↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀拳  作者: 月草 イナエ
26/45

~23・5 連休(四日目・夜)

 

 夕焼けに染まる商店街の通りを抜け、家に帰って来ると、リビングのソファーには、太一、友一、聖、双一朗の四人が座って、コーヒーやお茶を飲んでいた……


「お帰り、志緒。それに及川さんだったね」


「待ちくたびれたぜ」


「お帰り〜志緒。花月ちゃん」


「随分、疲れているな志緒…なんか臭うぞ?」


「ああ、ただいま…ちょっとな…」


「…皆さん、こんばんわ。どうたんですか?」


「明日のイベントで、ちょっとね〜」


「…ククッ、今回は太一の依頼だ…明日の[スピードフラッグ]で三位以内に入りたいそうだ…」


「ああ、法子さんに御礼がしたいんだ…」


「…御礼じゃ無くて、告白の後押しだろ?」


「…志緒、はっきり言うなよ、照れるぜ…」


「…法子さんって、あの司法課の課長さんですか?」


「…そうだよ、及川さん。…全く、神社に来て言うから、太一のお陰で俺も茜に「友一も頑張って入賞して!」なんて言われんだよ!…プレッシャーだ…」


「俺も、タナボタで入賞したら楓さん誘うんだ〜」


「…ククッ、既に上位独占だな…俺は旅行券より、賞金が貰えれば構わん。志緒はどうする?」


 俺は花月と顔を見合わせ、午後の出動を思い出し、仲間達にも話した方が良いと判断した。


「…明日のイベントは賞金首に狙われている可能性がある。出場するな…とは、言わないが、危険性は高い…」


 そう言いながら、午後の出動での出来事を話し始めた……



    ◆

    ◆

    ◆

    ◆


 室内に緊急出動音が鳴り響く。


『此方、警備課。大通り南、イベント第7会場で乱闘者五名。警備課に負傷二名。捕縛課に、出動を要請します。繰り返し…』


 全員が武装を確認すると、四剣が叫ぶ。


「狩りの時間だ!出動!」


「了解!」


 俺達は課を飛び出し走り出した。

 入園ゲートの向こうでは、路面電車が発車準備を整え、俺達の到着を待っていた。

 電車に飛び乗り、電車が発車すると、通常時とは三倍程速度が違う出動用の車両は、勢い良く路面を走り出して行く。

 車内では四剣が状況確認と、対応を説明する。


「現時点での乱闘者は五名、警備課からの連絡によると、対戦ゲームのイベント中に興奮した参加者が暴れ出したそうだ。」


「あ〜、居るよね。そんな奴…」


「私と、青槍、足枷が前衛、蟹と斧、花月はフォロー。必ず二人一組で対処する事。通信機は装着しておけ、まだ連係に慣れていない花月を蟹と斧はフォローしろ」


「「了解」」


『案山子、狩場の映像回せるか?』


『…ちょっと待ってね。…第7会場っと、出たよ。負傷者は三人…あれ?投石機がいるね?黒いライダースーツ着た奴等の一人倒して、三人に囲まれてるね』


『コイツ、無限の胃袋で優勝したデブだ…』


『キャベツ投げの女も居るな…』


『クイズ大会の奴も居るぞ!』


『投石機一人じゃキツイな…』


「投石機のフォローは蟹と花月がしろ!そろそろ着くぞ!」


『三人の武装は、槍、グローブ、刀だよ。皆、気を付けてね』


 電車が停まり、ドアから降りると会場は、野次馬の人垣が出来ている。野次馬を押し退け、乱闘の現場に着くと、投石機が三人の攻撃を何とか凌いていた。

 直ぐ様、四剣と青槍、足枷が、ライダースーツの三人と投石機の間に割って入ると、俺と花月は投石機の両側に並ぶ。横目に投石機の姿を見ると、額から汗を流し、手足に刀傷や痣が数ヵ所見える。


「…随分、頑張ったな?」


『…キャベツ投げの憂さ晴らしよ……前衛、動き速いから気を付けて』


 投石機は不機嫌そうに通信機を付けながら前衛の三人に助言を与える。


「花月、投石機と前衛のフォローに回ってくれ!七m位なら[小演]伸ばせたよな?」


「はい!大丈夫です」


 前衛の三人にライダースーツの三人が相手をしてる処に、俺が加わろうと前に出ると、不利な状況だと判断したグローブの武装の女が、仲間に声を掛ける。


「退くよ!……明日が楽しみね…」


 投石機を見詰めて女が背を向けると、槍の巨漢が背中のバックから、丸い何かが入った筒を取り出し、此方に投げ付ける。


『爆発物か!気をつけろ!』


『…違っ…あれは…ドリアンだ!』


『えっ?』『は?』『ドリ…』『…ウソ』『何それ?』『ドリア?』


 全員の視線が、空中に浮かぶ筒に集まった瞬間、筒は軽い破裂音と共に、中身と一緒に砕け散り、筒の破片と、果肉が空から降り注ぐ。


『くっせぇぇ――――――――――――――――――っ!!』


『キャアァッ――――――!!』


 野次馬にも降り注いだドリアンの強烈な悪臭に、周囲はパニックになり、人々が逃げ出して行く。

 俺達はライダースーツの三人を追い掛け様としたが、逃げ惑う人の波と、悪臭で思う様に動けず、見失ってしまう……




 暫くして、会場に残っているのは俺達と、投石機が倒したライダースーツを着た男だけだった…


『…案山子、アイツら追跡出来たか?』


『アハハハハハハ…凄いな〜可笑し………ゴホッ…ゴメン。…無理だった…』


『……そうか…』



「…クッソオォ――――――――!!!」


 近くの椅子を蹴り飛ばす四剣の叫び声が、人の消えた会場に響いていた……



    ◆

    ◆

    ◆

    ◆



「…そんな事があったのか?」


「道理で臭っている筈だ…」


「…お陰で、俺達は会場の掃除手伝わされて、課でシャワー浴びたり、服とか洗濯したけど…まだ臭い残ってるんだよ……」


「そいつら、明日のスピードフラッグでも暴れる可能性があるって事か?」


「ああ、明日のメインイベントはスピードフラッグだからな…四剣と投石機が、かなり怒って、課の連中を緊急招集するって言ってたよ…」


「志緒さん、当然です!…許せません!帰りの電車で乗車拒否の上、歩いて学園まで行く間の観光客の私達を見る目…屈辱です…」


「…大変だったね〜」


「まあ、それなら、レースに参加して、中からそいつら探す必要性もある訳だな?」


「…その必要性も…あるか?…」


「よし、それじゃあ決まりだ!お前の登録プレートだ。明日は頼むぜ!」


 太一はプレートを渡すと、友一達を連れて帰って行った。

 二度程、俺と花月は風呂に入り、臭いを通常生活に支障が無い程度に落とすと、夕食を食べ、明日に備えて寝る事にした。

 明日のイベントが無事に終了する事を祈りながら……






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。