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ひろし、援護射撃

 その頃、黒猫とおばあさんとメイはエストンレルトの東のダンジョンの近くまで走ってきていた。


 すると紫色の雨雲を見た黒猫が驚きながら声を漏らした。


「あれは、猛毒の雨……。ハデスが……」


 黒猫が呟くとメイが黒猫に尋ねた。


「あ、そういえばマユが言ってたかも。ハデとか」


「はい。あの猛毒の雨はハデスの固有スキルです。ハデスは我よりも3階級も上の冥界族(めいかいぞく)。相当な強さでしょう」


「え、まじで!? 猫ちゃんより強いの?」


「はい。1対1でまともに戦えば勝ち目はありません」


 それを聞いたおばあさんは黒猫に言った。


「それじゃあ猫ちゃんが危ないわ。猫ちゃん、止まって」


 ザザッ


 黒猫は足を止めると、おばあさんは黒猫から降りて黒猫に話した。


「猫ちゃんに居なくなられたら困るわ。ここで待っていてちょうだい」


「し……、しかし、洋子殿。あの猛毒の雨の中に入れば洋子殿も助かりません」


「まぁ……」


(われ)が防御魔法陣で雨を防がなければ近づけません」


「……」


 おばあさんが困っていると、メイがナミとボイスチャットで会話を始めた。


「ナミ、いまどこ? 助けに来たよ」


『ダンジョンの入り口。敵がいっぱぃきた』


「え、やば! あ、ここからダンジョン見える! 今行く!」


『ぁ、だめ! 猛毒の雨で、しんじゃう』


「え、まじで!?」


 するとダンジョンの入り口で戦闘が始まったのが見えた。


「ナミ! 誰か助け呼べないの!?」


『たすけ……』


 その時ナミはヴァルキリーの事を思い出した。



 ……ナミさん、今度は危なかったら呼んでね……



「バルキリちゃん! たすけて!!」


 ナミが大声でヴァルキリーを呼ぶと、目の前にメッセージが現れた。


『お母さんのHPが10%を切りました。自動帰還します』


 ブゥゥ……ン


「ぁ!」


 お母さんは昨日のダメージからHPが完全に戻っておらず、アーボンの仲間たちの攻撃を受けて帰還してしまった。


 その瞬間、アーボンたちがナミに襲いかかった。


「今だ! あのテイマーやっちまえ!!」


「い、いや、待ってください! 何か飛んできます!」


「はあ!? 飛んでくる?」


 シャァァアアアアア、ドガァン!!

 シャァァアアアアア、ドガァン!!

 シャァァアアアアア、ドガァン!!


「うわっ! 何だ? 爆弾??」

「やべぇぞ、かなり攻撃力が!!」


 なんと、おじいさんがゴーストの作り出した防御魔法陣の傘の下から火薬玉を投げつけていた。


 シャァァアアアアア、ドガァン!!

 シャァァアアアアア、ドガァン!!

 シャァァアアアアア、ドガァン!!


「くそ! けっこうHP減る!」

「おいおい、何人か消滅してるぞ!」

「と、とりあえず、あのジジイが先だ!」


「「おう!」」


 アーボンと仲間たちは、一斉におじいさんとゴーストに近づいてきた。


 ダダダダダダダダ……


 するとその時、ハデスは近づいてくる黒猫とヴァルキリーの位置を測位してアーボンに叫んだ。


「アーボン様、お逃げください! 黒猫とヴァルキリーが近づいています!!」


 アーボンはそれを聞くと顔をこわばらせてハデスに聞き返した。


「なんだって、本当か!?」


「お急ぎを! ヴァルキリーがもう近くまで……」


 ゴゴゴゴゴゴゴ……


 パァァン!


 その時、ハデスの雨雲に大穴が空いてヴァルキリーが現れた。


 ハデスはそれを見ると、再びアーボンに叫んだ。


「アーボン様! 早くお逃げを!!」


 パァァァァァァアアアアン!!


 ハデスが叫んだ瞬間、雨雲の大穴から槍を持ったヴァルキリーが急降下してきた。

  

 ギュォォォオオ……


 ズドォォン!!


