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第24話 指針

カエルム到着から2日目。6人はホテルの中のレストランで朝食を食べていた。


「すごいね。ホテルでご飯なんて初めて来たから楽しい!ご飯も美味し〜!」


「おれも初めてだよ!」


「俺も。」


感激しつつ楽しむ3人にフリンは吐き捨てた。


「これだから貧乏人は。ちゃんとした舌着いてんのか?」


「まぁまぁ。私たちも食べましょう?」


フリンはため息混じりに言った。


「そうするか。」


『おなかすいた』


***


『このホテルはラテオ王国前国王が泊まったこともある由緒正しきホテルなんだ。元は昔の豪族が住んでいたらしい。』


「へぇーそうなのか。すげえな!」


そう言ってバクバクがっついて食べるドロガを横目にクロスはマリナに話しかけた。


「カエルムにどのくらいいるつもりだ?」


「うん。今はフリンと相談してるとこ。多分5日くらいはいるかな。」


「5日か:…。ドロガの時間は大丈夫なのか?急ぎだろう?」


「本人もあんま気にして無さそうだし、たった5日くらいいいんじゃないかな?それに今のドロガはなんかクラウンの道筋を辿るよりも今この瞬間を楽しんでいるような気がする。」


「そうだな。急かしても意味は無いしな。あまりごちゃごちゃ言うようなことじゃないか」


「うん!そのことはドロガに任せとこ!」


軽く頷いたあとクロスが問いた


「話変わるけどさ、俺らいつまで一緒にいられるんだろうな。」


「この6人ってこと?」


そうマリナが問いかけるとクロスは軽く反応した。


「あぁ。そうだよ。」


「そっか。クロスあの3人気に入ってんだ?」


「そんなんじゃねぇよ。でもできるだけ着いてこさせたい。ヴィラキャンプのためにな。」


「んもう、ツンデレだなあ。」


「お前はどうなんだよ。あの3人。」


「フリンは頼りになるし、クルヴァは強いし、シエロちゃんは100点かな。」


「はぁ…でも現実的な話、俺らとあいつらでは目的が違う。あいつらの目的である、シエロの、「世界を見て回りたい」ってのはシエロが指針が握ってる。」


「どういうこと?」


「要は、シエロの判断次第ではプロシェヴィルグについて直ぐに別れることも有り得るってことだ。」


「シエロちゃんに限ってそんなことは無いよ。もっと愛情溢れる決断を下してくれると思うよ。」


「さぁ、どうだか。でも、あいつらにはあいつらのやりてぇことがある。それを邪魔するようなことがあっちゃダメだ。」


「わかってる」


***


某日。プロシェヴィルグ 44番街ターンバックストリートにて。


「おい!金、準備できないやて!? 」


2人の側近をつけたスーツの男が怒号をあげた。


「すいません…… 」


「魔族指にする覚悟できとんか?」


「いや…それだけは勘弁してください…」


「わしも自分も裏の人間や。誰がドゥンケルハイトからプロシェヴィルグに密入国させたったと思っとんか?あぁ?」


「はい…わかってます…」


「こっちも好きでやってるわけやないんよ。しくじったら国家転覆罪で皆もろとも死刑なんやわ。ターンバックストリートの中でケジメつけてもらわなこまんねん。わかるな?」


「あの…!今月、銀貨5枚なら出せます!」


「あかんわ。こっちは銀貨40枚耳揃えて出せと言ってんだわ。分からんか?」


「もう貸してもらえるとこないんですよ」


「はぁ、じゃあ、人殺すか」


「へ?」


「提案と言う名の契約だよ。こっちが提示した魔法使いを殺してくれ。その間は殺さないでやるよ。魔族指も無し。バレずに銀貨40枚分暗殺できたら密入国代ちゃらにしてやるよ。」


