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第5章 ① 仲間とナマズと?

第5章の1 仲間とナマズと?


無事にウカノミタマノカミの課題をクリアし、一つ目の証を手に入れた訳だが、自分には

まず問い詰めなきゃいけない相手がいた。


夏休みも終わり、まだ暑いのに自転車を漕いでいそいそと学校へと向かう。朝だというのに未だにジトっとした重い空気をかき分け自転車を漕ぐと、自分のYシャツの中は汗が流れていくのがよくわかる。


学校に着き、自転車置き場に自転車を置く。すると、後ろから元気百倍の男が声をかけてくる。


「おお!カケル!元気してたか?」


あたかも夏休みの間に会えず久しぶりの登校で再開する友人のような挨拶をしてくる。


彼とはつい数日前まで、一緒に米作りに勤しみ、同じ苦しみと感動を分け合った親友だ。

じゃあ何故、彼はそんな他所他所しい態度なのか?


そう。彼は絶賛記憶修正済みなのだ。

それゆえに、彼はここ一ヶ月、正確にはツトメに関すること、米作りのことに関しては全く記憶が消されているからだ。


その代わり、夏休み中は家業の農業や野球部の活動に勤しんでいたことになっている。

実際、野球部の活動は参加しつつ、こちらの手伝いもしてくれていたようだが、家業の農業の方の記憶は全くの捏造だ。精神世界での農作業と入れ替える形で、肉体的疲労と記憶の矛盾を解消するためだそうだ。

自分の脳内の記憶と、肉体の疲労の違和感がありすぎると、時たま記憶修正に気づいてしまう者がいるため。とのことらしい。


「ああ、久しぶり。ツヨシは元気だったか?」


とこちらも久しぶり会った友人との会話を装う。


「ああ、それがな。やたらと筋肉がついてな、バッティングでも飛距離が伸びて絶好調だな。そして、なにより!驚くべきことに!夏休みの宿題が終わってるんだ!奇跡だろ!」


カバンから夏休みの課題を取り出して見せるツヨシの嬉しそうな顔。


ああ、それはヒカルが手伝ってくれて、ほんとんどヒカルの解答を丸写しした結果なんだ。よってお前の実力じゃないんだ。


とはその顔を見れば言える訳ない。


「そ、それは奇跡だな!まさかお前が夏休み中に夏休みの宿題を終わらせるなんて、今日は雪でも降るな!」


取り繕った笑みで誤魔化すが、内心は本当に申し訳ない気持ちになった。その贖罪と言えるかは難しいがツヨシが喜びそうなものを自分のカバンから取り出す。


「ホントにあったシリーズ!!!!怪綺談!?理科室は!?人間模型が動くとよ!!」


しかし、タイトルの!の多さとサブタイトルが気になる。サブタイトルの最後のとよ!!は誰に宛ててるんだろうか?それとも、博多弁のとよ。なのだろうか。


いずれにしても中身も理解不能だが、タイトルもそれに違わぬ理解不能さだ。名は体を表すと言うがまさにその通りの雑誌だろう。以上私見。


この珍妙名(迷)雑誌は何を隠そう、マルが勝手に自分のスマホを使い、購入して行き場に困っていた代物だが、ツヨシなら喜んでくれるだろうという希望的観測が多分の割合を占める。


マル曰く、「なかなか、面白いな。この編集者はおそらくMI6、CIAのインフォーマーだな。」


と言っていたので、その界隈の人の中では読み応えはあるらしい。


何せこの中身は暗号が隠されてるらしいが、鍵がわからなければ、ただの三流の珍妙奇天烈雑誌に過ぎない。


一応面白い記事はないかと、自分はペラペラとめくり、学校怪綺談のページを見てツヨシにプレゼントすることに相応しい雑誌ではあることは確認済みだ。


「あと、これあげるわ!なんか間違えて買っちゃったんだけど、すぐに捨てるのもあれだし。

ツヨシこういうの好きだろ?」


おそらく紙で印刷する方が赤字だろうに。と思ってしまうほどの雑誌だが、マニアにはうける可能性をかけての進呈だ。気に入ってくれると助かるのだが…。


「うぉおお!なんだこれは!学校怪談ものか!ちょうど新しい情報が欲しいところだったんだ!本当にいいのか?」


一抹の不安をかき消すには十分過ぎる、有り余る声のデカさに、教師に勘づかれるとまずいと、声のトーンを落とすように落ち着かせる。


「ああ、大したもんじゃないけどな。あと!不要物の持ち込みは禁止だから、教師に見つからないように気をつけろよ。」


あくまでも身辺を警戒するように注意する。


「おう。ありがとな。」


注意で少し小声になったツヨシだが、存在感が大き過ぎたのか、それとも校門の前での挨拶に飽きたのか、担任のジャージの黒川が近づいてくる。それを察知したツヨシは、バックに三流雑誌を忍び込ませる。


「お!黒田に、中森コンビか!朝から仲いいな!ホームルーム遅れるなよ!特に!黒田!お前には特別課題出したからな。朝には提出な!ハッハッハ!」


黒川は声高に言って、職員用の玄関へと消えていった。特に気づかれた様子もなく、ホッと一安心していると、ツヨシが頭を抱えている。


「おい、どうした?何からあったか?」

「あちゃー、いや、忘れてた。」

「え?忘れてたって特別課題のこと?」

「そう。それ!そもそも特別課題ってなんのことだっけ?」


と言うから、びっくりだ。いつか教えてあげた記憶があるのは自分だけだろうか。スマホのリマインド機能を教えても、スマホを忘れるタイプの人間には文明人の習慣は役に立ちそうもないし。思わず、はぁ。と溜息が漏れる。


「えーっと、確か昔の時間の数え方とかだろ。丑三つ時が何時だ?とかじゃなかったか?」


「あ!そっか!それだわ!で、何時だっけ?」


彼は本気の真顔で聞いてくる。


「いや、もう、スマホで調べれば。すぐわかるだろ。」


呆れた自分はツヨシを放置して、校舎表の下駄箱へと向かう。


「おいおい、冷たいな。親友だろ。」


右腕を回し、肩を組んでくるが、それだけで熱気が押し寄せるように暑い。


「暑いっての、それに、親友って言えば、なんでもやってやるほど、お人好しじゃないの。」


そう言ってツヨシの腕をスルリと抜ける。


「おい、まじかよぉ。」


と嘆くツヨシを他所に下駄箱に靴を入れ、階段を駆け上り、久しぶりの教室へとなだれ込む。

すると既に、多くの生徒は教室に集まっていた。

しばらくすると、担任の黒川がドヤドヤとやって来たかと思えば、後はもういつも通りだ。


HRやって、始業式。そして教室に戻り、

夏休みの課題を集めて、後は解散!始業式の日なんてこんなもんだ。

後は各々部活に行く者、家に帰る者。職員室で、特別課題をやってこなかった事を問い詰められる若干一名の男。などだ。


しかし、自分は普段なら帰宅組の最速レコードを誇る自分なのだが、今日は寄るところがある。

化学研究部だ。


別名最果てのマッドラボ。なんでこんな別名があるのかといえば、まず化学研究部の部室である第二理科室は校舎3階の東側の1番隅っこにある。

一階玄関は西にあり、三階建ての校舎の東側なので、最果て。そしてマッドの意味だが‥自分は訪れて改めてそれを実感することとなった‥



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