第4章 ⑧ ツトメに挑戦?
第4章の8 ツトメに挑戦?
遠くで見守っていたコノハナノサクヤビメに近づいたニニギノミコトは何やら言っている。
どうやら反応を見る限り、サクヤビメ様は寛大なお心でお許しくださったらしい。
許しを得たニニギノミコトは水を得た魚のように得意顔で、田植え機に乗って登場してきた。
「どうだい?昨日のとは違って中古で買ったから古いけど、性能はバッチリだからね!」
ルンルンと鼻歌を歌うほど気分も性能も上々のようだ。
「おお!これは!うちのやつと同じ!」
って言って微妙な空気を作り出したツヨシにも気を留めないくらいには機嫌は良いらしい。
「よーし。君達の、残りの苗をこれに載せて。あとは私がやるから見ておきたまえ!」
一人張り切って行ってしまったニニギノミコトを見送り、自分は地面に寝転ぶ。
ふぅ。人騒がせな神様だ。と思いつつもやっと重労働から解放されて落ち着く。
「なぁ、あんなに、ニニギノミコトに色目使って、コノハナノサクヤビメに怒られたりしないの?」
彼女の首筋からつたう一粒の汗に気を揉んでいた自分は5秒以上の直視は料金が発生しそうだと、自らを戒めた。そして視線の気まずさをどうにかしたいと咄嗟に素朴な疑問をぶつけたのだ。
「え?何?カケル嫉妬してんの?おもしろ!」
「いや、そういうわけじゃないけど、向こうは神様だけど、女同士なんかあるのかと‥」
「バカだなぁ。男は。サクヤビメ様がああしろって言ったんだよ。どうせ、あのお方はそう言うのに弱いからって。なんでもお見通しなんだね。夫婦って。あんなに相手の事を思ってるから、あんなに怒れるし、あんなに心配してるだなぁ。ってなんか、感服って感じだね。」
「ふーん。」
無邪気に田植え機から巫女のヒカルに手を振るニニギノミコトに手を振りかえすヒカル。
「まあ、ホントに愛してるってのはそう言うことなのかもね‥今度お母さんに聞いてみようかな。お父さんの事。」
いつもの明るい表情との違いに拍子抜けした自分だったが、何やら夫婦とら一筋縄ではいかないらしい事は理解できた。
「ちなみに、あんなタイプの男って‥」
「え?いきなり何で?」
「いや、何となくああいうタイプがいいのかと…疑問に思って。」
「いやいや!ない!絶対ない!理想はトム・ホランドだから。」
と即答するヒカル。いやトム・ホランドって誰?ってなった自分は、気になってスマホにこっそりと打ち込み調べる。
って最新の蜘蛛男かい!しかもかなりのイケメン!ヒカルのやつ、人の事言えない相当な面食いだ。
それを見て少し残念な気がしてる自分がいるのもなかなかのモヤモヤだ。
「まあ、これでカケルの助けにはなったでしょ?万事上手く行くように!ってサクヤビメ様からも応援もらったし。これで、あとは無事稲が育って収穫できれば、証ってやつは貰えるんでしょ。」
「まあ。多分。最高のお米って何だ?ってのはあるけど。」
「大丈夫でしょ。みんなで作ったお米なら。ね。」
何か念押しするあたりに、ヒカルの胸三寸があるように思えるが、先ほどまでニニギノミコトを籠絡しようとしていた彼女の姿があまりにも魅力的過ぎて嫉妬した結果の邪推に過ぎないと心を落ち着かせる。
「ああ!って、これっていつできるの?」
「え?苗を成長させる時にニニギ様に聞いたら、最速で一ヶ月位で収穫できるようにする事もできるって言ってたけど、どうかした?」
「ヤバいな‥このままでは夏休みの宿題が終わらない。」
それを言った自分のことが相当なツボに入ったのか、大笑いするヒカル。
「いやぁ、凄いね。心配するするところが違うよ。いいよ、手伝ってあげる。その代わりにちゃんとあの少年も誘うように!どうせ、彼も何もやってないんでしょ。」
