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第30話 呪術師

その日の夕方。ランヘルと合流した7人はランヘルの邸宅へ案内された。


「すっげぇ広いな!」


「まぁな。魔法動物の保護で国からだいぶ貰っているんだ。」


「2階にそれぞれ7つ部屋がある!冒険者だと今までどうせ相部屋だろ?十分すぎるはずだ。」


「最高!」


そう目を輝かせるマリナにシエロは笑った。


「シエロちゃんは一緒に寝よっか!ね!」


「嫌です。」


そしてランヘルは全員が振り向くような音で手を叩いた。


「荷物を置いたらすぐ風呂に入ったらいい!」


「「風呂あんのか!?」」


そう目を輝かせたフリンとクロスは浴室まで走って言った。


「風呂はふたつあるから女の子たちも行きな 」


「だってシエロちゃん、あーしたちもいこっか。」


「はい!」


「おい!クルヴァ!オズゾー置いてくぞ!」


そう叫ぶドロガにクルヴァは笑う目をした。


「お前たちのパーティは楽しそうだな。俺もそんなパーティが良かったよ。」


『おっさんも冒険者だったのか?』


「あぁ。仲間が他の仲間を刺し殺したんだ。それで離散した。」


『そりゃ、やばい案件だな。ご法度だ。』


「あぁ。俺はその時決めたんだ。冒険に出ようなんざ絶対しないとな……でもな。魔が差しちまった。気がついたら乗合馬車を営業してた。まだ、どうしても冒険者でいたかったのかもな。」


***


翌朝…


「みんなおはよう!」


そう叫ぶランヘルにみながうざったい様子で起きてきた。


「ぺスカに聞いたとは思うがこの国にはたくさんの魔法動物が居る。異常な程にな。そこで仕事を頼みたい。」


「仕事?なんですか。」


「特に3級魔法使いシエロくん。あなたの成績は聞いている。是非この魔法動物公園で腕を降るってほしい。」


そしてみなの注目を浴びたランヘルは頼み込んだ。


「魔法動物が街に降りてくるのを止めて欲しいんだ。」


「なんだそんなことですか。結界を張れば解決ですね。」


「いや、そうじゃない。公園には誰でも入れるようじゃなきゃダメなんだ!」


「要は魔法動物を人里に迷い込んむのが嫌でしょう?自動選択の結界魔法をはればいいじゃないですか。」


「でもな200年100年、短くて50年で溶けてしまうだろ?」


「えぇ。そうですね。」


「それじゃあダメなんだ。永久な結界魔法を作りたい。君の結界魔法の噂はかねがね聞いている。この範囲内ならできるのではないか?」


縋るように言ったランヘルにクロスが口を挟んだ。


「まぁ、いいんじゃねぇか?」


「はぁ…分かりました。その方法とやらを教えてください。」


「あぁ。結界魔法を呪術でカバーする!それによって理論上ではあるが、結界魔法を半永久的に持続させることができるのだ!…まぁ理論上ではあるがね。」


「どういうこと?呪術なんて物語の世界だよ。夢の見すぎじゃない?」


そう問うマリナにランヘルは歩み寄った。


「この国はリューゲ王国から逃亡してきた人間が僅かながら入ってくることがある…。そこには魔女と名乗る者もいた。彼女らを丸めてこう呼ぶんだ。”呪術師”とな。」


「なんではるばるリューゲ王国から?」


そう疑問符を飛ばしたマリナにランヘルは答えた。


「リューゲ王国では呪術の他、魔法すら禁止されている。だから近隣の呪術を禁じている国ドゥンケルハイト、カエルムを除くと近いのはこの国ってわけだ。」


「呪術ってホント危険なんだね……」


そう言うマリナにシエロは言った。


「でもですよ。ランヘル様のが言うに可能だとしても、私一人で展開するには無理があります。」


「2人なら?」


そうすこし自慢げに笑ったマリナはシエロの手を取った。


「魔法ならあーしたちが飛ばす。ランヘル、あなたはその呪術師を探してきて。」


「わかった…でも…」


「まだ何かあるの!?」


「いや…ない。」


マリナに圧倒されたランヘルは少し萎縮した。。


「じゃあ、呪術師に会いにいく班と ここに残る班に別れましょう。私とマリナ様そしてクロス様はここに残って練習しましょう練習します。他は呪術師に会いに行ってください。ランヘル様。私たちにはこの国のまだ見抜ぬ危険が分かりかねますのでよろしくお願いします」


