第21話 煙草仲間
シエロとクロスはパシフィカを出てヴィラキャンプへの帰路を辿っていた。
「なぁ、シエロ。フリンっていつもあぁなのか?」
「あぁとはなんですか?」
そう問いかけるシエロにクロスは言葉を濁した
「いや、正直あの歳で馬鹿やったり頭に血が登りやすかったり、酒に酔いすぎたり…ガキっぽくねぇか?」
「えぇ。そうですね。私たち3人の時もあんな感じです。」
そういうシエロに微笑したクロスに対してシエロは向き直った。
「でも、私やクルヴァ様からしたらヒーローです。まず、彼という指針がなければ私は彼を誘っていません。」
「そうか…良いキャプテンだな。」
「はい!この間だって私が魔物にさらわれた時も迷いなく戦ってくださって、傷一つなく助けてくださったんです!」
「かっこいいじゃねぇか。あいつ。」
そういうクロスを見て、熱を帯びたシエロはまたフリンとのエピソードを話し始めた。
「前もですね……」
***
一方ヴィラキャンプ側では、昼食を済ませてから深い眠りについていた。
「お、もう日が暮れ始めてるじゃねぇか。」
フリンはそう言って起き上がった。
「ほんとだ。黄昏時ね。でも今日なんもしてないね。こんなんじゃただの足踏みだよ。」
そう言うマリナにフリンは「そういう日もある」と励ますように言った。
『2人とも遅いな。夕食を作り始めておくか。』
そう紙を見せるクルヴァに3人は賛成した。
「おーい!」
そう声を上げた先にいたのはクロスとシエロだった。
「おお!2人ともどこ言ってたんだ!」
「フリン様!遅くなってすみません。買い出しをしてきました。」
「おう、ありがとうなシエロ。他に何を買ったんだ?
「あっそうです!クルヴァ様!ちょっと剣持って来てください!」
そしてクロスたちも仲間の帰還を喜んだ
「ドロガぁ!遅くなったな!わりい。」
「ほんとだよ!どこ行ってたんだ?」
「まぁ落ち着け、南の町パシフィカまで行ってたんだが勇者一行の名前がわかったんだ!」
「なんだって!?」
「あぁ、クラウン、トロノス、エイル…」
「その3人はおれたち知っているんだ。トロノスにはあったこともある!」
「なんだよ。そうなのか。」
クロスは少し落胆した。
「でも最後がの人が難題なんだよな」
そういうドロガにニヤケ面で話した。
「あぁ、もちろん聞いてるぜ」
気がつくと4人もクロスに集まっていた。
「その名は…ファルシュ」
この場の空気が一瞬止まった。
「なんかぱっとしねぇな。」
そういうフリンをシエロが叩いた。
「なんでそんなこと言えるんですか!それでも冒険者ですか!?」
そう叫ばれたフリンは「スミマセン」と情けない声で言った。
「しかしドロガ様、マリナ様がトロノス様とあったことがあるのは驚きでした。」
「そうだな。今まで人伝いに来て、偶然出会えただけだからな。なぁ、マリナ。」
「うん。エキサイトまではコンパスと勘だったからね」
「エキサイト!私たちも通りました。」
そういうシエロに2人らはおどろいた。
「ほんとかー!」
「ほんとに?」
「エキサイトなんて冒険者の大半が通る道だ。」
おれたち飯作って待ってたんだぜ〜?」
「マジかよ!ぜひ食いたい!」
「いやぁ、でもほとんどクルヴァが作ったんだけどな。おれたちお粥食わしてもらったんだけど死ぬほど美味かったぞ!」
そう言うドロガにシエロは割り込んできた。
「そうなんです!そうなんです!クルヴァ様はずっと料理が上手くて毎回美味しい料理を作ってくださるのです!」
クルヴァの元に戻って仕上げを手伝いに行ったシエロを横目にドロガはクロスにヒソヒソ話した。
「あいつら絶対ナカコンだよな。」
「ナカコンってなんだよ。」
「仲間コンプレックス」
「あー。あるな。絶対そうだ。」
若干引きつつある2人にフリンは横に座った。
「どうだよ。うちのふたりは。なかなかだろう?」
そう言いながら誇らしげな顔でフリンが近づいてきた。
「あぁ。気配りができるよな。」
先程の会話もあってクロスはかたどたどしく答えた。
「こちら料理班!異常なし!いつでも食べれます!」
そう叫んだマリナにみながわらわらと集まってきた。
「腹減ったぁ!」
「そうだな。もう日が暮れてるもんな。」
「いっぱい食べしましょー!」
若干ハイテンションなシエロを見てみんなが笑いかけた。
「え!?私変なこと言いました!?」
***
翌朝、クロスはひと足早く起きてタバコを吸っていた。するとそこにタバコを加えたフリンが歩いてきた。
「火いるか?」
そういうクロスにフリンは断った。
「シエロが無限火打石を買ってきてくれたんだ。タバコを吸うには使いづらいけどな。」
「ははっ、結局どっちも仲間のためだったのか」
その言葉にフリンは問いかけた。
「どういうことだ?」
「あいつ、俺と南に出かけた時、刃こぼれを治す魔法とその火打石を買ってたんだ。魔法はクルヴァへの、石はお前への、お土産だったんだな。」
「そうか…シエロのやつ…あいつは、いつもそうだ。自分のことより仲間のことを考えてやがる。」
「いい仲間じゃねぇか。」
「まぁ、そうだな。でもそれだけじゃねぇんだ。」
「それだけじゃないって?」
「自分を蔑ろにしてしまうんだ。」
クロスは息を飲んだ。