疲れて大の字に寝てるツヨシを指さす。
「ああ、ホント助かるわ。絶対ツヨシもやってないからホント助かる。」
寝てるツヨシの手を合掌させて、お礼をさせる。
そんなふざけたことをしてる間に、田植えは無事終わり、夫婦の方も雨降って地固まったようだ。
さっきまでの曇天から、太陽が差し込む眩しい青空へと変わっていた。
そこからは怒涛の夏休みだった。
毎日稲荷神社からニニギノミコトの精神世界に飛んでは、稲の成長度合いに合わせて、作業を行いつつ、合間に夏休みの宿題をこなしていく。
そんな事を繰り返して、夏休みの終わりにはついには収穫、乾燥、脱穀の段階までこぎつけた。
収穫に合わせて、コンバインと乾燥機を購入しようとニニギノミコトが画策したために、一悶着あったが、それは何とか自分達が説得してやめさせた。恐らくだが、コンバインと乾燥機よりもドローンや自動トラクターの方が早くに購入してるのは明らかに、面白そうだから欲しい!って感じで購入してたんだろう。
てか、神様ってどこで現金を手に入れてんだろ。口座あるのかな?なんて
馬鹿な事を考えたことはマルには知られたくない。酷くいじられるのは目に見えている。
そんな苦労の上、自分とマルはウカノミタマノカミのいる宮廷に再び参上することになったのだが、隣にはマル以外にもう1人と1匹が増えていた。
「ウカノミタマノカミ。本日は課題にありました、最高のお米を献上させて頂きに参りました。
どうぞ、お納めください。」
マルが恭しく、頭を下げたまま、お米を献上し、引き下がる。
「ふむ。ではそなたら、これが最高の米であると?その理由は?」
と質問してくるあたり、ウカノミタマノカミはやはり、お米自体が一番重要ではないらしい。
返答を考えていた自分を差し置いて、彼女は答える。
「それは、皆の思いが詰まったお米だからです。皆が、美味しいお米を作りたいって必死に努力して、できたものだからです。だから、最高のお米であることは間違いありません!」
ウカノミタマノカミに動じること無く、応答する彼女は、横にいる自分に笑みを送っていた。
その答えに納得したのか、ウカノミタマノカミは
立ち上がると
「いいでしょう。両名、証を授けます。前に出てきなさい。そして契約の証を前へ。」
と言い、自分は首飾りを、彼女には指輪を前に出す。すると、ウカノミタマノカミの手のひらから、オレンジ色の光が二つ出てきて、それぞれへと入っていった。
「これにて、私の課題は終了です。お疲れ様でした。次の課題の健闘を祈ります。」
そう言って下がるように手で指示する。
それに従い、自分達は宮廷を後にする。
帰り道にいつの間にかISNの勾玉と、神様との契約を交わした彼女に声をかける。
「なぁ、その勾玉と指輪どうやって‥いや聞かないほうがいいか。」
「いや、そこまで言ったらはっきりと聞きなさいよ!そんなに深刻なことじゃないし!」
彼女はこの状況をさも普通かのように振る舞っているが、どうやって神と契約したのか?とか、
あのISNの勾玉は高度な交渉の末、手に入れたものだ、なのに普通に持ってるのはどういうことだ?とか疑問符は尽きない。ただこれだけは言える。
「ありがとう。」
そう言うと、彼女は女神のように笑った。
第4章終わりです!
もちろん女神はあの子だと思います!次章を読んでくれれば分かるはず!
次回新しいモフモフキャラも登場!個人的にはこれをイラストにしたら、ジブリの世界にいるやつにしか見えないのでは…
そんな見た目のキャラです。
そして大人な美人も登場します!まあ…美人と取るか奇人と取るかは人によるか…
とにかくお楽しみに!