男はにやけ顔で言った。


「ええ交渉やろ?」


「はっ…はい!やります!」


「いい子やな」


そう言った男は後ろの側近に「行くぞ」と良い片手を軽くあげた。


***


カエルムに到着してから2日目の昼。6人はカエルムの中心部観光していた。


「なんかアクセサリーとか買いたいな。」


そういうクロスにマリナは疑念を抱いた。


「クロスってそういうタイプだったっけ?」


「いいだろ?気分なんだよ。」


片やドロガはフリンに問いた。


「なぁフリン?おれたちずっと仲間だよな?」


「なんだよ。そんな話。そんなこと言うやつじゃねえだろ。」


「いや、夢を見たんだよ。おれたちの仲間全員がおれの敵になっちまう夢。」


「馬鹿なやつだな。夢なんかに惑わされるなんて。冒険者が聞いて呆れるぜ。」


「んな言い方ないだろフリン。」


「まぁ、そんなこと地球がひっくり返っても起きねぇだろうよ。安心しな。」


「おおう…」


「なんだ?まだ心配か?」


「ちげぇけど…今日の夢だけ鮮明に覚えてるんだ。それが不気味でさ。」


「ははっ!人間生きてりゃそんなこともあるさ!そういう時は笑い飛ばしてやるんだ!そんな夢、どーでもいいってな!」


「そうだよな、フリン。ありがとう。」


そこにマリナがみんなに話した。


「みんなー!そろそろお昼にしないー?あーしもだしシエロちゃんもお腹すいたってー!」


「ちょっとマリナ様!あまりそんなことをみなに言わないでください!!!」


「あ、そっか、ごめんね!」


と、マリナは怒るシエロに笑いながら返した。


『でもそうだな、確かに昼食を取りたい気もある』


そう見せるクルヴァにフリンは言った。


「じゃ、飯にするか。クルヴァ。近くに飯屋があったか?」


『南部の中でも北の方にある、場所がレストランや酒場が集まってる。そこに行かないか?』


「決定だな。」


そうクロスが言ったのと同時に他の皆が賛同し、同時に期待を抱いた。そして北の方へ足を進めた。


その道中にて、ドロガはシエロに話かけた。


「なぁ、シエロー。」


「はい」


「おれたちいつまでカエルムにいるんだ?」


「今、フリン様とマリナ様が協議中です。」


「なんでフリンとおれじゃねぇんだよ!」


「怒らないでください。マリナ様も良しとしてやったことですし…」


「おいマリナ!どういうことだ!なんでお前とフリンで話してんだよ!リーダーはおれだぞ!」


「何怒ってんの?」


「おれがリーダーだ!指針を定めるのはおれだぞ!」


「あのね!ここまでたどり着いたのはあーしがいたから!あーしがドロガをここまで連れてきたの!」


「いいや。違うね。今まで出会ってきた人達のおかげだ。それをさも自分のおかげだと慢心するの自体おかしなことだ!」


「じゃあ、あーしいなくてここまでこれんの?無理でしょ?」


「そういうことを言ってるんじゃない!」


「まぁまぁ、落ち着いてください。2人ともパーティのことを思っての行動ですし…」


