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第12話 酒場教室

「もうそろそろエキサイトをでたらいいんじゃないか?急ぎだろ寿命も。」


「なんでそれ知ってんだ?」


トロノスの言葉にドロガは間髪入れずに言った。それにトロノスは答えた。


「おれはなんでも知っているんだ」


***


翌日の朝、ふたりはトロノスの店にて朝食を食べていた。ドロガはカウンターにいるトロノスに話しかけた。


「なぁ、トロノス!おれたちの冒険について来ないか?」


マリナは失礼だとドロガを制止しようとした。


「くはは。うれしいお誘いだな。」


「おっ!じゃあ!」


喜びを表したドロガにトロノスは首を横に振った。


「行けないよ。もう戦えるような歳じゃないんだ。」


少し寂しそうな表情で言った。


「お前たちの足枷になりたくないんだ。」


それでも尚勧誘しようとするドロガにマリナが割って入った。


「トロノスにはトロノスの人生がある。ドロガがトロノスを好きならトロノスが決めたことを尊重すべきだよ。」


少しの沈黙の後ドロガはハーっとため息を着いた。


「わかったよぉ」


「っじゃあ買い出しに行こっか!ドロガ。」


元気を出してと言わんばかりにマリナがドロガの背中を叩いた。そんな情景にトロノスは昔の記憶の断片に思いを馳せていた。


***


「クラウン!エイル!いつまで飲んでるつもりだ!」


トロノスは叱咤した。


「らってぇぇぇクラウンがぁぁ」


言い訳がましいエイルにトロノスは蹴りを入れた。


「おい!お前もだぞ、クラウン!」


「ごめんてぇ」


クラウンの背中を引っぱたいたトロノスはほとほと疲れきった様子で椅子に座った。


「ったく。今、魔物や魔族と出会っちまったらどうするんだ」


「まぁまぁ、トロノス、気ばっか張ったって疲れるだけだよ。たまにはいいんじゃない?」


宥める×××にトロノスは落ち着きを取り戻した。


「ねぇ、トロノス。あたしと買い出しに行こっか。」


×××はトロノスに荷物持ちを頼んだ。


「おい、老兵に何をさすんだ。」


「老兵って歳じゃないでしょ。」


***


「懐かしいな…」


そう呟くトロノスにドロガとマリナは振り返った。そしてトロノスは言った。


「なぁ、買い出し…一緒に行ってもいいか?」


少しの沈黙の中ふたりは笑って返した。


「大歓迎だ!」


3人は買い出しに向かった。


「おい!おかしいだろ!なんでおれが荷物持ちなんだ!」


荷物を持たされたトロノスは文句を漏らした


「いつもはおれが持たされてんだ。今回だけ!なぁ?」


「今回だけって…おれは今回っきりだぞ! 」


ため息をつくも、トロノスは友達のような距離感が少し嬉しかった。


「しっかし、トロノスは歳だと言う割には良く動けるよなぁ。やっぱ一緒に来ねぇ?」。


「行かん。」


そして買い出しが終盤に差し掛かった頃


「お腹空いたー。」


トロノスと同様、結局荷物持ちになったドロガはねを上げた。


「一旦家に寄れ飯を作ろう。」


そう言うトロノスと2人は遅い昼食をとることになった。


「うめぇ!」


「だろう?」


「こんなのどうやって作ったの?」


「秘密だ。」


トロノスは感嘆する2人に優越感を感じ、軽く笑顔になった。


その日の夜。トロノスは2人に話し始めた。


「さて。お前らは何かと知識が欠落している。だからな。知識の再確認をしよう」


当然のイベントにふたりは驚いた。


「お前らは人と魔族と魔物 。この違いを説明できるか?」


「いや…人は人だろ、魔族は…あ!触手だすよな!あと角生えてるやつもいるな。」


そう言うドロガにトロノスは言った。


「あぁ。そうだ。魔族や魔物は角が生えてる。また、物によれるが小指が失って産まれてくるものがいる。触手は魔族の攻撃手段の一つだ。」


「物によるがってことは小指がある奴もいるってこと?」


「あぁ。800年前の大魔法使いホグマッジが人間との見分けが着くように小指を持たない呪いをかけたんだ。魔力を産むアンテナとしての役割である小指を失う。呪いだ。要は800年以上前から生きている魔族には小指があるって事だ」


まるで教師のようにトロノスは喋り始めた。


「まず、前提として人と魔族は似て非なる元だ。人は数々の肉体、魔力そして呼吸や食事によって生命活動が行われているが、魔族は魔力の歪みによる拍動で生命活動が行われてる。」


「でも血は出るよな。」


「身体というカゴから漏れ出た魔力が液化されて、それが偶然赤いだけだ。」


頭がパンクしそうなドロガをわきに聞いていたマリナが言った。


マリナは疑問をぶつけた。


「ねぇ、魔法が液化するなんて聞いたことないけど…」


「簡単に言うと魔力の物体化だ。」


「魂の天秤!」


「そういうことだ!」


「確かトロノスが言ってたよな。古代魔法を物体化してるって!」


「物体化する魔法は魔力と魔族から流れ出る魔力の応用なんだ。」


そしたらマリナは少し興奮して話を遮った。


「ってことはこの国にはその魔法を物体化する魔法使いがいたってこと!?」


「あぁ。でもその魔法はあまりにも整合性のなってない稚拙なものだったろうがな。」


「その魔法を作ったのって誰だ?」


「そうだよ。お前らも知ってる白魔術の大魔法使いロザリーだ。」


ふたりはあまりの情報量に目を回した。しかしそれに目もくれずトロノスは話し始めた。


「彼女は魔力の物体化する研究に尽力した魔法使いのひとりだ。魔族や魔物の体から出る赤い魔力の液体に目を向けた。そして70年もの実験に実験を重ね魔法の物体化に成功した。ただ。しかし魔力を著しく削る一方で失敗も多く、実用化には至らなかったがな。」