「ぐはぁっ!」


 ヴァルキリーの槍は完全にハデスの身体を貫き、ハデスのHPは10分の1を切った。


 するとその瞬間、空を覆っていた雲が消えてゆき、猛毒の雨は静かに()んだ。


 それを見た黒猫はおばあさんを置いて一気に走り出すとヴァルキリーの元へ向かった。


「ヴァルキリー殿!!」


 おばあさんは走り出した黒猫に驚くと思わず声を上げた。


「どうしたの、猫ちゃん!?」


「洋子殿、大丈夫です! お任せください!」


 ヴァルキリーは黒猫が走ってくるのを見つけると笑顔で頷いた。


 ブゥゥン


 黒猫は走り込んで骸骨の姿になると、両手を上にあげて空に巨大な魔法陣を出現させた。


 ヴァルキリーはハデスから槍を抜いて空へ飛び上がると、一直線に魔法陣の上へと飛び上がった。


 バサッ!!


 その時、アーボンがハデスの元へ走りながら叫んだ。


「ハデス!! 逃げろ!! 早く!!」


 するとハデスは少し下を向くと横に首を振った。


 アーボンはそれを見て涙目になると大声で叫んだ。


「なんでだよ!! 逃げろよ!!」


 アーボンはハデスに駆け寄るとハデスがアーボンに言った。


「私はもうHPもMPも残りわずか。黒猫の魔法陣は私を追随して狙います。もうペア・スキルからは逃れられません」


「なに言ってんだよ! 死んじゃったら……、死んじゃったら、おれたちの記憶が消えちゃうだろ!!」


「アーボン様も一緒に居れば消滅してしまいます。早くお逃げください」


「やだよ!! 一緒に逃げるぞ!! こっちへ来い!!」


 バッ!


 アーボンはハデスの手を引こうとすると、ハデスはアーボンの手を振り払った。


「アーボン様。一緒に過ごした時間、大変幸せでした。どうかお元気で」


 ハデスは(かま)を出現させると最後のMPを使って紫色の炎を(まと)わせ、(かま)の力を増した。


 ズガン!!


「うわぁっ!!」


 ハデスは(かま)()でアーボンを遠くまで吹き飛ばすと静かに目を閉じた。


 ズザァァァァアアア!!


 アーボンはモービルから降りてきた黒ちゃんたちの前に吹き飛ぶと、慌てて起き上がって黒ちゃんたちに土下座をして謝り始めた。


「たのむ! ハデスを助けてください!! おねがいします!! おねがいします!! 本当にごめんなさい!! お願いします!!」


 アーボンは頭を地面に()()けると、何度も何度も頭を下げた。


「もうプレイヤーは殺しません!! ハデスを!! ハデスを助けてください!! お願い助けて!!!」


 黒ちゃんは謝るアーボンを見て、空の上にいるヴァルキリーに叫んだ。


「ま、待ってください!!! 止まってください!!」


 しかしヴァルキリーは声に耳を貸さずに槍を振りかぶり、黒猫の作った魔法陣へ投げようとしていた。


 アーボンはその様子を見ると大きく目を見開いて震えた。


「やめてくれ! たのむよ! くっ、くそーー!!」


 アーボンは大泣きしながらハデスに走っていった。


「ハデス!! ハデスーーー!!!」


 ダダダダダダダダッ!


 アーボンはハデスの所に走るとハデスの腕を掴んで叫んだ。


「ハデス、()せてろ!!!」


「……アーボン様!」


 ズシャッ!!


 アーボンはハデスを無理やり()せさせると、空に向かって両手剣をガードするように構えた。


「ハデスは絶対死なせない!!!」


 その時、ダンジョンの入り口からナミの声がした。


「バルキリちゃん! 止めて!!」


「えっ」


 ヴァルキリーは主人のナミの声に驚いて槍を止めようとしたが、止めきれなかった。


「あっ!」


 ヴァルキリーの槍は光を放つと、黒猫の魔法陣の中に吸い込まれた。


 ゴォォォォォオオオオ


 槍を吸い込んだ巨大な魔法陣は眩く光りだし、その魔法陣から数え切れないほどの光の槍が雨のように降り注いだ。


 ズバババババババババ……


「うっ、うわぁぁああ!」


アーボンは剣を持つ手を震わせて槍を見つめた。

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