そう言うシエロにフリンは止めた


「シエロ。今は仲裁に入るべきじゃない。これは2人の喧嘩だ。誰かに止められたら、不完全燃焼に終わる。」


「じゃあどうすれば…」


「繋がりを取り戻すにしろ決裂するにしろ2人に決める権限がある。」


「でも、そんな決裂なんて私嫌です!」


「まぁ脅して悪かったな。安心しろ。あいつらのことだ。数時間後には仲直りしてるさ。」


***


翌日、まだ2人は険悪な空気を醸し出していた。


「フリン様。これは無理なのではないでしょうか。」


「そうだな。肝心なクロスもクルヴァ連れて逃げてったしな。」


「ここは最年長のフリン様が助け舟を出すしかないのではないでしょうか。」


「わかった。俺がやるよ…」


そう言ってフリンは2人に近づいた。


「まぁまずだな。喧嘩の原因はマリナがドロガの代わりに指針を握っていたってことでいいな?」


「違うよ…こいつが勝手に…」


そう言いかけたマリナにフリンは止めに入った。


「今はそういうのいいから。」


そして2人に向き直ったフリンは話し始めた。


「まずドロガ。マリナはお前のメンツを潰そうとした訳では無い。そうだよな?マリナ。」


「うん…」


「このマリナの越権行為を彼女の熱意として受けっとてやれないだろうか?わざとじゃねぇんだ。」


「あぁ…わかった。」


「次にマリナお前の行動はふたつのパーティのためにやったのだろうがパーティのリーダーであるドロガの顔を潰してしまったことは事実だ。」


「たしかに…あーしも悪かった…」


「じゃあ1杯やって仲直りだ」


そう2人を酒場に連れていこうとするフリンをシエロが止めた。


「フリン様。まだ午前中です。今飲むとこの先に差し支えます。」


「差し支えるってなんだ?」


「あぁ。ちょっとこの後シエロと娯楽の約束があってな……」


「娯楽!?なんだよそれ!」


しつこく聞くドロガにフリンはため息混じりで言った。


「カジノだよ。」


そうぼそっと言ったフリンに間髪入れずにドロガは叫んだ。


「おれも連れてけ!」


「だめだ。大人だけの遊びだからな。引き際が分からねぇガキはだめだ。」


「なんでだよ!」


そう言った時ドロガはニヤついた。


「じゃあ、おれをついて行かせなかったら全員にバラすぞ。」


それにフリンはちっと舌打ちをして「勝手にしろ」と言い捨てた。


***


カエルム到着から3日目の夕暮れ時。6人はホテルで食事を取っていた。


「ホテルの中にレストランなんで、ここのホテルはなんでもあるなぁ!」


そう話すドロガにフリンは答えた。


「ここはここら辺じゃ有名らしいからな!」


「やっぱ高かったんじゃねぇか?」


「そう思うだろ?…そうなんだよ…しかも連泊だからほぼ自殺行為さ……ここを出たら路銀を稼がないとな………あと金貨3枚しかない。…貧乏人のお前らに変わって俺らが払ってやってるんだ感謝しろよ。」


