~16 氷華
参道の広場では、突然現れた鉄扉に火鷲神社の宮司、火鷲清人は、息子の聖と腰を抜かして座り込んでいた…
重々しい音を響かせ扉が開くと、巫女装束の春美さんと娘達、そして金髪の外人が現れる。
扉の向こう側には氷馬の宮司、幼なじみの秀元と最近婿入りした水沢家の息子の姿が一瞬見えたが、扉が閉まり、見えなくなってしまった……
「やれやれ、清人。何時まで座ってるんだい?さっさと準備しな。」
腰に手を当て、見下ろす春美さんに慌てて立ち上がり、咳払いをして文句を言う。
「随分、変わった現れ方ですね…他所では大人しくしていた方が氷馬の評判を落としませんよ?」
「フン!防火祭で火事起こす様な御利益無しの神社相手に評判なんか気にならないね!」
「…ぐっ…」
…相変わらず、ずけずけと物をいう人だな…秀元も大変だ…
「…ププッ!聖、この調子だとGWの参拝客も此方の勝ちだな!」
「…ムゥ〜そんな事無いよ〜茜!」
清人は此処に居ない親友に同情していたが、隣の息子と氷馬の三女を見て昔の自分を思い出し、変な処が自分達にに似ていると思わずにはいられなかった……
そんな火鷲の宮司の考えを余所に、巫女達は辺りを見渡すが、祈祷依頼者の蟹はまだ姿を見せてはいなかった。
「あらあら、志緒はまだ来ていないのね?早く来ないかしら?」
「お姉ちゃ〜ん!階段の下で志緒っち達が、真っ赤な蛇さんと戦ってるよ〜!」
広場から参道の階段を見下ろし、月良が飛び跳ねながら声を上げる。
「…もうすぐ来るね…茜、月良!さっさと準備しな!」
「「は〜い!」」
「美和!志緒の依頼は氷華だったね。アンタがメインだから気を抜くんじゃ無いよ!」
「何かあったら、志緒に責任取って貰うから大丈夫よ、お母さん」
微笑みながらそう言うと、美和は懐から銀毛で作られた狼の面を取り出し撫でている。
「頑張りましょうね。[氷狼]…」
「……やれやれ、志緒も大変だね…」
春美はため息を吐くと、火鷲の宮司に視線を向ける。
「ほら、アンタもさっさと篝火の前に行って祈祷でもして来なよ」
「…フン。言われ無くてもそのつもりだ」
清人が篝火の前で祈りを捧げ、春美達は篝火を中心に三十m四方に散ると、春美は懐から二十Cm程の竹筒を取り出し、地面に突き刺し蓋を取る。
竹筒の中には、氷がぎっしり詰まっていて、美和達も同様に竹筒を地面に突き刺して蓋を取っている。
茜と月良は両手に神楽鈴を持ち、美和は手首に拳程の鈴を付け、[神酒 神楽]とラベルの付いた一升瓶を一気に呑み干していた………
参道の階段では、頭部の穴が塞がり動き出した蛇が、捕縛課の包囲から抜け出す事が出来ず、徐々に広場まで誘導されていく。
それでも、蛇が動き、攻撃する度に炎と熱風が身体に触れ、捕縛課の誰もが軽い火傷や上着が所々焦げていた……
「……う〜熱いです…アイス食べたい…」
「もうすぐ、広場に着きます!斧!足枷!手を緩めない!」
蛇の熱風に当てられて鉄巫女は大粒の汗を流し、三左は後方から蛇を攻撃している二人に激を飛ばす。
他のメンバーも遠距離、近距離問わず、交代しながら蛇を広場へと押し上げていた。
蟹は広場まで五、六段下の場所で蛇の攻撃を弾いていると、突然、何かを見つけた様に蛇の動きが止まり身体をゆっくり縮め始めた。
「不味い!篝火を見つけたぞ!四剣、銀拳、飛び跳ねる気だ!気をつけろ!」
