第2話 黒魔術の魔法使い
ドロガは、勇者クラウンの背を追う旅を始めるにあたって信頼できる仲間が必要だった。しかしドロガは村から出たことがなく周辺の土地勘もなかったドロガはとりあえず、いちばん近い村のセトリア村の方角、北に歩いていくことにした。コンパスを気にしながら少しずつ歩みを進め、十数時間。こんなに歩いたのはドロガにとって初めてだった。
歩き疲れ果てた頃、ドロガは道中、運悪くゴブリンに囲まれた。ドロガのが道中拾った古いオレンジのバックパックをみてゴブリンは金目の物があると察知し、金品を要求した。既に臨戦態勢だったゴブリンに対して立ち向かうほどドロガは体力はなかった。
「毒茸クリエ!触れたものは中毒になり最悪の場合死に至る。これでもまだ戦うか!」
ドロガは叫んだ。彼は毒茸クリエの偽物を使い不戦勝を狙っていたのだ。なぜなら彼には戦闘能力がずば抜けて無かったからだ。運動も苦手で泳げないのはもちろんまともに走れもしなかった。毒茸クリエの偽物をみてゴブリンは出任せで言い放った。
「毒茸クリエ。そのことは知っている!しかし我らゴブリンは免疫が強い!そのため毒茸中毒には陥らない!」
「はったりだな。」
数秒も経たぬ程食い気味にドロガは言った。ドロガは村が破壊される前、父親に調剤技術を習っていた。そのため嘘が見破れたのだ。
「毒茸クリエには、アスタリン酸が入ってる、十分毒茸中毒になりうるはずだ!」
「もしや、その毒茸、偽物じゃあねぇよな。毒茸クリエなんて代物お前のようなみすぼらしい人間が持ってるはずがねぇ」
今度はドロガが見破られた。ドロガは頭の中の記憶を張り巡らせ逃げる方法だけを考えた。ゴブリン達をどのように振りほどくか考えた。自分の持つ全ての技術でどう戦うことができるか。そう考えていくうちに手にナイフを持っていた。彼はナイフを使ったことがなかった。ナイフを出したことによりゴブリンを刺激してしまったようで、ゴブリン達は、長剣、盾、ハンマーなど様々な武器を手に取り始めた。
「あたりのようだな」
ゴブリンは、にやけ面でドロガを見た。武装した大人数に対して刃渡り10センチのナイフでは太刀打ちできないことはドロガが一番わかっていた。異様なほどの運動神経の無さがここで祟った。ゴブリンがじわじわと近づいてくる中で覚悟を決めた。
「痛いのやだなぁ…」
すると先頭にいたゴブリンがパラパラと塵となった。ゴブリンもドロガも止まった。
「お前は人間か?」
大きいボストンバッグを背負った男がドロガに聞いた。突然の疑問に一瞬たじろいだが、ドロガが首を縦にふる。男はゴブリンの方とドロガの方をきょろきょろ見つめ、ドロガに言った
「魔力が家出してるようだが…助太刀してやろうか?」
ドロガはまた、首を縦にふった。
「ポルボバイーラ」
パッと杖が光ったと思うと、またさっきと同じようにゴブリンが塵になった。男はそう唱ながら軽く杖を降ってもう1人また、もう1人とゴブリンを塵にしていった。
「まってまって!もういいって!」
急いで止めるドロガ。男は逃げていくゴブリン達を横目に、そうか。と呟いた。とても冷静な男であった。
「じゃあ、おれのバックパックを返してくれないか?」
「あっ……」
***
「いやぁー!ほんっと、これは運命だぜ!」
酒の匂いを漂わせながら男はドロガの肩を組み、さっきの冷静沈着な性格とは打って変わって大口を開けて笑った。素面のドロガは少し面倒くさそうにはいはいと交わしていた。
話を聞くに男の名はアルタン。黒魔術の魔法使いで黒魔術の大魔法使いダイレンに会うために旅を続けていると言う。ダイレンはドロガでも聞いたことのある名だった。しかしダイレンが生きているとなると齢80近い年で生きているかも怪しかった。しかしアルタンはダイレンが生きていることを信じていた。
「いやぁ、しかし、お前はなんで旅をしているんだ?」
と、アルタンは聞いた。少しの沈黙があり、ドロガは勇者クラウンに憧れを持っていて、旅をして冒険者として歴史に名を残したいということを話した。アルタンには話しても良いような気がした。アルタンはじっとドロガの目を見てまた笑った。
「勇者クラウン!最高じゃねぇか!じいちゃんに本を読んで聞かされたことがあるぜ。」
思った通りアルタンはハイテンションなまま、肯定してくれた。勇者クラウンには敵が多かった。第一級戦犯なんてふざけてると。
***
ふたりが見渡す限り宿屋は無く、というか建物がなく、ドロガとアルタンはその夜、野宿することになった。
アルタンは朝焼けで眠りから覚めた。オレンジに染まる雲とまだ少し暗い青い空をみて薄いコーヒーが入ったスタッキングを持ち欠伸をした。続いて、ドロガが起きた。おはようと挨拶をかわし瞼が重いまま、朝食を調達しに釣りに向かった。3匹だけ釣れた川魚を焼いている時唐突にアルタンはドロガに、ひとつ提案した。
「昨日から考えていたんだ。お互い助け合うための仮のパーティとして旅をしないか?」
や
ドロガにとって仮であっても初めての仲間ができるとなると嬉しくて即答で快諾した。真の目的はそれぞれ違うものの気が合う楽しい仲間ができたことでドロガは一層、旅へのモチベーションが湧いてきた。色んなところに行こう、楽しいことをしよう。と、 テンションが上がったドロガはアルタンに身を乗り出して言った。しかしアルタンは昨日の夜とは打って変わって冷静な青年だった。
「まぁ、あれだな。とりあえず、大都市 ネペロにある冒険者ギルドへ足を進めよう。そしたら冒険者ギルドで仲間をみつけられるからな。」
「おぉ!早く行こう!」
「まぁ、落ち着け。」
アルタンは地図を指さし、説明を始めた。
「いいか?ちょうど北にあるネペロに行くには、ふたつの村を通る必要がある。そのうちの一つがセトリア村だ。」
ドロガは自分の向かっている場所が正解と認められたように感じ含み笑いをした。アルタンは話を続けた。
「しかしだ。セトリア村は、最近魔物に荒らされていて、その因果か閉鎖的で村を自警団が守っている。入るのにも2人組の冒険者パーティなんか殴り飛ばされて、いい方だ。」
落胆したドロガに、アルタンは提案した。セトリア村を西に迂回して北上し、セトリア村の後に通るソアリンド村に向かい、そこを一旦拠点にする事。そこからまた、ネペロへ向かおうと話すアルタンにドロガは目輝かせた。そして、ドロガとアルタンはソアリンド村に向けて足を進めた。




