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悪女?いいえ、サポーターですわ〜悪事がばれて追放された悪役令嬢、神様から幸せのお手伝い命じられました〜  作者:


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影の正体

※カギカッコの使い分け

「 」=表のセリフ

( )=主人公の心の声

《 》=リリアの心の声

「ちょっといいかな?」


 さっきまで大男達に囲まれていた、フードを被った子供が声をかけてきた。


「誰ですの?」


《誰……? 私のモフモフタイムを邪魔するなんて》


 リリアは眉間に皺をよせる。


「そんな顔しないでくれよ。君は僕を助けてくれたじゃないか、お礼を言いたいだけさ」


 男の子はフードをとる。

 茶髪黒目だったが、立ち振る舞いに気品が漂っていた。

 さらに、あどけなさが残りつつも精悍な顔立ちに目を奪われる。


「お礼を言われる筋合いなどありませんわ。私はこの子を助けただけですもの」


《結構かっこいい。っち、違うわ。別にそんなこと思ってないんだから》


 彼はニコッと笑った。


「それでも、結果的に僕は助かったわけさ。ありがとう」


「ふん、一応受け入れて差し上げますわ。ところで、なんでこんなところで絡まれていましたの?」


《笑った顔なんてもっと……。ちょっと私何考えてるのよ!》


 リリアの顔が少しほてって見えた。


(リリア、もしかして……)


「君ね……。人からの感謝はせめて受け取ってよ。

 ここにいたのは、ちょっと暴漢に絡まれてね、連れ込まれたんだ。困っていたから本当に助かったよ。

 ——それじゃ」


 そう言ってフードを被り直し、立ち去ろうとする。

 その時、ふわっとまたおいしそうな匂いが漂ってきた。


「わん!」


 私は思わず彼のもとに駆け寄り、じっと観察する。


「ん? なんだい? あっ、君のお陰でもあるよね、ありがとう」


 そういってしゃがみ込み、私の頭を撫でようとする。


(そうじゃないですわ!)

「わん!」


 私はその手を避ける仕草をした。


 すると、


「違うのか……。あっ、もしかして」


 そういって懐をゴソゴソあさりはじめる。


「これかい?」


 そう言って、焼き鳥を取り出す。

 しかし形は崩れてしまっていた。


(これ、これですわ! 昔食べた焼き鳥の匂いにそっくりですわ)

「わん! わん!」


「ふふっ、あっているようだね。屋台でおいしそうだったから、一本買ってみたんだけど……崩れてしまっているね。こんなものでよければ、君にあげるよ」


 そういって、立ち上がった。


(なんていい人なのかしら。いつか恩返しいたしますわ! それにしても、なんだか見たことのある顔ですわね……)


 なぜか私は、彼をそのまま行かせてはいけないような気がした。

 今度こそ立ち去ろうとする彼の足に、しつこくまとわりつく。


「今度はなんだい? もうあげられるものはないよ」


《あの子が誰かにあんなに懐いているのは、初めて見た。まさか、私より彼の方がいいの……?》


「ちょっと待ちなさい!——この後、暇かしら?」


「えっ。まあ、暇だけど」


「それなら、助けたお礼として一日付き合ってもらうわよ」


《このまま白黒つけずにはいられないわ。このモフモフは、わたしのものよ!》


(リリア、ナイスですわ。でも、私はモフモフではなく、レイラですわ!!!)


「わん! わんわん!!」


 私は興奮して、ブンブン尻尾を振る。


 リリアはそんな私の様子を見て、悔しそうな顔をする。


《やっぱり、この男の方がいいのね!》  


(違いますわー!)


「わかったよ。僕はレオ。よろしく」


「私はリリアですわ。——よろしくはしませんけれど」


「なんでだよ!?」


 対抗心むき出しのリリアにレオが思わずつっこんでいた。




 リリアは言葉の通り、レオをあちこち連れ回した。

 最初に馬車で降りた服屋に行こうとするリリアに、レオは


「あそこは犬用は取り扱ってないよ」


 といい、こぢんまりとしたかわいい服屋に案内してくれた。


《確かにこの子に似合いそう。でも、なんでこんなに詳しいの!?》


 怪訝そうな顔をしているリリアに、レオが口を開く。


「この辺にはよくきてるんだ。案内はまかせてよ」


「そうなんですの。それより、どちらがこの子に相応しい服を選べるのか勝負ですわ」


「おもしろそうだからいいけど。でも、君が選べばいいじゃないか」


「なぜかレオに懐いているからよ! 私とどっちが飼い主かハッキリさせますわよ」


「そんなことないと思うけどな。そういえば、この子の名前は? もしかして、犬とか呼んでないよね?」


(レオ!! いいこと言いますわ。いつまでも名前なしでは寂しいですわ)


