⑫「あ、お姉ちゃん、飛んでるぅぅぅ」
あ……。
大きな白ブタにヘンシンした子雲を、ミカちゃんがなつかしそうに見つめている。
ミカちゃん、もしかして……。
ついに、ミカちゃんは、
「おばあちゃ~ん」
と、泣き笑い顔で、子雲に抱きついた。
そっか……。
入院しているおばあちゃんに、一番会いたかったのは、 ミカちゃんだったんだ。
不安で不安でたまらなくて、それでも泣きたい気持ちを、必死でガマンしていたんだ。
パパやママやおばあちゃんに心配をかけないために。
ミカちゃん、泣けない方がつらいよね。
わかった。
今は、思いっきりあまえて泣きなさい。
だって、うれしいんでしょ。
おばあちゃんに会えたから。
ま、白ブタのおばあちゃんだけどね。
そこはガマンしてさ。
チビ、あんたもにくいことするじゃないの。
ま、たまにだけどね。
ところが、子雲はミカちゃんの腕からぬけだしてしまった。
もう……。
せっかく、ほめてやったのに、ダメじゃないの。
ミカちゃんに思いっきり泣かせてやりたかったのに。
子雲はミカちゃんの足元に移動した。
チビ、あなた、一体なにをするつもりなの?
ミカちゃんも驚いて、足元を見おろした。
そこでは、体を真っ赤にした子雲が、思いっきり力んでいる。
う~、う~て、うなりながら。
え、ウソ?
まさか、ミカちゃんを乗せて、飛ぼうとしているの?
そんな……。
でも、応援しちゃう。
チビ、がんばれー。
あ、ミカちゃんの体が浮きそう。
そこで、ショウタ君がさけんだ。
「あ、お姉ちゃん、飛んでるぅぅぅ」
それは、ちょっとオオゲサ。
子雲に乗ったミカちゃんの体が、1メートルほど浮いているたけ。
でも、そんな経験をした人なんていないわよね。
やっぱり、これはすごいことよ。
ショウタ君、オオゲサなんて言って、ごめんなさいね。
ところが……。
え!? とミカちゃんが、こわごわ見おろした。
宙に浮いているミカちゃんの足元には、子雲がいた。
フラフラしながらも、必死でミカちゃんの体を持ちあげている。
でも、子雲は真っ赤になりすぎて、今にもバクハツしてしまいそう。
びっくりしたミカちゃんは、子雲に話しかけた。
「チビ、もうわかったから……だからムリしないで……おねがい」
ミカちゃんは、子雲がバクハツしてしまうのではないかと、心配でたまらないのね。
ミカちゃんを乗せたまま、子雲はゆっくり床におりた。
でも、すっかり疲れきって、今度は青ざめている。
子雲から降りたミカちゃんが、
「ありがとう。おばあちゃん」
とキスをした。
すると、子雲が照れてピンク色になった。
キュン、て感じ。
そこで、黙っていられないのがショウタ君。
「お姉ちゃんだけずるいよぉ。ぼくも飛ぶぅぅぅ」
とダダをこねはじめた。
あきれたミカちゃんが、
「チビは疲れてるの」
と説明したけど、素直にきくショウタ君ではない。
「ぼくのチビだよ」
だって。
「あ、そう……じゃ、チビ、いいもの見せてあげるね」
とミカちゃんは、子雲にウィンクすると、アルバムのあるページを開いた。
そのページには、裸の赤ちゃんの写真があった。
「チビ、これはね、ショウタの赤ちゃんのときの写真よ。おかしいでしょう」
ミカちゃんがそう言うと、おこったショウタ君が、
「ちがうもん」
と、あわてて写真を手でかくそうとした。
ミカちゃんが、
「本当じゃないの」
と言うと、ショウタ君も負けずに、
「じゃ、お姉ちゃんのも……」
と、ミカちゃんからアルバムを取り上げようとする。
ミカちゃんはアルバムを押さえている。
「やめてよ」
「いやだ。チビにお姉ちゃんの写真も見せるぅぅぅ」
だって。
しょうがないわねぇ。
あ……。
でも、いつもの明るいミカちゃんにもどってる。
どうして……?
あまり考えるのはやめよう。
だって、わたしの大好きな元気なミカちゃんに戻ったんだから、それだけでサイコウよ。
一方、ミカちゃんとショウタ 君は、ついにケンカをはじめた。
そっか。
兄弟喧嘩って、こうやってはじまるのね。
たいした理由もないのに、なんかフシギ。
そのうち、2人ともどんどん本気になって、大ゲンカになるんだ。
でも、どうしてだろう?
気づいたときは、いつもの2人にもどっているのよね。
今日はどうやって仲直りするか、見られるチャンス。
よ~し、 見逃さないぞぉ。
ところが……。
あれ、どうしたの?
ミカちゃんとショウタ君の兄弟喧嘩を見ている子雲が寂しそう。
どうなってるの?
一方、ミカちゃんとショウタ君は、アルバムの取りあいに夢中で、子雲の様子に気づいていないみたい。
ミカちゃん、ショウタ君、子雲がヘンなの。
気づいて!