後ろの二人に注意を促して階段を駆け降り、蟹が蛇の頭部に長剣を振り下ろした瞬間、バネの様に縮めた身体を一気に伸ばし、飛び跳ねる蛇は、蟹を跳ね飛ばしながら広場に着地する。
広場から階段を見詰めていた宮司と巫女達は、此方に吹き飛ばされて来る蟹と、二十m程の赤く燃える大蛇の姿に吃驚いている。
地面を転がり、篝火の脇を過ぎてようやく止まる蟹に、後ろから声が掛けられる。
「…ヒック…来たわね。志緒…」
「…美和姉、お待たせ」
身体を起こし振り返ると、右手に空の一升瓶を持ってフラフラと立っている美和が、目に涙を浮かべている。
「…志緒…ヒック…女を誘っておいて、デートに遅れるなんて…男、失格よ!」
「…美和姉、デートじゃないけど…そこは本音を言わないで、「会いたくて、ちょっと早く着いちゃった」とか言って欲しかったよ…」
「志緒に会いたくて…ちょっと早く呑んじゃった…もう一本いい?」
酒に弱いのに一気に呑んで、早くも上機嫌の美和姉は無視して左側の離れた場所にいる春美さんに問い掛ける。
「春美さん!準備出来てる?」
「何時でもいいよ!」
「青槍、鉄槌、斧。巫女の隣に立って護衛してくれ!祈祷が始まると陣の外に出れないから気を付けろ!」
指名を受けた青槍達は、蛇を誘導した疲れも感じさせ無い男前な笑顔になる。
「年上は任せろ!」
「後輩は任せろ!」
「幼女は任せろ!」
…任せたく無くなってきた…
嫌そうな顔を向ける巫女達に笑顔で三者三様に散って行く背中を見て、人選の失敗を確信したが、捕縛課の女性陣には頼めない理由があり、男性陣に頼んだのだった…
篝火の前にやって来た蛇は炎を喰い始め、周囲に目もくれない。 清人おじさんと目で合図を送り、篝火の前から避難してもらい、春美さんに手を振り合図を送ると、篝火を中心とし、四方に位置する巫女達が、懐から取り出した面を被り、鈴を鳴らし舞い始める………
白狐、黒狐、青馬、銀狼の面を着けた巫女達が、夕陽と篝火に照らされ、羽織袴を揺らし華麗に舞う姿と、鈴の音が鳴り響く幻想的な雰囲気が辺りを包む。 鈴の音が徐々に強さを増し始めると周囲の気温が下がり、地面に霜が降り始めた。
蛇も温度変化を察知したのか、篝火から頭を離し周囲を見回すと、ゆっくりと塒を巻く。
鈴の音が更に激しく響き渡ると、地面に突き刺した四本の竹筒が音を立てて割れ、四寸角の氷柱が姿を現し、天に向かって勢いよく伸びていく。
四つの柱は広場の杉林程の高さまで伸び、柱の間にはガラスの様に透明な氷の壁が張り巡らされている。
「「「なっ、何だこりゃあ――っ!」」」
四方を氷の壁に囲まれた初めて見る光景に、青槍達が驚きの声を上げ、周囲を見上げる。壁の外側にいる捕縛課のメンバーも同様に驚きを隠せない。
「氷馬の巫女が使う、障壁神楽だ!巫女が舞っている間だけ障壁から逃げられない。蛇を倒すまで巫女を護りきれ!」
「護るのは良いが、どうやって蛇を倒すんだよ!」
「此方がやるから心配しないで護りに集中しろ!」
驚いている鉄槌に激を飛ばし、隣の銀狼の面を着けた美和姉の様子を見ると、うつ向き、ゆらゆら揺れる栗色の髪の間から見える銀狼の面から、低い唸り声が響いている…次第に唸り声は高くなり、肩を上下にし揺らし始め、髪を振り上げ身体を反らすと、広場中に響き渡る咆哮を上げた。
…アウオオォォ―――――――――――――――ォォン!!!
