第10話 加担
「おい起きろ!」
ふたりは体をゆすられて起きた。
「なんだ、おっさん。もうエキサイトか?」
「馬鹿野郎。一旦キャンプだ。」
***
「今どんな感じだ?おっさん」
「森をぬけて、今エキサイトに向かってるとこだ。言うなら5分の1くらいだな。」
「そっか。意外とはえーな。」
「そうだ。なんせうちの牛”ポニー”は超優秀な子だからな」
男が牛自慢を繰り広げてる中ドロガは声を殺してマリナに言った。
「牛なのにポニーってセンスないな」
「しーっ!黙ってて!」
キャンプが始まってから数時間後の明け方。ある気配を感じ剣に手を伸ばした。
「おい!マリナ!おっさん!起きろ!」
なにぃ?と起きるマリナの目に飛び込んできたのは巨大な鹿のような魔物だった。
「ヤバすぎる!あーし達じゃ勝てない!」
魔力察知をしたマリナは叫んだ。
「おれが足止めをする!おっさんを連れて逃げろ!」
「ドロガは!?」
「おれは死なねぇ」
軽く頷いたマリナは男を牛舎に乗せ馬を見よう見まねでポニーに、合図を送った。その時牛は暴走しながら進んでいく。マリナは悲鳴をあげた。
一方鹿の魔物を対峙したドロガは瞬く間に飛びかかりスカッと剣が空ぶった。
「ありゃ?」
「本命はお前だ。逃げないでくれて助かるよ。」
マリナの見た大きすぎる魔力とは鹿の魔物の幻影の後ろにいたこの魔族のものだった。
「くっそ、魔族は苦手なんだけどなぁ」
「私は九鬼のうちの一人バーグリーブだ。貴様の首を切り落としに参った。」
鋭利な角を頭から突き出した長寿の魔族だった。
「なんで俺を狙うんだよ」
「簡単な話さ、ある魔法使いが残した反乱因子。いつか魔王になりうる器なのだからだ、」
「ならねぇよ。」
「いや、きっとなる。そうプログラミングされているのだ。」
バーグリーブは続けて言った。
「私は今は自由!!魔王の存在が止められているからだ!しかしお前が新しい魔王になれば私は自由を奪われる。」
「だからならねぇって」
ドロガはすかさず反論した。
「だから私は勇者クラウンへの、恩返しにするとしよう今度私がお前という魔王の器を殺すすることで借り貸し無しになる!そうだろう?」
そういうバーグリーブは、ドロガを見てつぶやいた。。
「いい魔力だ。」
一方マリナたちは暴走牛車によって、また森の奥へ入っていってしまった。
「やばいやばいおじさん!起きてよ!」
「おん?ってお前うちのポニーになにを!」
「違うの魔物に襲われておじさんを助けたんだよ!?」
***
「なるほど…それで…」
牛車を止めた男とマリナは一息ついていた。
「あの魔力0のドロガを1人にしては行けないの。どうしたらいいか…」
「なぁに一緒に行けばいいじゃないか。」
そういう男はおもむろに杖を出した。
「おじさん魔法使いなの!?」
「あぁ。黒魔術の魔法使いだ。と言っても魔法ひとつしか使えないがな。あとおっさんじゃない。おれの名前はガゼットだ。」
ふたりはドロガの元へ向かった。その時だった2人の目に飛び込んできたのは衝撃の光景だった。
「いやぁ。手強かったよ。不死身の人間をどうやって戦闘不能にするか。」
自らの剣で串刺しにされているドロガを見てマリナは絶望した。
「そこで思った。傷を直せなくすればいいんだと!体の間に刀が刺さってれば再生しようがないからなぁ!」
「トロセアール!!」
そう、斬撃の魔法を放ったガゼットはパーグリーブの放った反転の魔法によって跳ね返された。ガゼットは膝を着いた。黒魔術で敵わないなら白魔術で通用するわけないと思ったマリナは咄嗟にドロガに向けて走った。それを拒むようにバーグリーブは斬撃の魔法を放った。しかしマリナは盾の魔法で避け切り杖を振った。
「パラリシス!」
少し倒れそうになったバーグリーブはすぐに体勢を直し向き治った。
「その魔力じゃ勝てっこないぜ?」
「それでもやるしかないの!」
マリナは加速の魔法で、ドロガを奪還し剣を抜いた。
「いってぇ……マリナ!ありがとう!」
「うん…遅くなってごめんね 」
「せっかく作った人の生け花に、何をするんだ!」
そう、激昂するバーグリーブを無視するようにドロガはマリナに話し始めた。
