ベンドレ、前に出る
ゴールデン・リリーの投稿には沢山のイイネがついたが、それが原因でトラブルも起こってしまった。
イイネをつけた一人が配慮の無いコメントを残してしまったのだ。
『これ、ピンデチの森の西端ですよね。森の切れ目から見える山の形でわかります。今度、見に行きますね』
その投稿を見たミッチは思わず声を漏らした。
「え、うそ、なんで? 秘密の場所って書いたのに……」
ミッチはすぐに投稿を削除したが、山が写り込んだ画像を投稿したミッチは落ち込んで泣いてしまった。
「ごめんね。秘密の場所だったのに……。わたしのせいで見つかっちゃった……。盗りに来る人がいたら、どうしよう」
ミッチはその場にしゃがみこんだ。
それを見たイリューシュはミッチに優しく言った。
「大丈夫ですよ。もし誰かが盗みに来ても、わたしたちが守りますから。ふふふ」
おじいさんたちも大きく頷いた。
その時突然、2人のプレイヤーが秘密の花畑に現れた。
「やっぱ、ここだ! きれい!」
すると次々プレイヤーが現れて花畑に入ってきた。
しかし、心無い何人かのプレイヤーたちは武器を構えて花を散らしながらゴールデン・リリーに近づいてきた。
それを見たつむぎは、思わず声を上げた。
「あ、花が!」
Chocoはそれを見て、慌ててゴールデン・リリーをアイテムに仕舞おうとしたが仕舞うことができなかった。
「なんで!? ゴールデン・リリーをアイテムにしまえない!」
近づいて来るプレイヤーの1人は、その様子を見てニヤニヤと笑いながら言った。
「俺ら武器構えたから、戦闘中になってんのよ。フィールド・アイテムは拾えないぜ」
「えっ!?」
困惑するつむぎたちを見たイリューシュは、前に出て近づいてくる数人に言った。
「止まってください。それ以上近づいたら、消滅してもらいますよ」
しかし武器を構えたプレイヤーたちはイリューシュの言葉を気にする様子もなく、ゴールデン・リリーに近づいていった。
その様子を見たイリューシュは、弓を構えて再び警告した。
「本当に消滅してもらいますよ」
「だって、こんなレアな花、見逃せる訳ないじゃん」
「矢が当たった後、ただじゃおかないけど、いいの?」
「花は現実世界で高額で売れんだよね」
「取ったもん勝ちだよね」
「しょうがないわね……」
ヒュッ ヒュッ ヒュッ ヒュッ
ドッ! ドッ! ドッ! ドッ!
「え!?」
「何この攻撃力!」
「何者……?」
「うそ……」
消滅していくプレイヤーたちを見たアカネは、やれやれといった表情を浮かべながら声を漏らした。
「まったく、人の花畑を荒らすなんて正気かよ」
しかし、見物をしていた重装備のプレイヤーがアカネに言った。
「つうか、ここ公共の場所だから。勝手に育ててるのそっちだろ? 文句言うなよ」
それを聞いたアカネは少しムッとした表情で答えた。
「はぁ? 公共も何も見りゃわかるだろ? この花、この子たちのが育てたんだろ」
「は? なに言ってんの? 公共の場所に生えてる花は誰のモノでもないでしょ。強いやつが手に入れる」
プレイヤーはそう言うとゴールデンリリーに向かって歩き始め、アカネを威嚇しながら吐き捨てた。
「って事で、ゴールデンリリーはオレが頂くぜ」
するとそのやり取りを聞いていたベンドレがアカネの前に出て警告した。
「止まれ。いま帰れば許してやるが、帰らないのなら消滅させる」
ベンドレは剣を構えた。
それを見た斧のプレイヤーはニヤリと笑って斧を振りかぶった。
「おい。オレはイークラトを根城にしてる斧使いだ。さっき弓でやられたピンデチ辺りの雑魚と一緒にするなよ」
斧のプレイヤーはそう言うと、思い切り斧を振りかぶってベンドレに斧を振り下ろした。
「死ね!」
ブン! ガキン!
