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魔法少女オーガブルー  作者: 大熊鹿
第一章
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第五話 仲間への勧誘

 最近、妙な後輩に付き纏われている。

 歳の離れた兄に半ば無理やり染められた茶色い髪は根っこが元の色に戻り始めてプリンの様になっている。

 染め直すのはブリーチが痛いからやめた。

 染めた髪はどうしても浮いて見えて教室は居心地が悪くてよく屋上で外を眺めている。

 突然、大きな音が屋上に響いて見に行くと一人で騒ぎ立てる後輩がいた。

 最初は変な奴だと思っただけだったが、その日の昼休み。

「ど…………どうも、魔法少女やってます……」

 変な奴が変な事をやっていた。

 

 ◆


『何故、校門前で件の先輩を待っておるのじゃ?』

 登校時、怪人が出なかったので早めの時間に学校に着く事ができた。

 なので校門で茶髪先輩を待ち伏せているのだ。

「ほら、すごくいい人だったから」

『なんじゃ、惚れたか?』

 鬼様の言葉にそんなんじゃない、と呆れてみせる

「いいですか、鬼様……今、私は一人で活動しています」

『おぬしが正体黙っとるからじゃな……』


「正体バレからの相手がいい人ならなし崩し的に仲間に引き入れるしかないと思うんです! お約束ですから!」

 拳を握って熱弁する私に周囲から好奇の視線が注がれる。

 コホン、と一つ咳払いをしてスマホを耳に当てる。

「つまりはそういう事です」

『そうか、ところで目当ての先輩がきた様じゃぞ』

 私から視線を逸らして離れた位置を通過しようとする先輩に姿勢を低くして近づく。

「セーンパイ、おはようございます」

 私の挨拶にビクッと体を震わせて抱き抱える様に鞄を盾に少し距離を取る。

「な、なんだよ……誰にも言ってないぞ」

 露骨な態度に少し傷つく、私って割と可愛い方だと思うんだけど。

「私は先輩と仲良くしたいだけですから、そんなに警戒しないでください」

 パチッとウィンクをすると心なしか先輩との距離が少し離れた。

「そうか、俺は別に仲良くしたくないんだが……」

 ムッと唇を尖らせる。

 ここであまり押し過ぎても逆効果になるかもしれない。

「わかりました。放課後にまた話しましょう!」

「いや、放課後は予定があるんだが……」

 その反応に首を傾げる。

「先輩って帰宅部でしたよね?」

「なんで知ってるんだよ!」

 どんどん距離が離れる先輩を追いかけ、下駄箱で手を振って別れた。

 めちゃくちゃ大きなため息が聞こえたけど、きっと緊張のせいだよね。

 

 ◆


「聞きましたよ! 歩ちゃんが上級生に付き纏ってるって! 相手は誰ですか?」

 昼休み、もはやキスしそうな勢いで近づいてくるコガネちゃんの肩を掴んで落ち着かせる。

「そんなんじゃないんだって! 先輩とは、ちょっと友達になりたいっていうか……」

「十分そういう話じゃないですか?」

 説明してて自分でもそういう話な気がしてきた。

 本当に先輩とはそういうのじゃないんだけど。

「そもそも名前も聞いてないし……」

「歩ちゃんって思い込み激しいところありますけど、一目惚れから名前も知らずに付き纏うのはどうかと思いますよ」

 下校時間に帰ってるのを見たことあるから帰宅部だとは知ってるけど、と繋げるとコガネちゃんがため息をついた。

「違うの、先輩とは本当に……こう、ビジネスライクな関係っていうか!」

 私が変な言い訳をはじめたあたりで私が認めないと察したのか、はいはいと気のない返事が帰ってくる。


 私が軽く地団駄を踏んでいるとコガネちゃんがスッとスマホの画面を見せてくる。

「何これ?」

 確認せずに聞くと、

「最近、巷で噂になってる魔法少女を名乗る不審者です」

 そこには建物の屋根から屋根に飛ぶ私や校舎から撮ったと思われる写真がSNSに上がっていた。

「へぇー、知らなかったなぁー」

 画面から目を逸らしてコガネちゃんを見ると、普段閉じて見える目がうっすらと開いて赤い目が見えた。

「歩ちゃんが飛びつきそうな話題だと思ったんだけど……」

 勘の鋭いコガネちゃんの言葉にギクリッと体が震える。

「この人が目撃される様になったのって大体、一週間から二週間前なのですが歩ちゃんが遅刻する様になったのも大体そのくらいからですよね? そういえば魔法少女騒動の時、歩ちゃんいませんでしたよね? ただの偶然だと思いますけど、危ない事とかしてませんか?」

 もはや確信に近い問いに額から汗が垂れてくる。

 私が何も言い出せずにいると、コガネちゃんが再びため息をついた。

「こんなのはほとんどデマかせでしょうから、間に受けない様にしてくださいねネットでもほとんどAIやら合成って言われてますから」

 とコガネちゃんが話を終えると、懐にスマホをしまった。


 コガネちゃんが両手の指を揃える様に合わせて、音が出る様にふぅ、と深く息を吐く。

「そろそろ昼休みも終わります、次は移動教室ですから先に行きますね」

「うん、私はトイレに行ってから追いかけるよ……」

 ゆっくりと歩いて去っていくコガネちゃんに手を振る。

『もうバレとるじゃろ』

「宣言されなければセーフです」

 小声の鬼様の声に応えて、私はその場にへたり込むのだった。

 