「へぇ。」


既に飽きてきてるドロガにマリナは黙ってチョップした。


「まぁ、なんだ、難しい話はしたが、多方このエキサイトに偶然立ち寄ったロザリーの弟子かなんかが魂の天秤を物体化したんだろうよ。」


「色々教えてもらうには時間が短すぎるぜ」


頭から湯気が出そうなドロガにマリナは言った。


「まぁ、後ですり合わせよっか」


「では話を戻すが角を隠して指も隠してたら、見分けようがないよな。どうする?」


「無理じゃない?見分けっこないよ。」


「いいや。そのために魔力探知や魔力察知があるんだろう?」


「そっか!魔力を見分ければいいのか!」


「そうだ。魔力の歪みを利用して生きてるあいつらの魔力はぐちゃぐちゃだ。魔力を見れない人間が見ても空気の揺らぎ方でわかる。」


そういうトロノスは続けた。


「じゃあ、それからだ、クラウン達たちの旅路を教えてやる。ちょっと集まれ。」


店の大きなテーブルを囲み、トロノスは地図を広げた。


「いいか?」


ふたりは息を飲んだ。


「まず、お前たちは魔王城へ行くので間違いないな?」


ふたりはこくんと頷いた。


「それならこのまま北上しろ。するとドゥンケルハイトという国に行き着く。そこからそのままとにかく北上しろ。どんな国を通ろうとも、どんな村を通ろうとも。」


「ドゥンケルハイト…」


自分たちの指針がここにあると信じ頭を使った。しかし、マリナが立ち上がった。


「待ってよ!そこまでしか教えてくれないわけ?」


そう言うマリナにトロノスはにやりと笑いながら諭した。


「全部知っちまったら面白くねえだろう?」


ふたりの帰り際トロノスは 唐突にトロノスはマリナを呼び止めた。


「なに?」


「おまえはなんのために旅をしているんだ?」


「特にないけど…強いて言うならドロガの旅の果てを見るためかな。」


「あいつの旅の果てか…確かに気になるな。」


***


「クラウン。私たちは魔王討伐に行くんですよね。」


「あぁ。そうだよ。エイル。」


「では、クラウンの旅の果てはそこなのでしょうか。」


「いや、魔王を倒した後のことなんてまだ分からないよ」


「どういうことだクラウン。魔王討伐より先になにかあるのか?」


「おやおや?トロノス君。君は魔王を討伐したあとすぐに解散するとでも思っているのかい?」


「また、付き合わせられるのはごめんだぜ」


皮肉っぽく言うトロノスにクラウンは微笑みかけた。


「旅には果てはないよ。でもね強いて言うなら、青空を見上げた時、思い出して笑ってしまうような、そんな旅が僕の旅の果てかな。」


***


「旅の果て…クラウンの旅の果ては見れなかったんだ。」


「そっか…そうなんだね」


「あぁ。なんだかんだでずっと4人一緒にいるもんだと思ってたんだ。」


悲しげに言うトロノスにマリナはかける言葉がなかった


「おいマリナ何してんだ!先いくぞ!」


「あっ、わかった!今行く!」


ドロガに大声を出して返事したマリナはトロノスにひとつ聞いた。


「トロノス。クラウンの旅の果てはどこだったの?」


「あぁ…


***


「お前たちは旅の果てを見れる。そんな気がする。」


「うん。頑張ってドロガについて行こうと思う」


おいまだかと叫ぶドロガにマリナははいはいと軽く返事をした。


「ありがとう。おやすみトロノス」


「あぁ。おやすみ」


***


その日の夜中トロノスは氷の入ったカップにウィスキーを注いで勇者パーティの写真を見てクラウンの顔をメンバーの顔を見た。


「なぁ、クラウン。あいつらどう思う?かっけぇ奴らだろう?」


何も返事は無いがそれでもトロノスは良かった。


「お前の言う勇猛な象徴に慣れやしないだろうか?おれは結構気に入ってんだ。だから色々喋っちまった。2人とも嫌がるだろうな?クラウン、エイル…」


今は亡き戦友に思いを馳せるトロノスは呟いた。


「明日は晴れの予報だ。青空が顔を出すらしい。全く…青空は嫌いだ。お前達の笑顔を思い出しちまう…」


それからトロノスは微笑みながら言った。


「おれの予知魔法じゃ、えらく大変なことを繰り返す運命だが見える。」


そして最後に残った酒をくいっと飲み干して言った。


「おやすみ、クラウン、エイル……」


トロノスは灯ったキャンドルの火をふっと消して椅子から立った。軋む床を歩き、2階の家へと戻っていった。

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