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第16章 ② ここじゃないどこかに

第16章 ② ここじゃないどこかに


「もちろん、300万円ですかね?」


「そんなにぼったくりはしないぞ!それに今時円なんて持ったところで、増えやしない。ドル$だよ、ユーロ€でもいいけど。」


何でチャージが外貨なのに、時間あたりは円でお金を取ろうとする謎。まあ、それはとりあえずおいておく。聞いたところで無駄話が増えるに決まっている。


とりあえず外貨取引に手を出しているマルは円ではダメなようだ。しかし300ドルっていくらくらいかが見当もつかない。


調べてみると、およそ3万円ほどだ。思ったよりリーズナブル?な気もする。このくらいなら何とか手持ちの資金から捻出できる水準だ。


「ならとりあえずドルで。」


「そんならとりあえず、取引は俺が取りまとめてやるから、先にチャージ分だしな。とりあえず円で支払ってから、不足分は後で請求してやる。」


マルに金を搾取される日がこようとは。まるで近所の幼稚園児にカツアゲに遭った様に情け無い。


「じゃあ、とりあえず3万円。あとは少し待ってくれ。」


「あいよ。まあ、残りは金利手数料もつけて10年払いでもいいぞ。うちは法定金利なんて守らないけどな。」


何やら後ろに札束を数えるサングラスの怖いお兄さんが思い浮かぶのは自分だけだろうか。


「それで?いつ会える?」


「明日の夕方以降だな。丁度金曜日だし、週末ならターゲットの子もいるんだろ?」


「たぶんね。そしたらさ、明日の夕方に準備して待ってるから、声かけてくれ。」


「はいよ。んじゃまた明日。」


そう言って、別れたのは昨日のこと。



そして、夕焼けチャイムにドヴォルザークの「新世界」第二楽章が流れ、自分もついでに新世界に誘ってくれるのかと呑気に黒猫を待つが、一向に待てど、暮らせど、新世界への扉は開かず。


つまりすっかり遠き山に日は落ちてしまったわけだ。


あの地平線の向こうに沈んで行った太陽を見送った自分は仕方なしにあの黒猫を捜索しに出かける。


まずは境内周辺だ。社殿も見て見るが、黒猫の存在が確認できない。


ならばと、クグスの森にある、祠の方を探る。


木々が生い茂る以上に草が生い茂るここら辺は、もうちょっと管理が必要だと実感する。


いつもじいちゃんに境内と家周辺の管理をしてもらっているが、流石にここまでは管理が行き届いていないようだ。このままじいちゃんに甘えていてはいけないのだと、己を戒めながら草達をかき分けて進む。


すると、ものの見事に祠を中心に開けた土地が広がる。


この光景はまるで、草木の方が祠を避けていると言った方が似つかわしいだろう。


祠の屋根は銅板葺きではあるが、黒い染料で漆黒に染まっている。


全体の大きさも1㎥ほどだが、木材で作られた本体も漆で塗られた黒と、金の装飾が施され、非常に美しい。まさに芸術作品だ。


雨風を避ける建物を別に建造する必要性を切に感じるほどのその作品は、扉には厳重に南京錠がかけられ、なぜか札による封印もされている。これでは怨霊か何かを封じ込めているかのようだ。


これだけのものがこんなひっそりと置いてある事自体不思議なことではあるが、近くから改めて正視して分かった事実は、これはやはり結構高いだろうということだ。


お金の話ばかりでなんとも切ないが、金色の装飾はメッキではないかと見澄ましてみるが、どうもそうではないらしい。


こんなのを作るお金がうちにあるとは到底思えず、闇の資金源があることを匂わせる証拠だろう。


どうせ祭神と会うのだからここで待てばいい。という、直感的推察(勘)によりここに座して待つ。


すると雑木林から音がすると、暗闇から本当に黒猫が現れる。


「あれ?こんなところでカケルと会うとは珍しいな。家で待ってるとばかり。」


「何が待ってるとばかりだ!約束忘れたとは言わせないぞ!」


黒猫は体を伸ばして体を震わせると、いつもより元気がない。


「ああ、それはすまなかったな。ちょいと野暮用でな。こんな仕事は狐さんに任せたいんだが、向こうさんに頼むには少し気が引ける仕事だったんでね。」


物憂げな表情を浮かべる黒猫は心ここに在らずと言った感じだ。


「まあ、いいけど。で?クグス神とはどうやって会えるの?この祠から?」


「えっと‥何だっけ?」


「いや、だから。クグス神とはどうやって会うのか?って話!」


「ああ、そうだったな。まあここからでもいいか。ぶっちゃけ首飾りがあれば大概のとこらから行けるけどな。」


何でその情報を昨日のうちに言わない?そうすれば、無駄にこんな草をかき分けて来る必要はなかったのに。


「なんだよ。それなら早く‥まあいいや。じゃあ、とりあえず行くか!」


「いいぜ。手を出しな。準備はいいか?」


「いつでもどうぞ。」


自分の返答を合図に、黒猫と共に精神世界へと移動する。


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