第23話 カエルムライフ
南の国のある村にて。
「やーい!親無しリュビア!あったま悪ーい」
そう同級生に毎度の如く石を投げられている少女、リュビアが暮らしいていた。
「やめて…」
そう言ったリュビアにいじめっ子の少年が「敬語を使え」と蹴り飛ばした。
リュビアが物心着く前、父親は行商人で出先で魔族に殺され、母親はそれを原因に自殺した。そして叔父の元で暮らしていたリュビアは家でも不遇な目にあっていた。
「はやく!夕食を出しなさい!」
「はい。叔父様」
急かされたリュビアは急いで作った料理を出した。叔父はそれを一口食べて叫んだ。
「ふざけんな!こんなもの作りやがって!金の無駄だ!」
そう言って叩かれたリュビアは涙すら浮かべなかった。この現状に慣れてしまっていたからだ。
「もういい。外で食べてくる。」
「はい。行ってらっしゃいませ…」
翌日の朝方、「また今日も生きてた…」と呟いたリュビアはいつもの通り朝食の準備のために狭い部屋のベッドから降りた。
準備してる間に叔父が起きてきた。
「まだ、朝食を作ってないのか!早くしろ!」
「ごめんなさい…」
その震える手にはフォークが握られていた。
***
時を同じくしてドロガ一行はカエルムへの関所を通るための列に並んでいた。
「結構早い方だと思うんだけどな。」
全く進むことのない列にフリンはため息混じりにった。
「でも前は見えど後ろは見えませんよ。」
そういうシエロに「そっか…」というフリンは頭を撫でられた。
「でもこの感じだと結構いい感じに関所を通れそうだな。」
今にも飛び出しそうに高揚するドロガに5人は呆れてしまった。
「あのなぁドロガ。関所を通るんだぞ?もう少し緊張したらどうだ?」
そういうフリンにドロガはすかさず返した。
「いやいや、フリンくん。緊張は心の中の誤作動が作り出した現象だよ。」
「あっきれた。」
長蛇の列はゆっくりと、しかし着実に進んで行った。
「でもまぁ進んでるんだ。もうすぐさ。」
そういうクロスにフリンは苛立ちを見せた。
「フリン様。大人げないです。」
「うるせぇな。」
「そうだぞ〜大人げないぞ〜」
そう茶化すドロガに舌打ちした。
「すみません。ドロガ様達。フリン様は待つことが大の苦手なのです。前もとても寒い地方でクルヴァ様がヴィラキャンプの設営に手こずった時なんか半日口聞かなかったこともありました。」
「まじかよ怖ぇな。」
ドン引きするクロスにドロガは言った。
「まぁ、いいじゃねぇか。誰にもひとつやふたつ苦手なこともある。楽に行こう!」
「ははっやっぱ俺お前のことが好きだ」
そう笑うクロスにドロガは疑問符を浮かべた。他4人もつられて笑ってしまった。
関所が近づき、緊張感を帯びてきた。そしてその時が来た。
「冒険者6名です。」
堂々とした態度でシエロは言った。
「どんな用で?」
「プロシェヴィルグへの通過点です。」
「魔法使いの人数は?」
「2人です」
「よし。全員名前を名乗れ。」
それぞれ名乗った名は小さな金属の板もといドックタグに刻まれた。
「これがお前たちがここにいていい証明になる。ここを牛耳っている自衛軍に問われた時もこれを見せれば密入国者だと疑われることは無い。」
全員がその小さな金属を受け取り首にかけた。
「では良いカエルムライフを。行ってらっしゃい。」
「いってきまーす!」
そう景気良く通り抜けていくドロガに他の5人は着いていった。
「結構厳重なんだね。フロンティア境界でもこんなに厳重じゃなかったよ。」
そういうマリナにシエロが誇らしげに答えた。
「やっぱり、ドゥンケルハイトへ渡る人達をフィルターにかけるためでもありますね。ドゥンケルハイトととの国交改善のために形だけではありますが門を設置したんです。開かずの門なのですが。」
目を回すドロガとクロスを横目に説明を続けた。
「でも国内にある3つの門は国とは独立した自衛軍に守られていて国の管轄ではないんです。だからお金さえ払えば開いてしまう脆弱性があります。」
「そんな難しいこと分かんねぇよぉ。」
そういうドロガとクロスにフリンは投げやりに答えた。
「要は、クソ国に入るクソを濾してぶっ飛ばす!そゆことだ。」
「「なるほど」」
「バカだねほんと。」
そう辛辣になるマリナにクルヴァはどうどうと落ち着かせた。
「でもなんでそんなこと知ってんだ?」
そういうドロガにシエロが答えた。
「10年程前、魔法学窓にて北方地方の地理について叩き込まれたしたので。」
「かっこいいね〜シエロちゃーん」
そう抱きつくマリナにシエロは満更でも無い顔をした。
