⑬パパからの電話
前回までは、子供の話だけに、小学生の高学年に難しい漢字にルビをふっていましたが(あくまでも、つもりです)、選択が難し過ぎて、重労働でした。
なので、今回からやめることにしました。
悪しからず。
必要なら戻しますが……。
あ、とミカちゃんが気づいた。
「あの音は……?」
リビングから聞こえてきたのは、電話の呼び出し音。
プルルル……。
「あ、きっと、パパだ」
とミカちゃん。
「ぼくが出るぅ」
とショウタ君。
2人は走って、子供部屋を出ていった。
そのとき、ミカちゃんとショウタ君が取りあいしていたアルバムが床に落ちて、あるページで開いた。
そのページには、1枚の大きな写真が貼ってある。
その写真は……。
それより、あれ……?
『チビ、まだいたの? ミカちゃんもショウタ君もリビングに行ったわよ』
無反応。
どうしちゃったのかしら?
子雲はその写真をじっと見つめたまま。
『わたしもリビングに行くけど、いいの?』
やっぱり、気づいていないみたい。
本当に、どうしたのかな?
わたしがひとりで、ていうか、 一匹でリビングに行くと、ミカちゃんが受話器に向って話していた。
「もしもし、パパ……?」
すると受話器から、
「ミカ、カミナリが落ちたみたいだけど大丈夫かい?」
とパパの小さな声。
「停電になったのよ。でも、もうなおったから大丈夫」
ミカちゃんがそう答えると、 ショウタ君がガマンできないって感じで、
「ぼくもぉぼくもぉ」
と、ミカちゃんから受話器をうばい取ろうとする。
「ちょっと待って……」
ミカちゃんの言うことも聞かないで、ショウタ君はついに、受話器を取りあげてしまった。
そして、うれしそうに、
「パパ、ぼくだよ」
と話しはじめた。
「ショウタ、お姉ちゃんの言うことをちゃんときいて、おりこうにしてる?」
とパパの声。
「うん。おりこうにしているよ。だから、お土産忘れないでね」
ショウタ君の話を聞いたミカちゃんが、
「どこがよ……」
と、怒ったように独り言。
それから、ミカちゃんとショウタ君は、代わりばんこに、パパと楽しそうに話した。
そのときだった。
あ、チビ、いつの間に入ってきたの?
ごめんなさい。
全然、気がつかなかったわ。
どうしたの?
気づかなかったから怒ってるの?
だって、しょうがないじゃない。
なんとか言いなさいよ。
やっぱり、子雲はなんかヘン。
電話でパパと楽しそうに話してるミカちゃんとショウタ君を、寂しそうに見つめているだけ。
なんか、ちょっと心配。
でも、ミカちゃんとショウタ 君は、そんな子雲に気づいていないみたい。
電話を切ると、さっさと子供部屋に戻っていった。
子雲は、ひとり取りのこされたって感じ。
ちょっと、かわいそう。
わたしが、
『さ、一緒に子供部屋にもどるわよ』
と誘ったら、イヤイヤついてきた。
わたしたちが子供部屋に戻ると、ミカちゃんが床の上で開いたままになっているアルバを見ていた。
「あ、この写真は……」
と、懐かしそうにつぶやく。
以前、ショウタ君が生まれる前に、病室で撮った家族写真だと聞いたことがある。
少し若い、お腹の大きなママとパパとおばあちゃん、それに小さなミカちゃんが写っている。
一方、ショウタ君はその写真を見ながら、フシギそうに首を傾げた。
そして、
「ぼくは~……?」
と訊いた。
すると、ミカちゃんが、
「ショウタはここ……」
と、写真に写っているママのお腹を指さした。
「パパが生まれてくるショウタのために、どうしても写真を撮っておきたいって言ったんだって。もうすぐ生まれそうだから、それどころじゃないのに、タイヘンだったってママが言ってた」
「ぼくがママのお腹の中にぃ……?」
ショウタ君は首をひねって 、やっぱりフシギそう。
「でもね、ショウタが生まれたあと、ママが言ったのよ。やっぱりこの写真を撮っててよかったって」
ショウタ君にはわけがわからないみたい。
生まれる前のことなんだから、当然よね。
それでも、なんとなくうれしそう。
それからしばらくの間、ミカちゃんとショウタ君は、アルバムの写真に夢中になった。
アルバムのページを1枚1枚めくっては、写真を見て、思い出話に花を咲かせた。
ミカちゃんは8歳なりに、ショウタ君は5歳なりに、やっぱり思い出って大切なものなのね。
でも、ミカちゃんとショウタ君は、すっかり子雲のことを忘れていたみたい。
だから、気づいていないのだろう。
子雲の様子がおかしいことに……。
子雲は最初、ため息をついたり、ボーっと窓から外を見上げたりしていた。
と思っていたら、そのうち小さな雨を降らせ、小さな雪を降らせ、今は熱があるように赤くなって、苦しそうに息をしている。
どうしよう。
ね、ミカちゃん、ショウタ君、チビがヘンなの。
気づいて!