「いいか?まず、あの鹿の魔物はこいつの出してる幻影だった。そしてマリナが見た魔力はこいつだったってことだ。」
「なるほど。」
「魔法使いのマリナしか戦えない。」
「ちなみにガゼットさんも魔法使いだよ。」
「かじっただげだけどな」
「へぇ、おっさんすげぇな」
「ガゼットだ。」
そこで痺れを切らしたバーグリーブは叫んだ
「私を除け者に女子会みたいなことかましやがって。」
全員が身構えた時バーグリーブは襲ってきた。
マリナは風の魔法で近づいて麻痺の魔法を放った。その時バーグリーブは触手を出した。マリナはすんでのところで避けたが、壁にぶつかり体制を崩した。
「マリナ!起きろ!あいつ、とうとう本気みたいだぜ」
「私を舐め腐ったような目を潰してやる。」
ガゼットは飛んできた触手に斬撃の魔法を放った。
触手で交わしたバーグリーブは詠唱した。
「シャトーノーン」
その魔法は紫色の光を放って岩山に爆音を鳴らした。マリナは反転の魔法を使い、反射しようとしたがそれには遠く及ばなかった。
「最強と謳われる三大魔法か…」
「おい!ドロガ!魔法を使え!早く!」
そういうバーグリーブに魔力がないと反論するが膨大な魔力を持っていると、聞く耳を持たなかった。
「お前の魔力はデカすぎるんだ!デカすぎてその魔力に気づかねぇ!」
「実際、少し魔力が減った今ならわかるはずだ!空の色が変わるからな!」
そう言ってまた触手を伸ばし、ドロガに一直線だった。しかし、ドロガが切り伏せた。バーグリーブは苦痛の表情を浮かべた。
「そんなの聞いたことない!」
動揺しつつもマリナは反論した。しかし、やはりバーグリーブは無視し、続けた。
「ドロガ!お前はいつかきっと、いや、必ず魔王になる素質がある!だからお前を殺す!!」
「おれは冒険者だ。だから魔族を殺す。それまでだ。バーグリーブ。」
「いいや、違う!生き残れば、そして魔王城に着けばその玉座に座る。決まっていることだ!」
「バーグリーブ。おれの命はあと一年もない!魔王なんかにならない!お前の目論見は無駄なことだ。」
「お前が2年で死ぬことなど知っている!あの日私はあの場にいたからだ!」
驚愕したドロガ達は呆然とした。
「ある魔法使いが私に加担した。ある契約の元にな!」
そう言った瞬間、触手はマリナを狙った
「マリナ!」
バーグリーブの触手をドロガが受けた。
驚愕するマリナとガゼットはドロガを見た。
「やっぱり不死身って最強だなぁ!ドロガ!」
バーグリーブは雄叫びを出し、触手をまた出して 直線に出し切ったバーグリーブにガゼットは話し出した。
「おまえの魔力には局所的に歪みがある。そこを着けば大体の魔法は通る!」
マリナはそれを聞いて麻痺の魔法を使うとちょうど歪みにあたりバーグリーブは膝を着いた。
「私はドロガを殺さなければならないのに…あのクソエルフの情で生かされたクソガキを…」
そしてドロガは剣を抜いてバタリと地面に伏したバーグリーブにドロガは言い放った。
「悪いな。こっちは時間が無いんだ。ちゃんと死んでくれよ」
その瞬間ドロガ達に手を向けた。
すると触手を大爆発がさせた。
煙たい中で3人はバーグリーブを見失ってしまった。
ドロガはバーグリーブの言う”ある女”に疑問が入り交じっていた
***
5日後、ドロガとマリナが乗るガゼットの牛車は城下町エキサイトに向かっていた。
「おい、着いたぞ!」
エキサイトの宵の口。街灯が灯りライトリアよりも幻想的な世界が広がっていた。ガゼットと別れたふたりはエキサイトの宿にて休息を取っていた。
「バーグリーブが言うには膨大な魔力すぎて見えないって言ってはいたけど、本当かな?」
「おれは魔力がどうこうよりアリスとバーグリーブが1枚噛んでたってのが謎だな。」
「魔族のことなんだからハッタリでしょ」
そういうマリナに真剣な顔で言った。
「いや、あいつの言っていることは本当な気がするんだよな。」
***
翌日、本来の目的であるトロノスを探しに向かった。
「でもドロガ、時間ないでしょ。良かったの?エキサイトなんか寄ってっちゃって」