腹の底に響く、人ではあり得無いその咆哮は、恐怖を感じた蛇の警戒心を敵と認識させるには、十分なものだった。
大きく口を拡げ、美和姉に向けて火球を吐き出すと、篝火を崩して此方に突進して来る。
美和姉は両手を地面に付き、四つん這いになると、狼が走る様に火球に向けて咆哮を上げながら走り出す。
迫り来る火球に向け銀狼の口から氷塊が吐き出だされ、火球と氷塊は激しく衝突し爆発した。おそらく、火球の熱と氷塊の水分等で水蒸気爆発の様な事が起きたのだろう。
砕けた氷塊が蛇に当たり身体をくねらせ沼田打ち回る。
飛び散る炎と氷を弾き、青槍達が巫女達を護っているのを横目に確認しながら、美和姉の後を追い駆けると、すれ違いざまに蛇の頭部に拳を打ち込んで、素早く距離を取っている。
拳が打ち込まれた部分が一瞬凍り付き、爆発する。
一撃離脱で蛇を弱らせる作戦に見えたが、美和姉の拳から僅かにに煙が見え、目を凝らすと拳の火傷の部分が神楽舞の効果でモニターを巻き戻した様に治っていく。
篝火を喰った蛇の身体は予想以上に高温で、無傷とは行かない様だ…
「頑張れ…美和姉…」
蛇に立ち向かう巫女の姿を見詰め、蟹はそっと呟いた………
「何だか特撮かアニメ映画を見ているみたいです……」
「同感ですね…アレは一体、何なのでしょう?あのお面は特殊な武装何なのでしょうか?…」
氷壁の外側にいる三左と鉄巫女はメンバーを集合させながら氷壁の向こうの光景を見詰めていた。
「……火傷が治ってる」
蛇に打ち込んだ拳が治癒していく様子を見ていた銀拳が呟く…
「アレは、巫女の神楽舞の効力だ……」
三左達の元へ歩いて来た清人が銀拳に告げる。
「…神楽舞?あの氷の囲いも…巫女の人間離れの動きもそうなのですか?」
氷の壁を見詰めている清人へ三左は疑問を投げ掛ける。
「そうだ、氷馬の巫女に伝えられる神降ろしの舞だ…」
「……神降ろし?」
「アレの名は四方障壁神楽舞・氷華…四方を巫女が囲み、神を降ろす場所を創り、巫女は面の神の力を宿す…今回は火の蛇に対し氷狼の神を降ろした様だな…」
「氷の狼…ですか?」
「ああ、巫女の面にはそれぞれ司る神がいて、面の製作者の血筋や性格に左右されるが、氷馬の巫女が創る面は氷を司る面が多く、火鷲では火を司る面が多いのだよ。白狐、黒狐、青馬は春美さんの母上が御作りになった物だ、そして氷狼は春美さんの妹が作った…」
「あの面の力と私達が一斉に蛇を倒せば良いのではないですか?」
「それは可能だが、志緒君は面に司る神の性格を知っていて、君達を陣に入れなかったのだよ…氷狼は陣に自分以外の同性が居ると、異性より先に襲いかかる性格なんだよ。巫女は面を付けているから狙われ無いが、蛇の主は女性だ。だから蛇しか狙わないが、君達が入ると氷狼は蛇以外に、君達にも攻撃をすると志緒君は知っていたのさ」
「それで青槍達が護衛しているのですね」
「…あの…同性を倒した後は?」
「…気に入った異性以外に襲いかかる…」
「…青槍達…気に入って貰えるかしら?」
「蟹さんが無事なら後はどうでも良いです」
「その前に面を外せば元に戻る。志緒君はあの娘を助けるつもりだろうからな。隙を見て蛇から切り離す筈だ」
「それなら、大丈夫でしょう。蟹は優しいですから…」
「…ええ…蟹さんは女性には優しいです」
清人は二人の少女が笑いだすのを見て、氷壁に目を移すと、その中では火の蛇と巫女が舞う様に互いの炎と氷を散らしていた。