「金!?ぜんぜん金持ちじゃんか!」


そうドロガは驚いた。


「ちょっと!クロス!人のもの食べないでよ!」


マリナはクロスに叫んだ。


「いいだろ?俺のもやるから、ほれほれ」


「そういう問題じゃないの!それはあーしが頼んだの!」


「そう怒んなよ。シワがよるぞ?」


「あーもう、ほんと嫌い!死ね!」


「クルヴァ様。皆うるさいですね。」


そう言うシエロにクルヴァは頷いて紙に書き出した。


『こういうのも結構好きだ。』


「そうですね。意外とありかもしれません。」


***


カエルム到着から4日目の朝。


全員がドロガの絶叫に飛び起きた。


「んなんだよ!ドロガうるせぇな!」


「今何時だと思ってんの!」


「カジノ………行けなかった……」


そう落胆するドロガを見てフリンとシエロがグーサインを出しあった。


「まぁ、ドロガ落ち着け。カジノなんていくらでもある。そんな落ち込むこともないだろ。」


「おれはあの夜に行きたかったんだ。お前らなんかしただろ!眠り薬とか!」


「ははっ。どうだかな。」


「は!?もしかして図星か!?ふざけんなよ!」


「いや、でもあれはシエロの案だ。おれは関係ない。」


「ちょっと何言ってるんですか!実際にオレンジジュースに垂らしたのはフリン様じゃないですか!」


そう自らをかばい合うふたりを見てドロガは笑ってしまった。


「もういいよ2人とも…面白いもんみたから」


そう笑いながら服を着替えようとした。


「そういえばクルヴァ。お前どうやってこのホテル見つけたんだ?」


『口コミだ。』


「いや、お前喋りかけれないだろ。」


『いや、紙もってフリーハグみたいな感じで教えてもらった。』


「なんでそんなこと出来んだよ。」


2人は笑いあった。


「では!今日は1日路銀を稼ぐ日にしましょう!」


そういうシエロにクロスは問いた。


「お前たちもうそんな金ないのか?」


「まだありますが!あなたたちにも稼いで貰わないとこっちも底を尽きます。」


「確かに…コイン数枚しかねぇ…」


そう呟くクロスを横目にシエロは続けた。


「もし私たちが居なくなったとして、あなた達にもお金は必要です!」


「居なくなるって?」


そう聞くマリナにシエロは答えた。


「私たちが元の2組に戻って歩を進めるとなった時、また私たちが死んだ時です。」


「死っっ。シエロちゃん達に限ってそんなことないでしょ!」


「いえ。至って現実的な話です。私たちは、もう既にそこら辺の一端の冒険者よりも強いです。でも、この先は危険な事ばかりです。プロジェヴィルクもドゥンケルハイトとは違うベクトルで危険な国なんです。ありえない話ではないんです。」


「そっか…」


「ということで!今日は依頼をこなしましょう!ということで冒険者ギルドから3枚、高級依頼を貰ってきました!報酬は冒険者ギルドにて、換金します。」


あからさまに嫌な顔をする5人を無視して話を続けた。


「では、2人1組で組んでもらいます。それを加味して選んできました!」


全員が誰と当たるか心躍らせた。


「まず、ドロガ様、私」


「えぇ…シエロちゃん…私とじゃないの〜」


そう落胆するマリナを無視して名前を告げた。


「クロス様、フリン様」


「そして最後はクルヴァ様、マリナ様です。」


「あーしやっていけるきがしないんだけど…」


そうこそこそとドロガに話すマリナに「わりぃやつじゃねぇから」と励ました。


「では依頼の紙はそれぞれ大切なものです。無くさないように。タイムリミットは10時間後の18時です!では開始!!」


そして6人は散り散りに歩き始めた。


「なぁ、シエロ。おれたちあんま話したことなかったよな。」


「そういえば、そうですね。」


「で、依頼ってのはなんだ?」


「私たちは消えた住民の捜索です。」


「消えた住民?」


「えぇ。1週間前北側にある村から1人また1人といなくなってしまうという事件です。」


「失踪事件か…おれたちも出会ったことあるぜ。」


「ほんとですか。どんな感じでした?」


「魔族が1口残らず食い殺してた。」


「今回もそんな感じなのでしょうか」


「まだわかんねぇんだ。とりあえず村に向かおう北にどんくらいだ?


「8時間です。」


「おい!それじゃあ間に合わねぇじゃんか!」


「えぇ。そうです。でも北にあるスラム街を通れば4時間です。」


「2時間か…よし、そうしよう!」


「私があなたを選んだのにはそれが理由です。」


そう言うシエロにドロガは疑問符を浮かべた。


「あなたのその思い切りの良さ、どんな攻撃も受け流すその体。」


「お…おう。ありがとう。」


「はっきりいって今回の件は3組の中でいちばん手強いです。でもあなたと私なら切り抜けられない理由がありません。」


そう言うシエロに「まじか!」と返したドロガににこりと笑いかけた。


「そして今回の原因はほぼわかっています。」


「そうなのか!それを早く言ってくれよ。きっと一番乗りだな」


「そうとは言いきれません…」


「なんだ?」


「その原因は呪われた鎧兵による殺戮です。」


「呪い?そんなもん無いだろ。物語の中の話だ。」


「私もそう思っていました。しかしそう捉えると色々合点が行くようです。」


「とにかく村へ急ごう。そうだとしたら犠牲者を食い止めなきゃな!」


「ええ。そうしましょう!」

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