山口、突っ込む
上空では山口が墜落するドラちゃんを鼓舞するように声をかけていた。
「ドラゴン殿! ここでやられては洋子さんに会えませんぞ! ドラゴン殿、目を覚ますのです!」
「う……、うぐぐ、よ……、洋子様をお守り……、せねば!」
バサァ……!
ドラちゃんは頭に大きなダメージを負ってしまったが、必死に羽ばたいてフラフラとおばあさんのいる南西の通路へと向かった。
黒猫はフラつくドラちゃんに慌てて謝った。
「ドラゴン殿、申し訳ありません! 我の魔法陣が吹き飛ばされるとは!」
「そうだね……。私も油断していて……、あっ!」
ドラちゃんがダメージを負った目を必死に開けると、なんとおばあさんが南西の通路から飛び出してこちらへ向かって来るのが見えた。
それを見た黒猫は空から必死におばあさんへ言った。
「洋子殿! 敵本陣は危ないです! 来てはいけません!!」
すると、地上からかすかにおばあさんの声が聞こえた。
「ドラちゃん! ドラちゃん大丈夫!?」
おばあさんの声を聞いたドラちゃんは急にボロボロと涙を流しながら答えた。
「大丈夫です洋子様! そんなに心配して頂けるとは!! 私は……、私は!! うおおおおおお!!!」
ドラちゃんは一気に力が甦り、力強く羽ばたいた。
バサッ バサッ!
しかしその時、敵本陣へ飛び出したおばあさんの元へ大勢の敵の騎士たちが向かっていくのが見えた。
そしておばあさんの後からは美咲たちが飛び出しておばあさんを守りに行くのも見えた。
それを見た山口はドラちゃんに大声で言った。
「ドラゴン殿! 洋子さんとマユ隊を守りに降りますぞ!」
「もちろんですとも! 我が主人を守ることが我ら眷属の役目!」
山口はドラちゃんと一緒に急降下しながらボイスチャットで各分隊長に連絡した。
「作戦変更! これより最終作戦に移る! 南通路、東通路の分隊は敵本陣へ突撃! 北通路の分隊と弓部隊も通路制圧後に突撃!」
「「はい!」」
ドラちゃんが敵本陣に下降を始めると、山口は西通路の分隊の状況を確認した。
「西通路、マサ隊長! 状況は!?」
「こちら西通路の分隊長マサ! あと少しで制圧するぜ!」
「了解! 制圧したら敵本陣へ突撃してください!!」
「まかせとけ!」
「作戦は以上! みなさんのご武運をお祈り致します!」
「「「おおー!!」」」
すると山口はボイスチャットを切って小さく呟いた。
「どうやら、わたしの役目はここまでのようだな。わたしの攻撃力では最終決戦では何の役にも立たない上に、足手まといになるだろう……」
山口は敵本陣で玉座に座るベンドレを見下ろすと、再びボイスチャットを繋いで話した。
「わたしは最後に敵の総大将に突撃し、我らの硬い意志を見せつけます。おそらく、わたしの力では生きてはいられないでしょう。分隊長、副隊長、あとは宜しくお願いします!」
「山口さん!」
「え!?」
「司令官殿!」
「まって!」
「山口さん!」
「まじか!」
ズゥゥウン
ドラちゃんは、おばあさんに群がる騎士たちの群れを遮るように着地した。
黒猫はドラちゃんから飛び降りると、大きな魔法陣を展開した。
山口は羽を滑り降りると、一直線にベンドレへ向かって走り出した。
ベンドレはそれに気づくと、ゆっくりと立ち上がり、周りの騎士たちに手を出さないように手で制止した。
そして両手剣を構えると呟いた。
「その程度の弓で突っ込んでくるとは。しかも老人……」
その時、山口は中央本陣全てに響き渡る大声でベンドレに叫んだ。
「わたしは総指揮官、元陸上自衛隊陸曹長、山口! わたしが死んでも、我が軍がお前を倒すだろう! 覚悟!!」
山口は走りながら弓を構えるとベンドレへ突撃し、走り込みながら矢を放った。
ヒュッ……、ドッ!
ベンドレは矢を避けることもせず、そのまま受けた。
そして剣を立てて会釈をし、敬意を表わすと、次の矢を引き絞っている山口に斬りかかった。
その瞬間、
ドド ドドドッ ドッ ドッ ガン
ベンドレに一斉に矢が刺さり、おじいさんお石も命中した。
「な、なに!?」
ゴォォオオオオオ……
「おぉぉおおおりゃぁぁぁあああ!」
怯むベンドレに和代の軍神零式と黒ちゃんが飛び込み、同時に強烈なタックルを食らわせた。
ドゴォォオオ!
