ウィア・ドロロサ(苦難の道)
「先輩におごってもらえるなんて、明日はハリケーンですかね♪」
言ってろ。
「蓬莱軒はあくまでおまけだぞ。あつたさんはこの時期になると毎年行くんだ」
不老不死伝説の蓬莱山は、この熱田のことだという識者もいる。
「ボクたちどういう風に見えるんスかね~」
質問の意図が不明だが、西本願寺の娘が神社参りできるのも、親鸞聖人の現世利益和讃を見れば納得だな。
「お前も神社へ参るんだな」
「いまの時代がおかしいんスよ。明治までは神仏習合って言われてお寺の境内に社があったりしましたからね」
親父もそんなこと言ってたなあ。
「ちょっと、務所に行こうぜ」
「先輩、社務所を変な略し方しないでください!」
「さてと金運お守りは、と」
先立つものは金だ。ところでな、俺は決して金の亡者ではない。金運ってのはオールマイティーなんだ。身体も健康、仕事も上々、恋愛・家庭運も上手くいっているからこそ金が貯まるんだ。言いたいことは分かるな?
「先輩は絶対これですよ!」
厄除けお守りを押しつけられた。ま、いくつ持っててもいいからな。
「あつたさんって広いですよね~。こんな名古屋のど真ん中なのに」
名古屋経済が絶好調の秘密なのかもしれない。信長が桶狭間の出陣前に参ったのは、あまりにも有名だ。
「先輩、何をお願いしたんですか?」
「なんでもいいだろ」
けっこう長いあいだ手を合わせていたようだ。
キョン子は何のお守りを買ったのか教えてはくれなかったが、やっぱ年頃だな。ポケットからピンクのチャームがのぞいている。
「あの、先輩のお父さんも元々は神職関係だったんですよね?」
いつぞやの雑談をよく覚えてるな。
「まあな。何をどう道を踏み外したら、あんな腐れ外道になるのか」
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「あなた。ヒロシをなんとかしてやってください」
お袋、元気かな。迷惑をかけた記憶しかない。
「ヒロシ」
模造刀じゃない。本物の日本刀だった。
「お前を殺して、俺も死ぬ」