「だから俺は盾になってやらなきゃいけない。」
「そうか。でも大前提、お前も自分自身を大切にしないといけないぜ?」
「え?」
「頑張りすぎんなよ。」
するとクルヴァがカチャカチャ朝食の準備をはじめているのに気づいた。
「おい!クルヴァ、呼んでくれれば手伝うのによ!」
そう叫んだクロスにクルヴァは紙にスラスラ書いて見せた。
『僕との方が上手くつくれる』
そういうクルヴァにフリンは「言ってくれるなぁ!」と頭に軽くゲンコツをお見舞いした。
そう言っている間にドロガ、マリナ、シエロが起きてヴィラキャンプから出てきた。
「いい匂いですね…クルヴァ様何か作ってくださってるのですか?」
『あぁ。昨日シエロとクロスが買い出して来てくれた具材でベーコンエッグとコーンポタージュを作ってる。』
「いいなぁ。」
ワクワクして急かすドロガをクルヴァは追い払った。
『シエロ、ヴィラキャンプにあったパンも使っていいか?』
「えぇ、もちろんです!」
朝食の準備が整ったクルヴァはマリナに全員へ配膳させるように頼んだ。
「はい!こっちがポタージュでベーコンエッグとトーストね」
「見たらわかるわ。」
そうフリンに突っ込まれたマリナは「そりゃそうか」と笑いかけた。
***
みなが寝静まったあとの夜中ドロガはココアを飲んでいた。そのところにフリンが訪れた。
「なんだ、フリン。寝れないのか?」
「いや、起きたんだよ。」
「そうか。」
一瞬の静寂を切り捨てるようにフリンは、問いかけた。
「なぁ、仲間の事好きか?」
唐突な質問にたじろぎながらもドロガは「もちろん」と答えた。
「そうか。でも、これから北はそうはいかねぇ。もしかしたら仲間を切り捨てなければならないかもしれない。」
「どういうことだ?」
「言葉通りだ。北方の地帯は冒険者を無数に殺してきた。もしこの先誰かがくたばっても死んでいく仲間に付き合う義理はないということだ。」
「おれは無理だ。仲間を見捨てるなんて勇気は無い。だから、誰も死なないようにする勇気をもなければならないんだ。」
「お前らはそれでいいのか?冒険者パーティと言うよりは同好会だ。」
「同好会でもいい。今まで戦ってきた戦績がおれ達にはあるから。だからこのままでも何ら問題はないさ。」
「そういう所が甘ちゃんだって言ってんだよ。」
「それもおれたちの良いところだ!」
「お前ってやっぱ変なやつだよ。」
そういうフリンに微笑みかけたドロガ。それにフリンは釣られて笑った。
「もうすぐ日が登りそうだな。寝に戻るか。」
そういうドロガにフリンは答えた。
「おれは日の出を見るよ」
ドロガはフリンのらしくない言葉に目を丸くしたが、柔和な声で話した。
「じゃあ、おれも見ようかな。日の出。」
「なんでだよ。眠たいんじゃないのか?」
「いや、フリンと日の出が見たくなったんだ。」
「そうか。やっぱ変なやつだな」
日が昇る頃、クロス、シエロ、クルヴァも起きてきた。おはようと挨拶を交わした5人はまだ眠そうにしていた。
そして少し遅れて頭を抑えながらマリナも出てきた。
「夜って短いよね…」
そういうマリナにクルヴァがサラサラと書いた。
『とりあえず朝食にしよう。準備してくる』
「あーしも!」
***
食事を終えた6人は話に花を咲かせていた。そこに水を差すようにフリンがドロガに振った
「おい、ドロガ。今朝のこと話さなくていいのか?」
「あぁ。みんな…あのな…
「じゃあ、アリスってエルフが予言してるのにバーグリーブのせいで無視したってこと!?」
そう言ったマリナにドロガは落ち着かせるような声で話し始めた。
「いや、今のはおれの感じたことだから間違っているかもしれないんだ。でもこの仮説だと結構合点が行くんだよ」
「いや、強ち間違いでは無さそうだな。」
「まず、バーグリーブに勝って話を聞くべ…」
そういうドロガにマリナは話をとぎった
「そうと決まればバーグリーブを探すべきだよ!」
「いや、多分あの時の襲撃はおれを殺すためだった。だから放っておいても向こうから来るはずだ。」
「でも、ドロガの寿命が先に来ちゃったらどうするの!?」
「それはその時に考えるよ。」
そう笑うドロガにマリナは呆れてしまった。
***
「そろそろ出発しようか!」
「まずヴィラキャンプを片しますね。」
そういうフリンとシエロにドロガがストップをかけた。
「待てよヴィラキャンプには飲みかけのボトルも水も食べかけの食べ物もそのままだぞ?」
「いいえ、大丈夫です。次ヴィラキャンプを広げた時にちゃんと今のままで戻りますので。」
そういうシエロにドロガとクロスは「すげぇ!」と目を輝かやかせた。
「クルヴァー。これはこのままでいいの?」
そう焚き火の跡を指すマリナに反応し、靴で削って揉み消した。そしてクルヴァはサラサラ紙に書いて見せた。
『ありがとう。忘れていたよ。』
「いいえ。」
満悦な表情で既に出発した4人の元へ走った。クルヴァはそれを見て、微笑みながらため息を着いた。
「おーい!クルヴァ!はやくこい!置いてくぞー!」
そう呼ばれたクルヴァはゆっくり歩き出し、そして早歩き、そして最終的には5人の元へ走り出した。
6人はまた、プルシュヴィルクへ歩みを進めるのだった。




