⑲「オバサン、ずっとずっと大好きよ」
抱き合っている、おばあちゃんとミカちゃんとショウタ君を見て、ついにパパも泣きだしてしまった。
「オーオー……」
と大声で。
「パパったら……」
と言いながら、ママも涙ぐんでいる。
そうよ。
パパ、 大人だって泣きたいときは泣いていいのよ。
だって、人間だもん。
大人になるって難しいなんて、考え込むことないんだわ。
わたしだって、オバサンなんて呼ばれているけど、子供のままよ。
大人のふりをするのが、少し上手くなっただけ。
なにも変わってないわ。
ううん。
そう、簡単に変われないし、無理に変わる必要なんてないのよ。
わたしはわたし。
それでいいの。
家族を思う気持ちさえあれば、その家族が自然と強くしてくれるわ。
だって、家族が世界の中心なんだもん。
そのことを、このカワセさん家の家族と、あの子雲が教えてくれた。
みんな、ありがとう。
きっと、パパだって、そう思っているはず。
本当は涙もろいのに、子供たちに心配かけないようにって、一生けんめい、ガマンしてきたパパ。
心配だったでしょ。
つらかったでしょ。
でも、泣いたっていいのよ。
パパがどんなに泣いたって、この家族は壊れたりしない。
だって、こんなに優しいパパの家族なんだもん。
壊れるなんてありえないわ。
そこで、ショウタ君が嬉しそうに話しはじめた。
「おばあちゃん、あのね、子雲のチビが来たんだよ。そしてね、オバサンになったんだよ」
ミカちゃんも負けじと話す。
「本当なのよ。でも、全然似てないの。白タヌキみたいなの。あれじゃ、オバサンがかわいそうよ」
突然、パパが、
「ミカ、今なんて言ったんだい?」
と驚いている。
「パパ、なに?」
ミカちゃんは、パパがなにを言いたいのか、全くわかっていないのね。
それほど自然に、わたしの名前が出たって感じなの。
パパはなぜかまた目に涙を浮かべて、
「ううん、なんでもない」
と微笑んだ。
「そうかぁ、子雲のチビがオバサンになったのかぁ。パパも見たかったなぁ」
ミカちゃんが……ミカちゃんが……わたしのことを話してくれた。
今まで、パパやママやおばあちゃんを心配させないために、わたしのことは言わないって決めていたミカちゃん。
でも、本当は一番わたしにやさしくしてくれたっけ。
わたしが家に入っていくと、いつも、
「お帰り」
と言って、キャットフードを出してくれたミカちゃん。
わたしが病気になって入院したときも、一番心配してくれたミカちゃん。
あ~ン、もうダメ。
涙で目がかすんで、ミカちゃんがよく見えないわ。
もうすぐ、お別れだっていうのに……。
でも、泣けるって幸せなことなのよね。
今まで意地っ張りだったわたしが、このカワセさん家の家族と出会えたから泣けるんだもん。
よし。
思いっきり泣いちゃう。
『エーン 、エーン……』
すると、パパが、
「みんなで、オバサンにさよならを言おう」
と言ってくれた。
それから、パパとママとおばあちゃんとミカちゃんとショウタ君は、庭に出て、わたしの墓の前に並んだ。
そして、手を合わせて、わたしにお祈りをしてくれた。
パパは、ワーと声を上げて泣いている。
ママもおばあちゃんもミカちゃんも、泣いてくれている。
結局、まだわたしの死を完全には理解していないショウタ君も、みんなが泣いているので、悲しくなって泣いてくれた。
そうか。
子どもって、こうやって少しずついろんなことをわかっていくんだ。
でも、パパ、ショウタ君なら大丈夫よ。
だって、こんな優しい家族に見守られているんだもん。
きっと優しくて強い大人になるわ。
わたしが保証する。
今から楽しみね。
あ……。
お祈りをしているミカちゃんの心の声が聞こえてきた。
「オバサン、オバサンがいなくても平気なんて言ってごめんなさい。本当は大好きよ。ずっとずっと大好きよ」
うん。わかってるって。
だから、お別れできるの。




