リリア仲良し作戦
※カギカッコの使い分け
「 」=表のセリフ
( )=主人公の心の声
《 》=リリアの心の声
リリアの手厚い看病のおかげで、私の怪我はすっかりよくなった。
侍女達は飼い主を探した方がいいと進言していたが、リリアは聞く耳を持たなかった。
「私の決定に逆らいますの?」
《虐待されていたかもしれないのに、返せるわけがないでしょ》
私は心の中でリリアにエールを送った。
(そうですわ! まだ、任務がありますもの。
ヒロインのところには帰れませんわ!)
「わん、わんわん!」
「みなさい。この駄犬もここに居たいと言っているわ」
《……私と一緒に居たいと思っているのかな?》
リリアは私の頭を優しく撫でる。
その表情は、とても穏やかだった。
(ふん。サービスですわ)
私はリリアの手に鼻先を押し付けた。
リリアの肩がビクッと跳ね上がったことに満足する。
「差し出ましいことを申し上げてしまいました。申し訳ございません」
侍女の唇は青白くなっていた。
「わかったのならいいわ。下がりなさい」
リリアと侍女の埋まらない距離感。
(まずは、侍女を味方にしないと!)
私はある計画を思いついた。
ガッシャーン。
リリアの部屋にあった豪華な花瓶を勢いよく叩き落とす。
花瓶は、おもしろいほど粉々に砕け散った。
すぐに侍女が飛んでくる。
(名付けて、動物に優しくしている姿を見てもらおう作戦ですわ! リリアは、何故か使用人の前では私のことをあんまり可愛がりませんの。ですが花瓶を割っても私に罰を与えない姿を見れば、侍女達の恐怖が薄れるはずですわ!)
「なんてことしてくれたの!?」
侍女が、満足げに尻尾を振っていた私を見つける。
その瞬間、鬼の形相で私に一直線で向かってくる。
逃げようとしたが首根っこを掴まれ、そのまま窓辺へ連行される。
(ちょっと、高貴な私をそんな風に運ぶなんて! 無礼ですわ!!)
私は思い通りにさせまいと、侍女の手に噛み付く。
「きゃー!」
侍女がパッと手を離す。
その隙に距離をとった。
「この……! なんて生意気な犬なの!」
「わん! わん、わん!」
侍女が恐れて近づいてこないよう、大きく吠えた。
しかし必死の抵抗も虚しく、侍女が手を挙げる。
(叩かれる……)
ぎゅっと目を瞑った。
「何をしていますの!?」
騒ぎを聞きつけ、リリアがやってきた。
侍女は慌てて手を引っ込めた。
「リリア様……! 実は、この犬が花瓶を割ったので、躾をしようとしただけです」
「躾を? 私の犬にそんなことしてタダで済まされるとでも?
……クビよ。この者を連れて行きなさい」
《何ですって!? 私の可愛い可愛いわんちゃんになんてことを! この可愛さがわからないなんて、クビ! うん、クビにしよう》
(私はレ、イ、ラですわ! まあ、悪い気はしませんけれど)
「っ、ですがリリア様。私は良かれと思い……」
「誰が喋っていいと言ったの? もう聞きたくないわ。出て行って」
侍女は涙目になり、必死にリリアに縋り付く。
しかし両腕を騎士達に捕まれ、引きずられていく。
その目は最後まで私をキッと睨みつけていたが、私は気づかないふりをした。
一部始終を目撃していた侍女達がヒソヒソと噂している。
《大丈夫かしら? 怪我はしてない?》
リリアは何事もなかったように私の体をあちこち調べていた。
(これでは、計画がおじゃんですわーー!!)
侍女達が花瓶の後片付けをしながら、こちらの様子をチラチラと窺っている。
いつもよりも心なしか恐る恐る作業をしていた。
(私の計画は完璧だったはずですわ。なのになぜ、前よりも距離が開いているように感じますの? このままでは、孤立したままですわ……)
「くぅーん」
気がつくとリリアが物欲しそうな目を向けていた。
《可愛い! モフモフしたい! でも我慢しないと……》
(リリア、私諦めませんわ。楽しみにしていてくださいまし!)
「うー、わん!」
私はリリアの膝の上に飛び乗り、目を閉じた。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます!
今回は、レイラの「リリア仲良し作戦」が始動しました。
……が、どうやら思い通りにはいかなかったようです(笑)
果たしてレイラは、リリアと侍女達の距離を縮めることができるのでしょうか?
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次回の更新は9月4日21:30です!
ぜひお楽しみに!