「あぁ。時間は無くてもクラウンの仲間と聞いちゃ、会わずに居られないからな。」
そしてふたりは口コミを求め、人にトロノスの情報を聞き取りに向かった
「トロノスっていう人を探してるんだけど…」
そう町人に聞いた3回目。ドロガとマリナに町人はにこりと微笑みかけた。
「お客さんだね。トロノスさんは突き当たりの酒場を営んでるよ。ちなみにアタシはそこのウェイターだよ。」
町人に案内されたそこは、古びれた酒場でトロノスの酒場と書かれていたがあった。ふたりは(安直だなぁ )と心の中で呟いた。
「トロノスさん!お客さんだよ!」
「おぉ、ありがとうな。今日非番だろう。戻って良いぞ。悪かったな。」
そう言って出てきたのは小さなホビットだった。
「ちっちぇえ!」
そういったドロガはトロノスの杖で頭を叩かれ、名を名乗れ!と叱られてしまった。どうやらここはトロノスが最後に来た町のようだった。
「サワコフ村でトロノスは戦闘員だったって聞いたんだ。 」
「勧誘なら断るぞ」
「違うよ。勇者クラウンの話を聞きに来たんだ。」
「あぁ。なるほどな。そういう奴は何十人もいたよ。おれが最後の生き残りと思ってからな。」
「やっぱ勇者クラウンは死んでるのか…」
「あぁ、死んでる。ただ聖典セサルニウスの書を残していった。」
マリナは驚愕して大声を出した。
「セサルニウスの書!!!???」
「なんだなんか珍しいのか?」
そう疑問符を付けた言葉を投げかけたドロガにマリナは興奮気味で説明した。
「セサルニウスの書は、遥か昔、このアゴーラ大陸はサンチュアリオ皇国として発展していたの。でも、ある時、国民の3分の2が参加した一揆が起きた。その最後の皇帝がセサルニウス。彼は死の直前、自分の書いた書や、魔力を持った服などを家臣に転々と散らばらせるようにしたの。そのひとつが聖典セサルニウスの書。とんでもない魔法を記した魔導書なのかとも言われてるの!」
黙々と説明するマリナにドロガが目を回した。
「で、セサルニウスの書には何が書いてあるの?勇者のパーティなら何か知ってるでしょ!」
興奮気味に聞いたマリナにトロノスは言った。
「現実はそんなに甘くは無い。セサルニウスの書はただの日記だ。」
マリナは驚愕した。
「うそ…でしょ……」
「でもおれは見たことない。クラウンから聞いただけだ。あいつが内容を隠していたのだとしたら取りに行く価値はあるんじゃないか?」
「そっか!ポジティブシンキング!!」
しかしドロガは次々とトロノスに疑問を呈した。
「でもさ、おれたちコメンサール公国から出たんだけどコメンサールの人間はクラウンたちのこと知らねぇけど、ラテオ王国は、結構知ってるんだ。なんでか分かるか?」
「あぁ、質問攻めだな。お前たち。まぁいい。簡単に言うとコメンサール公国は南の国だからだ。」
ドロガとマリナは首を傾げた。
「アゴーラ大陸は2人の大魔法使いである黒魔術の大魔法使い、ダイレンと白魔術の大魔法使いロザリーによって魔法を管理している。要は魔法主義社会の神様みたいなもんだな。」
ドロガとマリナは静かに話を聞いた。
「北部の国々はダイレンによってクラウン等の記憶を残された。しかし南諸国はロザリーによってクラウン等の記憶は消されたんだ。」
「へぇー」
もう既にショートしそうなドロガをマリナがパタパタと手でうちわのジェスチャーをした。
「そうだな。今日はこの辺りにしておこう。お前らは気に入った。また、明日こい。もっと深い話をしてやろう。一」
「最後に!」
ドロガはトロノスが、席をたとうとした時に話しかけた。
「なぁ、トロノス、クラウン達が魔王を倒して良かったと思うか?」
そう聞いたドロガにトロノスは真剣な顔をした。
「実際に人のためになったのかは分からない。ただ、おれたちは、世界を救うために動き、そして戦った。」
ただならぬ空気にドロガとマリナは息を飲んだ。
「でも実際害があったのだとしたら悪者だな。」
そう笑うトロノスは笑顔の裏に少し寂しい顔があった。
ドロガとマリナは宿に戻って二人で記憶をすり合わせ、それぞれ情報を飲み込むのだった。
誤字があったので改稿しました