「では、まず、カエルム国内で宿を取りましょう!」
「こんなに人が出入りするんだ。宿なんて死ぬほどあるぜ。」
そういうドロガにシエロが答えた。
「いいえ。そんなことも言ってられません。毎日先程のような行列がなだれ込んでくるので争奪戦だと思います。」
「やべえな。午前中に見つけないと!」
「では、全員で別れて宿を取りましょう!宿を取れても取れなくても8時にここに集合で!」
***
「こりゃまた野宿決定だな。」
そういうフリンに絶望的にシエロが答えた
「そうですね…」
「まぁ、いいじゃん!ヴィラキャンプもあるし!あーしたちだけの時なんか屋根すらなかったもん!」
嫌にハイテンションなマリナを見て引いてるドロガを見てクロスはこそこそと話しかけた。
「あいつあれ、ガチで言ってんの?それとも元気づけてんの?」
「わっかんね。」
遅れて戻ってきたクルヴァが『宿取れた』と大きく書いた紙を広げながら走ってきた。
「まじかクルヴァ!」
そう喜ぶフリンにクルヴァはくしゃくしゃと頭を撫でられた。
『一室しか取れなかったけどスイートルーム』
「まてよ。ホテルか!?」
そう聞くフリンにクルヴァは頷いた。
『とても安くで取れた。』
「よくやったクルヴァ!すぐに行こう!」
心躍らせるフリンにクルヴァは髪を掲げた。
『待て予約はしたがチェックインは2時からだ。』
「ではチェックインまでの時間、自由時間にしましょう!5時間後にこの広場集合です!」
「賛成!シエロちゃん2人でショッビングしよっか!」
「はい!魔法道具とか見て回りたいです。」
「俺たちも行くか。」
そうクロスに言われたクルヴァは裾を引っ張った。
『4人で見て回りたい』
「ははっ、そうか。」
そう軽く笑ったクロスはバラバラに歩いていくフリンとドロガに大声で「待て!」と叫んだ。
「こいつが4人でショッピングしたいんだと。」
「大歓迎だよ!クルヴァ!嬉しいぜ!」
走って来て無理やり肩を組むドロガとは反面、面倒くさそうに歩いてきたフリンは、ため息を着いた。
「はぁ。一人で行きたかったのに。」
「まぁ、そう言わずに。」
そう言うクロスに急にハッとフリンは笑顔になった。
「そうだ!みんなでご飯食べに行こう!この時間ならモーニングをやってるぞ〜!」
急にウキウキしだすフリンに3人はだいぶ引いた。
「なんか、あーいう所あるんだな。クルヴァだろ?ずっとそばに居たの。」
『あいつは気分の起伏が激しいんだよ。』
そう書いて見せたクルヴァにクロスが「やっぱガキじゃねえか 」と笑い飛ばした。
料理屋にたどり着いた4人はそれぞれの頼んだ料理に目を輝かせた。
「うまそー!」
「なぁドロガ、そのウィンナー1個くれよ」
「ふざけんな!じゃあミートボール5個で手を打ってやる」
「おい!足元見すぎだそ!。」
「じゃあ交渉決裂だな。」
「わかった!じゃあ3個で手を打ってくれないか。」
「うーむ。じゃあ、間をとって4つだ。」
「ほんっとあいつらガキだな。なぁ、クルヴァ。」
そう呆れ果てるフリンにクルヴァは『あぁ、しかしまたそれも良い』と答えた。
フリンはクルヴァが見せた紙を見て「お前もそっち側かよ」とため息を着いた。
「なぁフリン! おまえはどっちがいいと思う?」
「何の話だよ」
「好きな人と無人島か、嫌いなやつと豪華客船かどっちが嫌!?」
「はぁぁ……クッソどうでもいい。」
4人はやはり散り散りになった。
「なぁ、クルヴァ。武器商店見に行こうぜ!」
『賛成』
「クロスとフリンも来るか?」
「いや、いい俺たちは俺たちで遊ぶぜ。」
「じゃあ!またな」
適当に辺返事するとドロガはクルヴァの腕掴んで武器屋向かった。
「2人とも行っちまったな。」
そういうクロスにフリンは、口を開いた。
、
「 そうだな…。結局お前と2人か。」
「不服か?」
「いや。とりあえず、さっきの店戻らねぇか?」
「え、まぁいいけど…」
、
***
「うぅまい!」
そうフリンは上機嫌に大きなパフェを食べていた。
「そういや気になってたんだけどお前足音しないよなあれなんでなんだ?」
「あぁやっぱり気づいてたか。」
そしてフリンは急に鼻高々に、話し始めた。
「足音を完全に消す靴。魔法道具だ。南方の国で買ったものだったんだが、サイズの合わない中古品だった。そしたら店主が再構築してくれたんだ。」
「すげえな!」
「しかし、だいぶ値段が怖くてな。後でシエロに3時間ぶっ通しで叱られたよ。」
「まぁ、そりゃ叱られるわ。」
「でもな。こいつのおかげで背後に寄れたり、するんだ。」