氷壁の中で蟹は、美和の攻撃の後に蛇に追撃を与えながら、花月のいる尻尾を切り離す機会を伺っていたが、その度に、尻尾から突起が飛び出し邪魔をする為、中々上手く行か無かった。
「……熱ッ!…クソッ、まだ元気一杯だな!」
体制を直し蛇を睨み付けるが、先程から死角を付いて飛び込んでいても、体温を感知され反撃を食らってしまう。
しかし、これまでの美和との攻撃で火の供給を断たれた蛇の身体は十m程に縮んでいる。
「蟹ーッ!もう少しだぞ―ッ!」
「早くやっちまえ!」
「此方に来るな!」
蟹の三方から聞こえる斧達の声が鬱陶しいが、お陰で名案が閃く。
蛇に拳を打ち込み、距離を取る美和に走り寄り、小声で作戦を伝えると小さく頷き、面から唸り声が聞こえる。
蟹はバックからグローブと腕輪を取り出し身に付けると勢い良く蛇に向かって走り出して行く。
蛇は向かって来る蟹に、突進して弾き飛ばそうと身体を縮め、飛び出そうとする瞬間、蟹は長剣を地面に突き刺さし、柄を足場に踏み込むと、蛇の真上を飛び越しながら腰の短剣を、蛇の尻尾目掛け投擲する。
狙い通り、花月の居る球体の近くに突き刺さる。
蛇が身体をくねらせ此方に頭を向けると、蛇の後方から、美和の放つ冷気を含んだ、吹雪の様な咆哮が蛇を直撃する。
「ぐあぁ――ッ!」
蛇の表面はみるみる凍り付いたが、直線上にいた蟹までも吹雪の餌食になり、蟹の身体も氷が覆い、氷の彫刻の様に凍り付いてしまった。
「うわぁ――っ!蟹―っ!」
「蟹の身体が凍っちまった――っ!」
「冷凍蟹だぁ――!」
巫女を護っていた青槍達が、慌てて駆け寄ろうとしていると、蛇の身体から水蒸気が出始め、赤く燃える蛇の姿が現れる。
「蛇が氷を溶かした!」
「不味いぞ!巫女を護れ!」
「戻るぞ!急げ!」
向きを変えて戻り出そうとした青槍達だったが、身体が何かに引っ張られ、三人の身体が蛇目掛けて飛んで行く。
「…えっ?」
「…うそ?」
「…嫌だぁ―!」
三人は花月の居る尻尾の球体に吸い寄せられる様に飛んで行く。
新たな敵を察知した蛇が、尻尾の突起で攻撃し、青槍達が弾き飛ばされ、突起が伸びきった瞬間、球体の膜に短剣が突き刺さり、水蒸気の中から氷を纏った蟹が短剣で一気に膜を切り裂き、中に居る花月を助け出した。
蟹は花月を肩に担ぐと、大声で美和に合図を送る。
「氷狼!やれ!」
「ウァオォォ―――――――――――――――――――ォォン」
一際大きな咆哮を上げる巫女の周囲には四つの氷塊が浮かび、四方から蛇目掛けて氷塊が身体をを貫く。
蛇は何とか逃れ様と、真上に身体を伸ばすが、突き刺さった氷塊から徐々に蛇の身体は凍っていく……
懸命に空に身体を伸ばす蛇だが、終に頭部まで氷が侵蝕し、まるで一輪の氷の華の様な形で凍り付いていた………
「くおぉうらぁ―!蟹野郎!危ねぇじゃねぇかー!」
「騙しやがって!ぶっ殺すぞ!」
「俺達を囮にすんじゃねぇ!」
花月を肩に担いた俺に、青槍達が駆け寄り、怒鳴り始めるのを片手で止める。
「文句は後で聞くからちょっと待ってくれ」
花月を降ろし、後ろを見ると、凍り付いた蛇の隣には、此方を睨む巫女がいた……
「鉄槌、斧、青槍、花月を護ってくれ!俺は美和姉を止める」
「どう言う事だ?」
「今度はアレを止めて面を剥がさないと、花月とお前らが殺られんだよ」
「マジ?」
「アレ、止めるの?」
「お前は大丈夫なの?」
「ああ、美和姉に気に入られた男は殺られない」
「「「ずるいぞ!」」」
「試してみるか?」
三人は顔を見合わせ頷き合う。
「「「巫女さんと仲良くなりたい!」」」