ドシャァァアアア
「くっ! こいつら!」
ベンドレは吹き飛ばされると、指揮官の山口の行動に鼓舞された分隊が一気に中央本陣へ流れ込んできた。
「「うおぉぉおおぉおお!!!」」
山口に鼓舞された分隊の士気は高く、中央本陣はどんどん押されていった。
それを見て驚くベンドレの前に2人の女性が現れた。
ベンドレは2人を睨みつけながら言った。
「なんだお前ら」
すると翠と美咲が言った。
「あら。お前らだなんて、女性に失礼ね」
「失礼な男は消えてもらおうか、お姉ちゃん」
美咲はレイピアを構えてニヤリと笑うと、翠は弓を構えてベンドレを狙った。
ベンドレはオロチの両手剣に持ち替えると、翠と美咲に剣先を向けながら話し始めた。
「おい、ベンドレって名前は聞いたことないのか? かつてイークラトで恐れられた最強の騎士、通称殺し屋のベンドレぶぶっ!!」
ベンドレの言葉を遮るように、一瞬で踏み込んだ美咲が喉元を突き刺し、翠がヘッドショットを決めた。
美咲はバックステップで離れると、翠がベンドレに言った。
「武勇伝を語る男はモテないのよ」
「こいつら!!」
ベンドレは怒ると、両手剣を握りしめて突っ込んできた。
◆
その頃、西通路では分隊長の魔術武闘家マサが、あと一歩の所で敵の武闘家の防衛隊長を攻略できずにいた。
そこでマサは分隊の副隊長に言った。
「おれ、コイツと心中するわ。これ以上みんなの足を引っ張るのはワリィしな。みんなは敵本陣に突っ込んでくれ。この外国人強ぇわ」
「マサさん!」
「たのんだぜ!」
ガバッ!
マサは飛び込んで敵の防衛隊隊長に抱きつくと、防衛隊長は慌ててマサを殴り続けた。
「おまえは道連れだ!」
「Dumn it! (くそ!)」
ドガッ! ドガッ! ゴキッ!
「はやく行け! 任せたぞ副隊長!」
「マサさん! すみません!!」
副隊長は分隊をつれて一気に敵本陣へ走り込んだ。
ドカッ! ドカッ! ゴン! ドス!
マサは抱きつきなら膝蹴りで防衛隊長ダメージを与え続けたが、防衛隊長もしぶとく倒れずにいた。
「しぶといたつだな!」
ドカッ! ドカッ! ドカッ! ドカッ!
しかし、マサのHPはどんどんと削られていった。
「くそぅ、ずっと負けた事なかったのに最近やられっぱなしじゃねぇか!」
そして、とうとうHPが0なると、マサは悔しそうに呟いた。
「だめだったか……。すまねぇ、みんな……。倒しきれなかった……」
マサは静かに消滅していった。
「You were so tough... R.I.P (タフなやつだった。安らかに眠りな)」
敵の防衛隊長はそう呟くと、全回服薬を飲んだ。そして本陣へ向かおうとすると、どこからともなく声がした。
「Hey, buff guy. Where are you going? (なぁマッチョ、どこへ行くんだい?)」
「Huh? (はぁ?)」
敵の防衛隊長が横を見るとファイティングポーズをとるタマシリが居た。
それを見た防衛隊長もファイティングポーズをとると、薄ら笑いを浮かべながらタマシリに言った。
「Go to hell, loser.(地獄に落ちな雑魚が)」
防衛隊長はそう言って笑いながら右ストレートを放った瞬間、
「あぁぁあああい!」
ドゴォ!
それよりも早くタマシリの前蹴りが防衛隊長のみぞおちを蹴りぬいた。
「Ugh!!(うぐっ!)」
「あぁぁあい! あい! あぁぁああい!」
そしてローキックの嵐をお見舞いすると、敵の防衛隊長は堪らず膝をついた。
しかしタマシリは攻撃をやめ、一歩下がると防衛隊長に言った。
「You look like a boxer. Okay, I'll fight without kicking. Come on.(あなたはボクサーのようですね。OK、キック無しで戦いましょう。カモン)」
ズン、ズン、ドスン、ドスン。
タマシリはトレーニング用の重いリストバンドとアンクルバンドを外すと、地面に投げ捨てた。
それを見た防衛隊長は笑いながら言った。
「Huh, you have good accessories.(へぇ。良いアクセサリーを持ってるな)」
「Yeah, 2 tons each. haha(ああ、2トン。笑)」
「Oh, it's lighter than my smartphone. (そりゃ、おれのスマホより軽いな)」
防衛隊長はジョークで返すと、一気に踏み込んでタマシリの顔面に左フックを放った。
「Die! (死ねっ!)」
しかしタマシリは左フックを素早く避けると、腹の弱点の一つであるレバーに重いボディブローを食らわせた。
ドスッ
「Ugh! (うぐっ)」
レバーを食らってガードが下がった所へ、タマシリは防衛隊長の顔をめがけて豪快な右ストレートを放った。
「あぁいい!」
ズバンッ!
「……」
タマシリの右ストレートは防衛隊長の顔を歪ませ、防衛隊長は言葉を発せないまま後ろへ倒れていった。




