⑪ミカの本心
ついに、ショウタ君が死の意味に気づきはじめた。
だから、子雲がわたしの生まれ変わりだと、意地でも思いたいのだろう。
パパもママもおばあちゃんもいないのに、どうしたらいいの……?
一方、ミカちゃんは目に涙をため、歯をくいしばって、ショウタ君を睨んでいる。
ミカちゃん、一体どうしちゃったの?
何がそんなに悲しいの?
どうして、そんなに怒っているの?
あ……。
また、子雲がアルバムの写真を見ながら、なにかに変身しようとしているみたい。
もう!
あんたね、こんなときにミカちゃんを怒らせないでよね。
本当に、いたずらっ子でまいっちゃうわ。
結局、変身しちゃった。
でも、なんに変身したの?
また、ママ?
でも、さっきとはちがうような……。
白くて、お腹が太鼓みたい。
あ~、白タヌキね。
そうでしょ。
え、ちがうの。
じゃ、一体なによ?
子雲はまたアルバムの写真を指さした。
え、写真……?
写真に写っているのは、ミカちゃんとショウタ君とパパとママとおばあちゃん。
それから……。
えぇぇぇぇぇ!
ウソ。
もしかして、わ・た・し……。
シツレイしちゃうわ。
わたしは、れっきとしたメスネコよ。
どうしてタヌキなのよ。
なのに、子雲ったら得意そうに、お腹の太鼓をたたきながら踊りはじめた。
人の話聞きなさいよ!
子雲に気づいたショウタ君が、腹を抱えて笑いだした。
さっきまで泣いていたくせに。
子どもって変わり身が早いわよねぇ。
ま、わたしとしてはホッとしけど。
だって、今のショウタ君にわたしの死の意味をわかるのは、ちょっと早すぎるもの。
素直なショウタ君には、もっとゆっくり大人になってほしいから。
今度は、子雲を睨むミカちゃん。
ま、当然よね。
きっと、この子雲は男の子なんだわ 。
だって、デリカシーがないもの。
わたしが怒ろうとしたら、先にミカちゃんが、
「バカー」
と叫んでくれた。
ミカちゃん、ありがとう。
おどろいたショウタ君と子雲が、振りむいた。
目に涙をためて、ショウタ君と子雲をにらんでいるミカちゃん。
「おばあちゃんの入院が決まったとき、パパもママもおばあちゃんも、わたしたちのことを心配していたんだから。オバサンが死んだばかりだから、わたしたちが不安になると思って。だから、わたしたちはオバサンのことを言っちゃいけないの。平気なふりをしなきゃいけないの。だって、心配しすぎて、おばあちゃんまで死んじゃったらどうするのよ。ショウタもチビもバカー」
ミカちゃんは歯をくいしばって、必死で泣くのをガマンしてるって感じ。
ミカちゃん、そうだったのね。
子供たちを心配しているやさしいパパとママとおばあちゃん。
そんなパパとママとおばあちゃんを、安心させようと一生けんめいガンバッている、やはりやさしいミカちゃん。
本当にカワセさん家の家族は、みんなやさしいの。
だから、大好きなんだけど。
でも、やさしすぎるから苦しいなんて、そんなの、つらすぎるわ。
神様はひどい。ひどすぎる。
あんなやさしいおばあちゃんを入院させるなんて、あんまりよ。
一方、ショウタ 君も不安になったみたい。
いつも元気で明るいミカちゃんが、悲しそうだから。
「お姉ちゃん、ごめんなさい」
ショウタ君はミカちゃんに抱きついて、泣きはじめた。
かわいそうに。
でも、わたしにはなにもしてやれないよね。
ごめんね。
ミカちゃん、ショウタ君。
なのに、いたずらっ子の子雲ったら、また、なにかに変身しているみたい。
お腹いっぱい息を吸いこんで、どんどん大きくなっていく。
ついに、おとなの人間ぐらいになった。
でも、結局は白ブタなのよねぇ。
あんたね、こんなときにあそんでる場合じゃないでしょ。
まったく……。
ところが、あ……。
太った白ブタが、 ミカちゃんをやさしく抱きしめた。
ミカちゃんも驚いて、子雲を見た。
そして、小さな声で、
「おばあちゃん……?」
だって……。
おばあちゃん~?
ミカちゃん、どうしちゃったのよ?
子雲よ。
白ブタよ。
どう見たって、おばあちゃんには見えないでしょ。
あなたのおばあちゃんは、あんなにステキなのに……。
ミカちゃん、しっかりして。