そう語るフリンは真面目な顔をした。
「俺はただの冒険者だから魔法は使えない。でもみんなの役に立たないといけないんだ。」
「へぇ。それでか。」
そう呟くクロスは語った。
「俺も司祭だからマリナやシエロ程の魔力はない。でも戦いたいと思ったんだ。同じだな。」
そう笑いかけるクロスにフリンは「そうだな」とてきとうに答えた。
「じゃあ、俺、タバコ吸ってくるわ。」
「待って俺も」
そうクロスに続いたフリンは会計を済ませ店の外に出た。
「また俺の奢りかよ!」
「いいじゃねぇか。小金持ちくらいの財産があるんだろう?」
「あのなぁ。いくら金があってもお前らを奢ってたらキリないぜ。」
「ははっ、友達のためと思ってくれ。」
ジト目で中指を立てたフリンにクロスは「次は払うよ」と笑って返した。
***
一方マリナとシエロは魔法店にて物色をはじめていた。
「ここはカエルムの中でも三本の指に入る魔法店だ。是非ともいい品を買ってくれ!」
「ありがとう店主さん。」
そういう話すふたりを横目にシエロは砂時計をひっくり返したり元に戻したりしていた。
「あぁ、それは逆さまの砂時計だ。下から上に砂が流れるんだ。ロマンがあるだろう?」
「ええ、とても興味深いです!」
「こっちは覗き見の単眼鏡。壁は当たり前、思った部分が全て透けて見える!」
「へぇ、面白いね!シエロちゃん!」
「えぇ!とても楽しいです!」
するとシエロはあるとこに気づいた。
「店主様、なぜそんなにニヤニヤしているんですか?」
「いやぁ、な。魔法道具は魔法の躍進によって魔法に代換えさせられる時代になりつつある。そんな中でも魔法道具を好んでくれる若者がいるのは嬉しいんだ。」
微笑む店長にマリナは語った。
「魔法道具が魔法を大きく差を作ることもある。それに魔力を殆ど無く生まれてきた人達に一筋の光を指すこともある。確かに数多の魔法道具の中、自分のほしいものを探すのは難しいこと。でもそこにロマンがあるんだよ。」
熱心に語るマリナにシエロと店長は笑ってしまった。
「何笑ってんの!あーし変なこと言った?」
「いいや、あんたは正しいよ。魔法道具はロマンさ!誰にでも夢を与えられる魔法。それが魔法道具さ!」
声を張って言う店長は豪快に笑った。
「魔法使いだろ?そっちの棚に魔導書もある。値下げもするぜ。」
「ありがとうございます。」
そう言うシエロを横目にマリナは魔導書を見漁っていた。
「これとかいいな!」
マリナが手に取った魔導書には太陽の魔法と書かれていた。
「太陽の熱を焚き火に移す魔法!」
「いいですね!私はこれにします!雑草を高級食パンにする魔法!」
そう選ぶ2人に店主は言った。
「変なの選ぶんだな。まぁいい。魔法道具はどうするかさばるか?」
「いいえ。私のバッグはなんでも入るんです!」
「魔法道具か?」
「うん!もちろん!」
「いい品だな。大事にしてやってくれ」
そこに水を差すかのようにシエロは傘を持ってきた。
「これはなんですか!見た目が好きで買いたいのですが…」
そこですかさず店主は答えた。
「それはな空飛ぶ傘だ。」
「浮遊魔法ですか…」
「いいや、ひと味違う。そいつは高いところから飛び降りた時、グライダーとして意味をなす!」
「浮遊魔法ではできないことだね!」
興奮気味にマリナは喋った。
「店主様。私はこれにします!」
「毎度あり!」
***
5時間後、広場に集合した一行は宿、もといホテルへと足を運んだ。
「いい部屋だなあ!」
「これでは6人は余裕ですね!」
そうテンションが上がったクロスとシエロはベッドにダイブした。
「俺ここ!」
「私はここにします!」
間取りはふたつの部屋に左右にに振り分けられていて中央にはシャワーと洗面台、トイレが配備されていた。
「超豪華!」
マリナは部屋をぐるぐる見渡した。それを見てドロガ、フリン、クルヴァはため息を着いた。
「3人も来いよ!ベッドふかふかだぜ?」
「はぁ、ほんとガキだよなフリン、クルヴァ。」
そういうドロガに2人は答えた
「あぁ。あいつらに合わせれる自信ねぇわ。」
『まったくだ。』
そしてクロスが目を輝かせながら、ドロガとクルヴァを呼んだ。
「おい!研石があるぞ!」
「まじか!剣研ぎてぇ!」
『ぼくも!』
2人が走っていってしまい、残されたフリンはまたため息をついた。
「クルヴァがこんなに楽しんでるの初めて見た。」
そう呟いたフリンはタバコに火をつけた。
「みんな成長してるんだな。俺だけだ。あの時のままなのは。」
フリンは釈然としない顔をした。




