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おれはビビリだから分かるんだ

 その頃、黒ちゃんは自宅でメイにメッセージをし終えて、考え込んでいた。


「司教になればメイスが使えるな……。あれば(まさ)しく鈍器の最強武器。前に一度僧侶だったのはラッキーだった。今ならば同じサーバーに入れるかも知れない。私も行くべきだな」


 メイスとは金属製の頭部と木製の()を組み合わせた攻撃力の高い棍棒(こんぼう)で、司教と大司教のみが使える武器だった。


「メイスと防御魔法があれば盾は()らぬか。しかも僧侶の杖も硬いものなら鈍器にもなる……。これは面白い。ふふ……ふははは!」


 黒ちゃんは少し不気味に笑うと、VRグラスをかけてゲームの世界に入っていった。



 ー エストンレルトの大聖堂 ー


 黒ちゃんはゲームに入ってすぐエストンレルトに転移すると、街の中心にある大聖堂へ入っていった。


 大聖堂に入ると、シスターたちが黒ちゃんを迎えた。


「プレイヤーネーム、黒ちゃん様。ようこそおいでくださいました」


 黒ちゃんは出迎えたシスターに膝を()いて静かに頭を下げた。


 するとシスターの1人が黒ちゃんに尋ねた。


「黒ちゃん様。あなたは騎士ですが僧侶でもありますね。司教になるために来られたのですね」


「はい」


「では質問させてください。もし、この世から神が消えてしまったらどう致しますか」


「もし神が消えたのならば、我らが神の(とうとさ)さ、ご慈悲(じひ)、ご意思(いし)をお伝えしましょう。その言葉は人々を救い、喜びを与えるでしょう」


「う……。ううっ!」


 黒ちゃんの言葉を聞いたシスターは涙を流すと黒ちゃんに言った。


「それが(まさ)しく望む答えです。この封書をお受け取りください。これを持ってヤーヤムの街へ行き、コイン神父にお渡しください」


「承知しました」


 黒ちゃんは封書を受け取ると急いでヤーヤムの街へと向かった。



 その頃、メイとアーボンはオルゴールを探していた。


「アーボンさん、どう?」


「いや。なんかさぁ、家の扉をノックすると英語で不機嫌そうに何か言われるんだよね」


「はは。まぁ、そうだよね。……って、え? 何か聞こえない?」


 ♪♫♬♪♫♬♪♫♬♪♫♬♪♫♬♪♫♬


「え? 何か聞こえるか? ……。ん? あっ、オルゴールの音!」


「だよね! え、どこ?」


 メイとアーボンは耳を澄ますと、一軒の家の窓からオルゴールの音が聞こえてきていた。


「あ、あそこ!」


 2人は走って家に近づくと、窓から少女が話しかけてきた。


「Who are you?」


「え、ふわ()?」

「おれ英語ぜんぜんわからないぞ」


 すると2人の声を聞いた少女は日本語で話しかけてきた。


「あなた、だあれ?」


 それを聞いたアーボンが答えた。


「あ、よ、よかった日本語だ。おれはアーボン。こっちはメイちゃんな」


「そう。ねえ、お願いがあるの。お母さんを探してほしいの」


「え、お母さん?」


「うん。お母さんは居なくなったお父さんを探しに行って帰ってこないの」


「そっか、それは心配だな……」


 するとメイが泣きながら少女に言った。


「ううっ……。お父さんもお母さんも居ないとか、まじ心配だよね。おっけー! わたしたちが見つけるから!」


「お、おう任せとけ!」


 アーボンも一緒に返事をすると少女は窓を開けてオルゴールを差し出した。


「これ受け取って。お父さんが大好きな曲なの。きっとこの曲を聞いたら思い出して帰ってきてくれる」


 メイはオルゴールを受け取ると少女に言った。


「わかった。任せて!」


 少女は笑顔になると、メイとアーボンもつられて笑顔になった。


 ◆


 メイとアーボンは家を離れて歩いていると、オルゴールを見ていたメイが何か文字が書いてある事に気がついた。


「COIGNE? コイグネ?」


 アーボンはメイが持っているオルゴールを(のぞ)き込むとメイに言った。


「あ、これきっとコインって書いてあるんだよ。横にはVIORI……。ビオリかな……?」


「あ、わかった! このビオリって人がお母さんで、コインって人がお父さんなんだよ!」


「え? まさか、コインって……」


「あの子、コイン神父の娘さんだ!」


「まじか! でもお父さんもお母さんも家に居ないって」


 カン カン カン カン……


 するとその時、アーボンは誰かが下水道からハシゴを登ってくる音を聞いたが、ただならぬ気配を感じてメイに言った。


「や……、やばいぞ」


「え、何?」


「おれはビビリだから分かるんだ。強いヤツが来るぞ」


「え、まじで!」


 メイとアーボンが身構えると、下水道のハシゴを登る音が大きくなってきた。


 カン カン カン カン……


 アーボンは素早く剣を抜くと、メイに言った。


「こいつ、余裕感がハンパない。強ぇやつって妙に余裕があるんだよ。気をつけろ」


「う、うん」


 カン カン カン カン……


 ゆっくりとハシゴを登ってくる音にアーボンは汗を流すと、両手剣を握りしめてメイに言った。


「やっぱりあの余裕、普通じゃねぇ。くっ……。くそっ! 先手必勝だ! おりゃぁああ!」


「ちょっ、アーボンさん! プレイヤーさんだったらどうするの!」


 アーボンが両手剣で斬りかかると、下水道から出てきた人物は素早く飛び出して、タックルでアーボンを吹き飛ばした。


 ゴッ!


「うげっ!」


 するとメイが声をあげた。


「あ、あれ!? 黒ちゃんさん?」


 アーボンも倒れながら慌てて振り返ると、なんと黒ちゃんが立っていた。



 黒ちゃんは棍棒と盾を仕舞(しま)うと、吹き飛ばしたアーボンを引き起こしながらメイに言った。


「メイさんアーボンさん、驚かせてしまってすみません。お2人の投稿を見て、わたしも司教になろうと来てしまいました」


「え……、そうなんですか? てか、黒ちゃんさん防御とか回復って感じじゃないんですけど」


「え、あ、ははは。実はメイスが使いたくて……」


「メイス?」


 それを聞いていたアーボンはメイに説明した。


「メイスは鉄の棍棒みたいなもんで、めっちゃ強いんだよ。けど司教と大司教しか使えないんだ」


「あ、そっか。だから黒ちゃんさんも使いたいんだ」


 メイの言葉を聞いた黒ちゃんは少し恥ずかしそうに頭を()きながら答えた。


「その通りです。ですのでやって来てしまいました。よかったらクエストをご一緒にと思いまして。ははは」


「ほんとに!? 仲間が増えれば安心感ハンパない!」


「それは良かったです。共に参りましょう」


 こうして黒ちゃんも仲間になり、3人でクエストを進める事になった。


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