しかしベンドレは斧を剣で軽々と弾くと、素早く剣を返してプレイヤーにゆっくりと突き刺した。
ズズズッ……
「え? なっ、なななっ! HPが! 強……すぎる……」
プレイヤーはベンドレの攻撃力に震え上がりながら消滅していった。
ベンドレは消滅したプレイヤーを見送ると、残りのプレイヤーたちに言った。
「今はまだ攻撃力が戻っていないが、あの程度の騎士ならば一撃で倒せる。もしこの花が欲しいなら、いくらでも勝負をしよう」
すると、ゴールデン・リリーを狙うプレイヤーたちは凍りついた。
それを見たベンドレは剣をおろしてプレイヤーたちに言った。
「花を踏まないよう、帰るがいい」
「くそ、なんでこんな強ぇやつがピンデチにいるんだよ……」
ゴールデン・リリーを狙ったプレイヤーたちは次々と逃げていった。
ベンドレはゆっくりと剣を仕舞うと、それを見ていたイリューシュがベンドレに言った。
「ベンドレさん。素晴らしいですね」
「……いや、あの程度の相手、素晴らしいなどとは……」
「いいえ。私が言いたいのは、ベンドレさんの行動です」
「えっ……」
「ふふふ。また一緒に人助けができましたね」
「……イリューシュ」
その時、秘密の花畑の場所がバレてしまう投稿をしてしまったミッチは泣きながらChocoとつむぎに謝っていた。
「ごめんね……。あたし……、うっ……。ほんとにごめんね……。だって秘密だって言ったのに、あんなコメント……」
Chocoとつむぎはミッチの手を握りながら言った。
「大丈夫。また、どこか見つからない場所探そうよ」
「うん、ミッチは悪くないよ」
するとアカネもやってきてミッチに言った。
「そうだよ、嬉しいときは写真撮って見てもらいたいもんな! みんなに見てもらいたいって思うのは何にも悪くないよ」
イリューシュも続いた。
「そうですよ。盗りに来た人たちが悪いんです」
おじいさんも優しく声をかけた。
「ミッチさん、あなたは美しい花の写真でたくさんの人を喜ばせたんですよ。素晴らしい事です」
ミッチは泣きながら小さく頷くと、少しだけ笑顔になった。
するとイリューシュがミッチに尋ねた。
「ミッチさん。隠れてフィールドにお花畑を作っているという事は、自分の土地をお持ちではないのですね」
「はい。土地は高くて……。でも、いつかは自分たちの区画がほしいのですが……」
「それでしたら、私たちの家の横にある空き地にお花畑を作りませんか? 広めの空き地があるのですが、何も使っていないので」
「「ええ!?」」
つむぎたちは驚き、ミッチがイリューシュに聞き直した。
「えっと、それは私たちに区画を使わせてくれるという事ですか?」
「ええ。区画なら他のプレイヤーは入れないので安全です。それに家の横にお花畑があったら素敵ですし」
「でも……、高価な区画を使わせてもらうなんて……」
「いえいえ。わたし、このお花畑を見て感動したんです。だから、みなさんで区画を使ってくださいませんか?」
すると、Chocoとミッチとつむぎは顔を見合わせてから笑顔で答えた。
「「よろしくおねがいします!」」
おじいさんもイリューシュに深々と頭を下げながら言った。
「イリューシュさん、本当にありがとうございます。なんとお礼を言っていいのやら」
「いえいえ、ひろしさんのお孫さんたちのお陰で、花のある生活を思い出したんです。わたしも嬉しいんです」
「すみません。本当にありがとうございます」
イリューシュはおじいさんの言葉に笑顔を返すと、みんなに言った。
「ではさっそく、こちらのお花を移動しましょう」
「「はい!」」
Chocoとミッチとつむぎは花畑の花を端からアイテム欄に仕舞っていった。
イリューシュはその姿を見ながら、笑顔でつぶやいた。
「お花のある生活ができるなんて嬉しいわ。ふふふ」
つむぎたちが花を仕舞い始めると、遠目から花畑を見ていたプレイヤーたちも帰っていった。
ー G区画の家 ー
つむぎたちは花を仕舞い終えてG区画の家に到着すると、ミッチとChocoは家の大きさに驚いた。
「え、もしかして、この家ってイリューシュさんのですか?」
「おおきい……」
「ええ、みんなで住んでいるんです。皆さんにも権限を差し上げましたので、自由に使ってくださいね」
「え、え? いいんですか?」
「ええっ!?」
「もちろんです」
「「ありがとうございます!」」
ミッチとChocoはつむぎと一緒に笑顔で頭を下げた。




