 おばあさんは歩いてG区画の海へ(くだ)ると、船に乗ってシャームの2号店へと向かった。



 ー シャーム ー


 シャームの2号店では、ドラゴンの眷属ドラちゃんと黒猫が店番をしていた。


 2人は店番をするために魔法の力で姿を変えていて、ドラちゃんは細身のイケメン姿、そして黒猫は哲夫の姿に(ふん)していた。


 するとそこへ、75歳の姿になったおばあさんがやって来た。


「ドラちゃん、猫ちゃん、おつかれさま。わたし分かるかしら?」


「これは洋子様、来てくださったのですね」

「洋子殿、来ていただけるとは、ありがたき幸せ」


「あら、2人ともこの姿に驚かないのかしら」


「いつもの洋子様ですが……」

「洋子殿、何か装備をお変えになりましたか?」


「あら、2人には外見は関係ないのかしら。わたし昨日までは20歳の姿で、今は75歳の姿なのよ」


「なるほど、そうでしたか! ですが洋子様は洋子様です」

「洋子殿はいつでも我らの洋子殿です」


「あら、なんだか嬉しいわね。うふふ」


「喜んでいただけて光栄です!」

「洋子殿に喜んで頂けるとは!」


 おばあさんは嬉しそうに笑うと、そこへタマシリがやって来た。


「こんにちは。洋子さん居ますか?」

(黒猫の翻訳魔法で日本語になっています)


「こんにちはタマシリさん。わたしです。洋子です」


「え? あ、ああ!」


「タマシリさん、ごめんなさい。今まで若い姿で嘘をついていたんです」


「なるほど。ですが洋子さんの笑顔は何歳になっても同じですね。洋子さんに言われて、すぐ分かりましたよ」


「あら、タマシリさん嬉しいわ。今日はサービスしちゃおうかしら。うふふ」


「ははは、ありがとう洋子さん。では全回復薬を20個ください」


「あら、そんなに! じゃあ、自分用に分けてもらった全回復薬を2つサービスで差し上げるわね」


「ほんとう? でも、大丈夫なのかい洋子さん」


「ええ、全回復薬はたくさん持っているから大丈夫よ。はい、5600プクナになります」


「ありがとう、洋子さん。嬉しいよ」


「こちらこそ嬉しいわ。ぜひ、また来てくださいね」


「うん、ありがとう洋子さん」


 タマシリは笑顔で両手を合わせると、全回復薬を受け取って手を振りながら店から去っていった。


 洋子はタマシリを笑顔で見送ると、思い出したようにアイテム欄を動かしながら黒猫に尋ねた。


「ねぇ猫ちゃん。前から不思議に思ってたのだけれど……。キノコの調合って、わたしにも出来るのかしら」


「はし。しかし、それには『調合スキル』が必要です。ピンデチで取得できる唯一のスキルです」


「あら、そうなのね。マユさんはスキルを取得していたのね」


「はい。ピンデチのデータセンターで試験に合格すれば取得できます。マユさんは勉強したのだと思います」


「まぁ、すごいわマユさん。じゃあピンデチには調合スキルを持っている人が沢山いるのかしら」


「いえ、ごく僅かです。試験問題が難しい上にピンデチあたりでは標準的な回復薬の価格が8プクナ。買ったほうが早いのです」


「……たしかにそうね。きっとゲームを進めたらお金が貯まるから、なおさら買ったほうが早いわね」


「はい。しかし洋子殿には有益なスキルかもしれません。受験をしてみてはいかがでしょうか」


「ええっ? でも問題が難しいんでしょう?」


「はい。しかしキノコの種類の見分け方や採集できるエリア、そして調合する薬の原材料を知っていれば問題ないはずです」


「あら、いつも仕事でやってる事じゃないの」


「はい、いまの洋子殿であれば合格するのではないかと」


「それなら、ちょっと挑戦してみようかしら。ピンデチのデータセンターで受験できるのよね?」


「はい。もし受験なさるのであれば私がお供いたします」


 黒猫がそう言うとドラちゃんが負けじと手を挙げた。


「いえ、わたしならピンデチまでひとっ飛びです洋子様! わたしが! わたしがお供します!」


 ドラちゃんが張り合うように声を上げると、おばあさんは少しだけ考え込んで答えた。


「そうねぇ……。じゃあ今回はドラちゃんにお願いしようかしら。猫ちゃんは帰ってきたらマガイルーにキノコ取りのお供をお願いするわね」


「はい、マガイルーへお供致します」

「洋子様! ご一緒にピンデチへ行きましょう!」


 こうして、おばあさんはドラちゃんに乗ってピンデチへと飛んでいった。


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