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19/21

⑱うれしい帰宅者

 もう夕方。


 珍しく、カワセさんの前で、タクシーが止まった。

 そのタクシーから降りてきたのはパパだった。


 パパ、お帰りなさい。

 でも、いつもは電車で帰ってくるのに、どうして今日はタクシーなの?

 と思ったら……。


 あれ……?

 パパのあとに、タクシーから降りてくる人影が……。


 そうだったのね。

 パパもなかなかやるじゃないの。


 ミカちゃんとショウタ君の驚く顔を見られるのが、今から楽しみ~。



 ♢  ♢  ♢  ♢  ♢  ♢



 子供部屋に入ってきたパパ。

 ずぶ濡れで泥だらけのミカちゃんとショウタ君を見て、 驚いたどころではない。


「ミカもショウタ も、一体どうしたんだい?」


 ミカちゃんはパパをがっかりさせると思って、下を向いてしまった。


 あんなに頑張ったのに、かわいそう。


 すると、突然ショウタ君がミカちゃんの手を握った。

 ミカちゃんを見上げたショウタ君の顔は、怒られるときは一緒だよと言ってるみたい。


 ショウタ君、急にいい子になりすぎよ。

 だって、わたし、涙が出そうなんだもん。


 そのときだった。

 パパの後ろから入ってきた女性に気づいたミカちゃんが、目を丸くしている。


「あ、おばあちゃん、ママ……」


 そう。

 さっき、タクシーから降りてきたのは、おばあちゃんとママだった。


 まだ、ミカちゃんは驚いている。


 パパがミカちゃんに、笑顔で説明した。


「きっと、ミカとショウタが心配してると思ったから、病院の先生に頼んで、今日1日だけ退院させてもらったんだよ」


 さすがパパだ。だから大好きなのよね。


 でも、しっかり者のママは、汚れたシーツを見て驚いている。


「シーツも泥だらけじゃない」


 ミカちゃんは、


「ごめんなさい」 


 と素直に謝った。


 パパやママやおばあちゃんに心配をかけないように、一生けんめいガンバってきたのに……。

 すごく、かわいそう。


 一方、床に正座したおばあちゃんが、ミカちゃんの手を優しく握った。


「ミカ、ありがとう」


「え……?」


 ミカちゃんは驚いた。


「だっておばあちゃん、シーツあんなに汚しちゃったのよ」


 すると、おばあちゃんが微笑んだ。


「シーツはまた洗えばいいのよ。大体ママだってミカの年頃は、洗濯物を入れなきゃとさえ思いつかなかったはずよ。ね、そうでしょ、ママ……?」


 ママが恥ずかしそうに、


「ほんと、そうねぇ。ミカ、ごめんね」


 と苦笑した。


 うれしいミカちゃんは泣きそうになった。

 おばあちゃんはミカちゃんの手を握って、


「ミカ、あなたはわたしの自慢の孫よ」


 と、いつもの優しい笑顔で言ってくれた。


 ミカちゃんはついに泣き出して、


「おばあちゃん」


 と抱きついた。


「ミカ……」


  おばあちゃんもミカちゃんを抱きしめ、嬉しそうに涙ぐむ。


  一度も弱音を吐いたことがないミカちゃんが、今は素直に泣いている。

 おばあちゃんはそれが嬉しかったのだろう。

 だって、ミカちゃんは泣きたいのにずっと我慢してきたのだから。

 それを一番心配していたのが、おばあちゃんだから。


 すると、なにもわからない ショウタ君が、


「ぼくも~」


 と、負けずにおばあちゃんに抱きついた。


 おばあちゃんは、自慢の孫2人をしっかりと抱きしめた。



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