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え、呼び捨て?

 バンドフェスティバルの翌日、アーボンと眷属(けんぞく)のハデスはG区画の家へやってきて正式にみんなに謝罪していた。


「みなさま、先日は本当に申し訳ございませんでした!」


 アーボンとハデスは土下座をして謝ると、おじいさんが笑顔で2人に言った。


「アーボンさん、顔を上げてください。もう十分ですよ」


 アーボンが顔をあげると、おじいさんは腰を落としてアーボンに話を続けた。


「いま、アーボンさんが謝っているのは、ハデスさんを助けてもらって感謝して、反省したからではありませんか?」


「……はい。おれは、みなさんを倒そうとしたのに、おれがハデスを助けてって言ったら……、みなさんが……、ハデスを助けてくれて……」


 アーボンは目に涙を浮かべると、みんなに頭を下げながら話を続けた。


「おれ昔から馬鹿にされてばっかりで、助けられた事なんかなくて……。だから驚いて……。ううっ……」


 アーボンは大粒の涙を流すと、おじいさんは優しくアーボンの肩に触れながら言った。


「大変でしたね。でも、もう大丈夫ですよ。あなたは謝ったのですから」


「え」


「少なくとも、ここに居るみなさんは改心した人には手を差し伸べてくださいます。ベンドレさんやルルさんのように」


「べ、ベンドレ師匠も!?」


 すると話を聞いていたベンドレがアーボンに言った。


「ひろしさんには大変お世話になった。ひろしさんのお陰で、わたしは人を助ける喜びを思い出したんだ」


 横に居たルルもアーボンに言った。


「あたしも、みなさんのお陰で目が覚めたわ。あなたはラッキーよ。普通ならネットに(さら)されて公開処刑よ」


「はい……」


 アーボンは再び深く頭を下げると、おじいさんがアーボンたちをお茶に誘った。


「アーボンさん、ハデスさん。一緒にお茶でもいかがですか」


 おじいさんがそう言うとアーボンは慌てて数量限定のプレミアム・ドラゴン大福を床に大量に出現させた。


「で、では、みなさん! どうか、これを!!」


「「おおおーー!!!」」


 それを見たメイがアーボンに言った。


「やば! なんでこんなに持ってるの? 1人3箱だよね」


「あ、は、ははは。手下たちに買ってこさせてて。ははは」


「え、すごいじゃん! 尊敬するよ」


「え、そ、尊敬? は、ははは」


 アーボンは嬉しそうに笑ったが、再び真顔になって土下座してみんなに言った。


「み、みなさん! おれは、みなさんのお役に立ちたいです! なにか困ってる事はありませんか!?」


 おじいさんたちは顔を見合わせたが、特に困っている事も無かった。


 すると、メイがアーボンに言った。


「あ、じゃあさ、司教になりたいんだけど、手伝ってくれたりする?」


「はい、よろこんで!!」


 こうしてアーボンは、メイが司教になるためのお手伝いをすることになった。



 ー 1時間後 エストンレルト ー


 メイとアーボンは、僧侶系クエストには参加できないハデスをG区画の家に残して、エストンレルトの大聖堂に来ていた。


 メイは大聖堂を見上げると、その美しさに驚いて声をあげた。


「うわっ、めっちゃきれい。写真撮ろっ」


 すると、アーボンがメイにブツブツと呟くように言った。


「建物は綺麗なんだけど、この大聖堂のやつら、よくわからないイジ悪な質問してくるんだよ」


「え、そうなの?」


「なんか、神様がどうのって」


「え、わたしクイズ苦手なんだよなー」


「おれも昔、大司教になろうかって思って来たんだけど、質問に答えられなくて……」


「大司教? それって司教の上?」


「ああ、そうだよ。一番上のランクだぜ」


「え、やば。なら、わたしも大司教になりたいなぁ」


「もちろん付き合うぜ! でもまぁ、とりあえず入ってみようよ。中で話聞かないと司教にも昇格できないしな」


「だね。てかアーボンさん、めっちゃ話しやすくて助かる」


「そ、そうか?」


「何て言うのかなぁ。(した)しみやすいって言うか」


「え、お、おいおい、そんな事言われたの初めてだぞ。な、なんか照れるな」


 アーボンは照れ笑いをすると、メイと一緒に大聖堂の中へ入っていった。


 ◆


 大聖堂に入ると、シスターたちがメイの所へやって来て言った。


「プレイヤーネーム、メイ様。ようこそおいでくださいました」


「あ、はい、ようこそ来ました」


「あなたは僧侶。司教になるために来たのですね」


「はい、そうです」


「司教になるためのクエストには騎士や魔法使いなど、攻撃ができる仲間が必要ですが()られますか? 後から合流しても構いませんが」


「あ、このアーボンさんが手伝ってくれます」


「騎士の仲間ですね、承知しました。では質問をさせてください」


「えっと、はい」


 するとシスターは本を開いてメイに質問した。


「あなたは神の存在をどう思いますか?」


「かみ? かみって神様?」


「はい、神です。もしこの世から神が消えてしまったらどうしますか」


「え、てか元々神様なんか見えないし、すでに消えてない?」


「え、いえ、そ、そういう意味ではなくて、神の存在が、です!」


「存在とか良くわからないけど、神様ってえらいんだよね。ってか、なんで呼び捨てなの?」


「え、呼び捨て?」


「そう、神って言ってるよね? えらい人には『さん』とか『様』とか付けなきゃダメじゃない?」


「え、あ、いや、神は……、いや、神様は……」


 すると突然アーボンがシスターの前にひれ伏し、大袈裟なジェスチャーでシスターに言った。


「シスター様! このメイちゃんは神様を心から(とうと)ばれております! だから様を付けてお呼びするのです! こんなに信心深(しんじんぶか)い者はおりません!」


「な……、なるほど……。確かに……」


 シスターはそう言うと、メイの前に(ひざまず)いて、一通の分厚(ぶあつい)封書(ふうしょ)を手渡しながら言った。


「あなたの信心深(しんじんぶか)さを認めましょう」


「え、あ、はぁ」


「この封書を受け取りください。これを持ってヤームの街へ行き、コイン神父に渡してください」


「はい」


「ヤームへの道のりは封書の裏に書いてあります。どうか、お気をつけて」


「あ、ありがとうございます」


 メイは封書を受け取ると、アーボンと一緒に大聖堂の外へ出た。

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