 ◆


 警戒してるコガネちゃんを振り切って、校門前で先輩を待ち伏せること数分、校舎から先輩が出てくるのを発見した。

「一緒に帰りましょう!」

 私が飛び付く様に近づくと先輩がビクッと震えた。

「マジで待ち伏せてやがったコイツ」


 先輩は諦めた様に目を伏せ、

「本当に用事がある。ついて来てもいいけど、楽しい場所じゃ無いぞ……」

 と静かに呟いた。

『意外じゃな』「熱意が伝わったんだよ」

 私達の言葉を無視して先輩は歩き出した。

  先輩がやって来たのは花屋だった。

「メルヘンな趣味があるんですね?」

 うちは家柄花屋にお世話になる事も多いけど、一般家庭ではあまり訪れる機会とかないと聞く。

『見た事無い草が多いな、中に液体が溜まった草はなんじゃ? 甘い香りがするが……』「ここに虫を落として食べるんですよ」

 食虫植物に興味津々な鬼様に説明しながら見ていると先輩は花束を買って店を出た。

「今日もいい天気ですね、絶好のハイキング日和です!」

 山道を登りはじめた先輩に無視されながら後ろをついていく。

 そろそろ話のネタが尽きはじめてる。

「ついたぞ」

 向かう先でなんとなく分かってはいたけれどそこはお墓だった。

 先輩はバケツに水を汲むとそのまま奥に進んでいく。

「誰のお墓なんですか?」

 一つの墓石の前に立ち止まった先輩に問いかける。

「父さん、今日が命日だから……母さんは離婚してるから来ようとしないし、にいちゃんは母さんに気を遣ってる。参りに来るのはもう俺しかいないんだ」

 先輩は手際よく掃除をして花を供えた後、静かに手を合わせた。

  つられるように先輩の横で手を合わせた。

「気、使わなくてもいいぞ」

 そう言った先輩を気にせずにしばらく拝んだ。

「人はすぐ死にます。想像よりもあっさりと、世界は誰にも優しくありませんから……でも、それは誰かに優しくしない理由にはならないんです」

 合わせた手を離しながら、先輩の方を向く。

「先輩は偉いですね」

  先輩はまるで豆鉄砲でもくらったような表情になっている。

「意外だ、まともな事言えるんだな」

「先輩って私のことなんだと思ってます?」

 吹き出すように笑う先輩に笑顔を向ける。

『歩、怪人じゃ』

 笑い声が響く墓地に鬼様の言葉が透き通るように響いた。

「は? なんか言ったか?」

 先輩の背後、光に揺れる黒い影が見えた。

『テレッテレッテレッテレ、テーテテーテ、テーテテーテ』

 鬼様がBGMを口ずさみ全身が青い光に包まれる。

「見ていてください先輩!」

「急にどうした⁉︎」

  影から飛び出した黒光する甲殻を持つ怪人、まるで某ライダーのような見た目のそれが背中を向ける先輩に殴りかかる。

 それを素早く先輩を抱き寄せて回避させた。

「愛と希望を力に変えてーー

ーー邪悪な闇を打ち払う!

 魔法少女オーガブルー!」

 そのまま先輩を抱えて背後に跳ぶ。

「は? 何その格好⁉︎」

「魔法少女です!」

 鋭い顎をカチカチと鳴らしながら怪人、アリかな。

 アリ怪人が素早い動きで肉薄する。

 拳を手のひらで受け止めると風圧で周囲の草木が揺れ、砂埃が舞った。

 

 ◆


 後輩が突然、服と髪型、後は髪色と目の色も変えて謎の敵と戦いはじめた。

 正直わけがわからないが、戦いは圧倒的だった。

 虫と人を足して割ったような怪人は手足を振るたびに地面を揺らし、風圧で砂埃が舞っている。

 そして後輩は半笑いでそれら全てをいなしている。

『力も守りも前回の山田とかいう男の方が強かったぞ……』

 そう言い残すと甲殻など存在しないかのように腕を怪人の体内に突き入れ、引き抜いた。

 腕には赤い塊が握られており、素早くそれを口に運んだ。

「オェ」

「なんで食ったんだよ……」

 吐きそうにえずく姿を見て思わず口にすると後輩が睨むようにこちらを見た。

「私だって好きで食べてない!」

  しばらく悶えた後、後輩が立ち上がってこちらに歩いてくる。

「ふふふ、先輩……見てしまいましたね!」

「お前が見とけって言ったんだろ⁉︎」

 俺の主張を無視して逃さないように肩を組んでくる。

「秘密を共有してしまったからには仲間になってくれますよね、ね!」

 先程の戦いを見てコレはシンプルに脅迫だろ、と心の中でツッコミを入れながらため息をつく。

「分かったよ、俺は何をすればいい?」

「いいんですか? いいんですね! やったー!!」

 飛び跳ねて喜ぶ後輩がはじめて可愛く見えた。

 後輩は落ち着くと変身解除で、と呟き青い光に包まれて元の姿に戻った。

「それじゃあ、先輩! 名前を教えてください!」

「マジで⁉︎ 知らなかったのかよ……深月 蓮夜(みづき れんや)だ」

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