「なんで俺も!?」


疑問を呈すクロスに笑いながらマリナが返した。


「あーしたちが魔法の練習中、魔力切れした時助けられるのはあんただけでしょ?」


「そうか。そういうことなら。」


「さぁ!シエロちゃん、やろっか!」


「はい!まず2人の魔法を複合できるのかの実験です!」


「実験!?できるか分かってないの!?」


「理論上はできます。」


「そんなの…絶対無理じゃん……」


そう狼狽えるマリナにシエロは背中を叩いた


「では、はじめますよ!」


***


「いいか?今から向かう呪術師はティアコマラ。あいつなら何とかしてくれる。何度も恩を着せてあるからな」


街のハズレまで来て1箇所だけ異様に暗い雰囲気を漂わせる住居に着いた。


「ティアコマラ!俺だ!ランヘルだ!開けてくれ!」


ランヘルが叫んで数秒置いてからドアの窓を開けて女が答えた。


「合言葉は?」


「ケツにくそを入れたら便秘は治る。」


「いいよ。入りな。」


そこは呪物と呼ぶに相当する禍々しいものが広がっていた。蛇の瓶詰め、カラスの剥製、それだけではなく胎児のホルマリン漬けなどが吊るされていた。


「ティアコマラ、そろそろ合言葉変えようぜ?不愉快だ。」


そう言うフリンを無視してマリナがある瓶をつつこうとした。

「あぁ、それに触るなよ。最近入荷したんだ。エルフの耳だよ。」


「あっごめんなさい」


「まったく躾がなってないな。ランヘル。まず名を名乗れ。」


「わるい…でも俺も知らない。」


「俺はドロガ!こいつらはフリン、クルヴァ、オズゾーよろしく」


「早速だけど魔法動物を密猟者から助けるために力を貸して欲しい。」


「なんでわざわざ、あたしがしなきゃ行けないのさ。」


そう悪態を着くティアコマラにランヘルは囁いた。


「ポーコまで手を伸ばしてやったのはどこの誰だと思う?いつでも送り返すことはできるんだぞ?」


「あんたは恩着せがましいんだよ。まったく…あたしがまるで万能ナイフじゃないか。」


「ティアコマラ。呪って欲しいものがあるんだ。」


「どうした公園長。何を呪いたい?」


「この国にこれから練る結界を末代まで呪ってほしい。」


ティアコマラは意外の依頼に目を見開いた。


「どういう風の吹き回しだい?」


「今。この国では魔法動物の乱獲、傷害、密輸出が多発している。そこで、今、仲間が今巨大な結界魔法を広げる訓練をしている。しかし魔法では行き届かない。そこをなんとか呪術で何とかならないか?」