 私は期待を込めてリリアを見る。


「なっ、ありますわ!」


《でも、この子には飼い主がいたはず。本当は帰りたいかもしれないのに、私のわがままでここにいる。

 ……名前まで新しくしていいのかな》


 リリアの顔が曇る。


(リリア……)


 私はリリアの足元に座り、キラキラした目で尻尾を振った。

 するとリリアは、優しく笑いながら撫でてくれた。


「この子の名前は、リアですわ!」


《私と近い名前にしたかったのよね。その方が家族っぽいもの》


「リリアにリアか。いいじゃないか」


「わん!」


 私はリリアの周りをぐるぐると走り回った。




(服のセンスはレオの方がいいですわね)


 レオが選んだのは落ち着いたブルー。

 ——リリアの選んだ服は真っ赤なフリフリのものだった。


(リリア、ごめんですわ。でもこっちの方がいいんですもの)


「……リアはこっちが気に入ったようだよ?」


「なんでですのー!!」


《次は絶対負けないわ》


 リリアはレオの選んだ服を大量に買い込んでいた。




 次にリリアが選んだ場所は屋台だった。

 賑やかな声と美味しそうな香りが辺りを彩っていた。


「どちらがリアにご飯を選んでもらえるか、勝負ですわ」


《ふん、これなら日々餌をあげている私が勝てるに決まってる》


「それは俺に不利すぎないか?」


「あら、自信がありませんの?

 ——レオ、なんか話し方が変わっていません?」


「まあね、こっちの方が楽なんだ。そんなことより、俺に負けて悔しかったのか?」


「当たり前ですわ! じゃなくて、負けていませんもの。全勝ですわ!」


 慌てて訂正するリリアに、レオは笑い出す。


「素直じゃないな。まあ、いいよ。決着をつけよう」


(リリア、楽しそうですわ)




「なんで勝てないのよ!!」


 リリアが買ったのは、いつも屋敷で出してくれる牛の串焼きだった。

 一方、レオは焼き芋を持ってきた。


(私、さつまいもが大好きなんですわ)


 私は食の誘惑に負けてしまい、地面に尻尾をたらす。


「好きな物もわからないなんて、飼い主失格じゃないか?」


「っ、うるさい。もう一回! 次こそは勝つから」


「なんだ、お前も猫被ってたんじゃん。そっちの方がいいよ」


「なっ!」


 リリアは驚いた表情をしている。


《考えていることをそのまま話しちゃった。でも笑われていない……。いいのかな?》


「……本当にこっちの方がいい?」


 すると、からかうような表情をしていたレオが、何かを察したのか、


「ああ。そっちの方が話してておもしろいし」


「……わかった」


 リリアが顔を逸らす。

 少しだけ耳が赤くなっていた。




「3勝4敗……。信じられない!」


 いつのまにか、太陽が西に傾いていた。

 あれからおもちゃやクッションなどのバトルが行われたが、思いの外レオが善戦していた。


(リリア、ごめんですわ。でも、本当にレオの方がよかったんですの)


 レオの勝ち誇ったような顔を見て、リリアは苦虫を噛み潰したような表情になる。

 私はリリアに寄り添うように座った。


「そろそろ暗くなってきたし、続きは明日にするか?」


「……明日も?」


「なんだ?もしかして、自信ないのか?」


「いいえ、望むところよ!」


「そう来なくちゃ。じゃあ、明日は市場の噴水のところに十二時に集合にしよう」


「いいわ。明日は絶対負けないんだから」


「じゃあ、また明日。逃げんなよ?」


「ふん、そっちこそ」


 レオは満面の笑みで、手を振りながら帰っていった。




  帰りの馬車の中、リリアの顔はどこか明るかった。


 部屋に戻った後も、そわそわと時計を確認していた。


(これはリリアを知ってもらえるチャンスですわ! 今日はついつい勝負に熱中してしまったけれど、明日はもっとアシスタントしなくては)


 就寝時間になり、いつものようにリリアのベッドに潜り込む。

 ふわふわした気持ちが残っていて、なかなか寝付けなかった。


(今日は、初めてリリアに名前で呼んでもらえましたわ。名前を呼んでもらえるのって、なんだか自分が確かに存在しているみたいで、嬉しいですわね)


 隣を見ると、リリアも寝付けないようだった。


「ねえ、リア。私、今日実は楽しかったわ」


 私はリリアの顔をペロッとなめた。

 リリアの笑顔は暗闇でも眩しく思えた。

ここまで読んでくださってありがとうございます!


今回は、リリアにとって初めて「自分らしく話しても大丈夫」と思える相手ができたお話でした。


そして、ついに犬のレイラにも名前がつきました!

これからもリアとして、リリアを支えていきます。


リリアが少しずつ変わっていく姿を、これからも見守っていただけたら嬉しいです。


「面白かった」「続きが気になる」と思っていただけましたら、ブックマークや評価をしていただけると、とても励みになります!


次回は9月12日21:30に更新予定です。

ぜひ、また読みに来ていただけると嬉しいです!

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