表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/21

⑮チビを助ける方法は……?

 チビのホームシックに気づいたばかりなのに、悪いことって、続くものなのね。


 カワセさんのすぐ近くに、すごい音のカミナリが落ちた。


 “ドドドドド”


 そして、雨足も強くなった。


 “ザーザー”


 ミカちゃんは窓を開けて空を見上げた。


 空では母雲がハイイロをとおりこし、今は黒くなって、カミナリと雨を降らせている。

 

 まるで、母雲が泣いているよう。


「あ、そうだ」


 ミカちゃんは、なにか気づいたみたい。


「おばあちゃんもわたしたちのことを心配していた。病気してないかな? 仲良くしているかなって。だから母雲もきっと、子雲のことが心配で心配でたまらないんだわ」


 そのとき、あ……。


 子雲がフラフラしながら、窓から外に出て行こうとしている。


 驚いたショウタ君が、


「チビ、どこに行くの?」


 と心配そう。


 ミカちゃんも、


「病気なんだからダメよ」


 と、とめようとした。


 一方、子雲には聞こえていないみたい。

 つらそうに、ハアハアと荒い息をきがら、一生けんめい、空に上がろうとしている。


 でも、力つきて、床に落ちてしまった。


 そうか。

 空から下りてくるのは簡単でも、上るのはタイヘンなんだ。


 それでも、子雲は何度も空に上ろうとして、そのたびに力つきてしまった。

 やはり、子雲の力では無理なのね。


 ついに動けなくなった子雲は、床に倒れこんだまま、苦しそうに息をしている。


 そんな子雲を見ていたミカちゃんが、はっと気づいた。


「そうか。チビは母雲に会いたいんだ」


 驚いたショウタ君が、


「どうして?」


 と訊いた。


「きっと寂しいのよ。だから、チビを母雲のところに返してあげなきゃ」


 ショウタ君はなぜか怒っているみたい。


「イヤだ。チビはぼくとずっと一緒にいるんだ!」


 ショウタ君、気持ちはわかるけど……。


 そこで、ミカちゃんはショウタ君を優しくさとす。


「ショウタだって、ママやおばあちゃんに会いたいんでしょ?」


 ショウタ君は口をとがらせたまま、黙ってミカちゃんをにらんでいる。

 瞳に涙をためて。


 きっと、ショウタ君にとっては、それはそれ、これはこれなのね。


 本当はショウタ君だってわかっているはず。

 子雲を空に帰してやるのが一番いいんだって。


 でも、どうしても言えないのよね。

 口が動かないっていうのかな。

 だって、ショウタ君はまだ5歳だもん。


 ミカちゃんは、おばあちゃんやママがしていたように、床に座って、優しい笑顔でショウタ君を見つめた。


 そして、


「 空に帰ったって、チビはショウタとずっと一緒よ。だって、オバサンなんだから。そうでしょう?」


 と教えた。


 ショウタ君はまた泣きだしそうになった。

 でも、今度は必死でガマンしているって感じ。

 口をとがらせて、ミカちゃんをにらむことによって、涙を止めたいのだろう。


 ミカちゃんは、

「ね、ショウタ、チビを母雲のところに帰したやろう」


 と優しく言った。


 相変わらず、ショウタ君は口をとがらせ、ミカちゃんをにらんだまま、それでもやっとうなずいた。


「でも、どうやってチビを空に帰すの?」


 ショウタ君のささやかな抵抗かもしれない。


「チビのママに教えられたらいいんだけど。チビはうちにいます。病気ですって。そうしたら、きっと母雲が迎えにきてくれるわ」


「じゃぁ、チビのママに教えようよ」


 ショウタ君の変わり身の速さは天下一品。

 もうチビを助けることしか、頭にないみたい。

 だから憎めないのよねぇ。


「空は遠いのよ。母雲からは、わたしたちなんてアリぐらいにしか見えないし、声だって聞こえないよ。気づくはずないわ。どこか広いところで叫べば、気づいてくれるかもしれないけど……」


「じゃぁ、公園に行けばいいよ」


「でも……」


 ミカちゃんは迷っているみたい。

 パパから、外に出ちゃダメって言われたから。


「パパから叱られるわ。がっかりさせたくないの」


「じゃ、ぼくひとりで行く」


 ショウタ君は、子供部屋から走って出ていった。


 ミカちゃんは、まだなにか考え込んでいる。


 ミカちゃんとわたしが玄関にいったのは、あれから数分後。

 ショウタ君はレインコートを着ているところだった。


「ショウタ、待ちなさいよ」


「だって、お姉ちゃんは行かないんでしょ。だからぼくが行く。ぼくがチビを助けるんだ」


 そう叫ぶと、ショウタ君は玄関を出ていった。


「あ、ショウタ……」


 やっぱり、ミカちゃんは迷っているみたい。

 自分たちだけでもちゃんと留守番ができるというところを見せて、パパを安心させたいから。

 だって、パパを安心させることは、おばあちゃんやママを安心させることになるから。 


 でも、ショウタ君が……。


 ミカちゃんはついに決心したのだろう。

 ショウタ君をこのまま放っておけないからって。


「パパ、ごめんなさい」


 そう呟いたミカちゃんは、慌ててレインコートを着て、玄関のドアを開けた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