無辜の不処罰
「ちっ」
嫌な奴に出くわしたな。
「おい、ヒロシじゃねーか」
顔が切り傷だらけだ。昼間にウロウロしてよいお方ではないな。
「あれ? まだこの辺に住んでたんすか?」
さっさと切り上げよう。
「そんなことはどうだっていい。俺はてめーの親父の恨みを晴らすまで、安心してくたばれねーんだわ」
「いまから死ぬ奴が、いらん心配しなくていいっすよ」
「元気いいじゃねーか、小僧!」
大ぶりすぎる。だが、くらったらただじゃすまない。
ブロック塀が、派手に壊れた。
「相変わらず、逃げ足だけは速いな」
逃げてねーよ。
「先輩、ダメです!」
なんてタイミングの悪い。
ん? 率川の動きが止まったぞ。
あれ、なんだなんだ。足早に去って行きやがった。
「お前、あぶねーだろ」
「それはこっちの台詞です!」
そんな顔するなって。
「ほら、血が出てるじゃないですか!」
かわしたつもりが、かすってたかな。
キョン子に押され、応急処置を受ける。
「ありがとな」
薬箱は常備しておくに限る。
「血の気多すぎですよ! 先輩はゼッタイ瀉血してもらったほうがいいっスね」
現代医学で大否定されてる治療法を、よく知ってるな。
「親父の縄張りだったから、ああいうのはまだいるんだよ」
このあいだ見た親父は、蜃気楼だったのだろうか。
「お父さん、阿修羅のようなお方だったみたいですね」
確かに、六本腕が生えてるんじゃないかってくらい、手が早かった。
「あいつの考えることはよく分からん」
「こらっ、お父さんをあいつ呼ばわりしたらいけません!」
こんなキャラだったっけ?
「でも、さっきの人も非道いですよね。お父さんに何をされたか知りませんが、先輩は関係ないのに」
親の罪を子が背負わなきゃならないんだったら、いよいよこの世の終わりだな。
「ま、理屈で考えりゃそうなんだが、感情的にはなかなかな」
率川にしてみりゃ、それでムショ暮らしになろうが屁でもないだろう。
「ところでさ。率川のやつ、なんでお前を見たら、鳩豆みたいな顔になってたんだろうな」
「いや、ボクはあんな人、は・は・初めて見ましたよ!」
なんだ、そのひょっとこ顔は。
しかるに汝等は子なんぞ父の惡を負はざるやと言ふ夫子は律法と公義を行ひわが凡ての法度を守りてこれを行ひたれば必ず生くべし
罪を犯せる靈魂は死ぬべし子は父の惡を負わず父は子の惡を負はざるなり義人の義はその人に歸し惡人の惡はその人に歸すべし
然ど惡人もしその凡て行ひしところの惡を離れわが諸《すべて》の法度を守り律法と公義を行ひなばかならず生きん死なざるべし
その爲せし義き事のために彼は生くべし
主ヱホバ言給ふ我爭で惡人の死を好まんや寧彼がその道を離れて生きんことを好まざらんや