力強く答えた三人は美和姉に向かって走り出すと、横一列に並び、手を差し出す。
「大胸筋について語り合おう」
「その胸、揉ませて下さい」
「足袋で踏みつけて下さい」
……ガスッ…ドカッ…バキッ……
美和姉の鮮やかな右ストレート、左フック、回し蹴りが炸裂し、三人は蟹の傍まで吹き飛ばされる……
「……クッ、腹筋が好みか!」
「プルプルしてた!」
「足首最高!」
三人は違う意味で、喜んでいる……
これ以上、面倒な事にならない内に蟹は、美和姉の傍に近寄ると、自分の安全の為、手首を回し指を操り、銀糸で美和姉を縛り上げてから、氷狼を顔から外す。
短い呻き声を上げ、美和姉が倒れ込むのを抱き止め、銀糸から解放すると、巫女達の鈴の音が止み、氷壁が細かく砕け散る。
夕陽を浴びてキラキラと輝く幻想的な光景に、思わず感嘆の声が漏れる。
「……綺麗だな…」
「……そんな…綺麗だなんて…嬉しい〜!」
「…なっ!?」
抱き止めていた美和姉が、首に抱き着いてぶら下がってくる。
「また、志緒に縛られちゃった…恥ずかしいから負んぶして!」
「何言ってんだよ!美和姉!」
拒否する間も無く、美和姉は首を支点に背中に飛び乗る。
「もう疲れて動けな〜い」
「めちゃくちゃ動きが速いよ!」
降りようとしない美和姉を、仕方無く背負ったまま、花月の様子を見に向かう。
見た目には外傷もなく、呼吸も落ち着いている…右手には短刀が握られているが、最初に見た時と同様に、刀身の周りを火の膜が覆っている。左手に握られた鞘を抜き取り、短刀を納める。
小さなため息を吐き、花月の乱れた前髪を指で直して、笑みを浮かべる。
「…やれやれ、酷い目にあったな…」
「…あら?その割には嬉しそうね〜?」
背中の美和姉が、からかう様な声で尋ねるが、笑って誤魔化し、此方に向かって来る捕縛課のメンバーと春美さんや茜達に軽く手を振る。
「蟹、お疲れ様でした。救護班を呼んでおきましたから、怪我人の治療と、後始末をしてから学園に戻りましょう」
「三左さん、お疲れ様でした。皆、火傷だらけですからね」
捕縛課のメンバーを見回すと、全員が腕や足等に火傷や怪我を負っている。
「志緒、怪我人は此方に集めな。茜と月良が治してやるよ」
後ろから春美さんが声を掛け、その後ろでは、茜と月良が地面に陣を描いていた。
「怪我の治療も出来るのですか?驚きです」
「あの二人はアタシら攻撃系と違って治療が出来るからね。それに女はお肌が命だしね…アハハハ」
「春美さん、助かります」
「アタシも美和が無事で助かるよ。美和の奴は、怪我でもしたら志緒に責任取って貰うわって言ってたからね…」
「お母さん!それは内緒なんだから!」
顔を赤くして、背中でバタバタと手を動かし暴れる美和姉を笑いながら、春美さんは清人おじさんの処へ歩いて行った。
「あら、蟹さんは年上より年下の方が、お好きなんですよね〜」
「……蟹の馬鹿」
いつの間にか隣に来ていた鉄巫女と銀拳が此方を睨んでいる。
……蛇より怖いよ、二人共……
「志緒、エリス〜。怪我人集めてー!」
そんな二人に睨まれていると、準備が出来た茜が、手を振って呼んでいる。
「…準備出来たってよ。さぁ、治療して貰おう」
二人の肩を回し、背中と[鉄巫女]を押しながら茜と月良の処へ向かう。その後ろを罠が花月を背負い、捕縛課のメンバーが笑いながら付いて来る。
花月を救い出し、防災課の依頼を完了した捕縛課のメンバーは、陣の中に座り、二人の巫女の舞を眺めながら、優しく響く鈴の音に耳を傾けていた………