「なるほど。それでか。」


そしてティアコマラは少し考えたあとに声を発した。


「なら銀貨10枚で手を打とう。」


「銀貨10枚?そんなのぼったくりじゃないか!」


「なんだ?不服かい?国家直々の公園長なら払えない額ではないと思うが。」


「……わかった。」


「じゃあ、魔法が完成したらおしえておくれ。」


4人が引き返そうとするとティアコマラはランヘルにぼそっと呟いた。


「人を呪わば穴二つだ。その肉体を保ってられるかすら分からない。」


「忠告ありがとう。ティアコマラ。」


「これをドロガといったガキの首にかけなさい。」


「なんだこれは。」


「まぁ……いずれ分かる。」


***


「どぉぉぉん」


ポーコ市国について2日目。マリナとシエロは結界魔法の練習に励んでいた。


「マリナ様!結界は壁じゃなくて編み物です!マリナ様の魔法は出力が調節できてないがゆえ、どうしても攻撃魔法と同じベクトルの魔法を出してしまっています!」


そうアドバイスするシエロにマリナは答えた。


「分かってる。けど弱くしようとすればするほど魔法をまるで握りつぶされるがのように抑え込まれちゃうの。んッ」


「どぉぉぉん」


「それはマリナ様が力でねじ伏せようとしているからです!自分と空気の間に、薄い膜を一枚置くイメージをです!」


「やってるんだけど……」


「攻撃魔法を使った時、一瞬だけ空気の節が見えませんか!?」


「節?」


「そうです!そこから魔法を編み込むイメージです!」


「見えてもできないんだって!」


「どぉぉぉん」


「待って!今見えた!空気の節!よっいしょ!」


「どぉぉぉん!」


「ダメだ……」


へたり込んだマリナにシエロが駆け寄った。


「大丈夫ですか!?」


「ダメだ…空気の節が見えても編み込むなんて芸当無理だよぉ…」


「でも分かりました!マリナ様の課題が!」


「あーしの課題?」


「息を止めてはいけません!吸って、吐いて、そのリズムを結界に伝わせるのです。息を止めたら魔力は歪みます!それではいけません!最後1回だけやってみましょ!」


「わかった!ラスイチね!」


そう言ってマリナが息を震わせながら放った魔法はするすると空気の節に入り込んだ。しかし途中で切れてしまった。


「最高!いい感じです!だいぶ形になってきましたね!」


「ほんと?良かった……」


パタンと倒れたマリナに駆け寄ったシエロはクロスを呼んだ。


「いいや、練習が始まってから治癒魔法を使ってるぜ。」


「じゃあなんで…」


「精神面だろ。プライドと責任と…それから自分への期待」


「そうですか……よく頑張りましたね」


シエロはまりなの頭を撫でた。


***


ポーコ市国について3日目


「魔法は準備できたか?」


そこにはティアコマラを含めた全員が集まっていた。


越に浸ったようにマリナは笑いながらプリンに「もちろん!」と笑って見せた。


「ほとんど、マリナ様のおかげです。で、彼女が…」


「そうだ。呪術師のティアコマラだ。」


「あたしがティアコマラよ。よろしく」


「あぁ…よろしく」


手を出したティアコマラにシエロは少し引き気味に握手した。


「おい。ドロガ。これを。」


「なんだこれ?」


「いいから持っておけ。」


ランヘルはドロガに十字架のネックレスを首にかけた。


「いいか!はじめてくれ!」


マリナとシエロが魔法を練り上げると、ティアコマラは木の器にさいころと何かの動物の毛を名入れ燃やし手で扇ぎだした。


「準備は出来た。すぐにやろう」


マリナとシエロが魔法を出す瞬間ティアコマラの器が震え始め、その後地面もが揺れ始めた。


「なんですかこれ!」


そう怯えるシエロにマリナが 叫んだ


「放て!!」


木の器から燃え盛る炎とマリナ達の魔法が螺旋状に天まで昇り弾けて消えた。


「こんだけか?」


そう言うドロガに皆が同じことを思っていた。


「いや、完璧さ。」


そう言うティアコマラにみなが


マリナとシエロは倒れこんだ。


「もう無理。もう1日動けない。」


その瞬間。


「やっやめっ……」


まるで布巾のように体を絞られるドロガの姿を見た。


「なにあれ!やばくね?」


そう焦り駆け寄るクロスにネジ切れたドロガの肉体が思い切り弾け飛び返り血を浴びせた。全員は突然の出来事に言葉を失った。


「良かったね。誰も死ななくて。」


そうニヤつくティアコマラの胸ぐらをランヘルは掴んだ。


「なんだ!あの十字架は!」


「呪いのネックレスさ。人を呪わば穴二つ。お前が受けるべき制裁をあのガキに負わせたのさ。」


「人が死んだんたぞ!お前の呪いで!」


「いや、あいつは死なないさ。」


そういったところで、すーっと体を甦らせたドロガは一言言った。


「あー痛すぎて死ぬかと思った」


ランヘルとオズゾーは驚愕した。


「まぁ、こんなもんだな。」


「そうだね」


そうドライに受け止めるクロスとマリナにまた続いて驚いた。


「でも、ランヘル様。あなた、ドロガ様を殺すつもりだったのですね?」


「いや、知らなかったんだ!俺はティアコマラに…」


「そうだよ。あたしが命令したんだ。」


「なぜそのようなことをしたのですか?ランヘル様を生かしたかったのですか?」


そう話すシエロの真剣な眼差しはティアコマラにとって痛くなるほどに眩かった。そしてティアコマラは話した。


「鬱陶しい眼光だ。君は必ず大物になるよ」


ボトルに入った飲み物を飲み下して続けた。


「”なぜそんなことしたか?”だったっけ?そりゃただ単に不死身のガキがどう再生してくるか知りたかったからだ。」


「なぜ、ドロガ様が不死身だと知っていたのですか?」


「あまり年上に色々聞くもんじゃないよ。」

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