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93 愛玩奴隷 調教士のトラブルを覗く


(な、何?)


(あ……実は、つい先ほど……)


 僕は、ティキさんにさっき見た揉め事を伝える。

 どうやら、スオウさんは食事に危険な薬物が混入している事に憤慨している様子だった。


(へぇ、あの男が、ね。……ちょっと、聞いて行きましょうか?)


(……そうデスね)


 ちょっとした出歯亀根性が疼いてしまった僕とティキさんは、通気口の中を戻る事にした。

 いや、だって、もしかしたら古代魔法遺物アーティファクトの情報が分かるかもしれないですし?


 なお、ティキさんは、この狭い通路のT字路で一旦曲がり角で曲がった後、進行方向とは逆に後退りしながら曲がった後、今度前方に進むことで方向転換をしているようだ。


 わざわざ隣の部屋の通気口付近まで進まなくても音は全然聞こえたんだけど、僕は、あの調教士三人組を【鑑定】するために、通気口のすぐそばまで歩みを進める。


 どうやら、彼等は愛玩姫妓(プラネリ・フィア)の育成方法について揉めているらしい。


「どういうつもりです!? こんな依存性の高い、危険な薬を使ってしまっては、僕の可愛い姫妓の蕾(プランティア)達が廃人になってしまいます!! これを使ったメニューは即刻破棄してください!」


 スオウさんがあの精神汚染ケーキを指さしながら声を荒げる。

 見れば、ケーキ以外にもクッキーやゼリー……あのブッフェスタイルの中に並んでいたヤバ目の食品を一式持ってきているようだ。

 どうやら、彼は食品が物騒な事になっていたのを知らなかったらしい。


 糾弾された方の赤髪の男は、そんなスオウさんを嘲るようにドカッと椅子に腰かけ、無駄に長い足を、これ見よがしに組んでいる。

 態度が悪いせいで、服装はスオウさんと同じなのに、妙にチンピラ臭がする男である。


「フン、ここの女共は、どうせ貴族に買われた後は子を産む腹さえあれば良い肉の袋だ。それを何だぁ? 教養だぁ? マナーだぁ? むしろそんなさかしいアタマなんざ付いてない方が良いに決まってるだろうが!」


「貴方は女性を何だと思っているんですか! 愛玩姫妓プラネリ・フィアは立派な次代を産み、育むための母体です! 健康で聡明な母となるべく天塩を込めて育て上げねば、何の意味もありません!」


「フン、それっぽい大義名分を並べ立てているが、貴様は浪費が過ぎてんだよ! 貴様が毎日のように女共に与えているこの果物、これ一個がどんな値段なのか知ってんのか!?」


 ばん!


 赤髪の調教士が指さしたのは、僕たちが唯一食べることが出来た、くそマズいフルーツだ。


 あらら? アレ……高級品だったんだ?

 散々「美味しくない」とか「青臭い」とか「フルーツとしてはヴォェ」とか評価していたけど、高級品って聞くと、たくさん食べておいてよかったな、という思いが頭をよぎってしまう。……意地汚いなー、僕。


「必要な投資です」


 スオウさんがしれっと目をそらして答える。


「採算を考えて女共を育てろ!」


「貴方の方こそ、薄利多売のような真似は考え直していただきたい! 彼女達を性奴隷のような扱いをするから愛玩姫妓(プラネリ・フィア)を娼婦と勘違いする人が増えるんです!」


「貴様がここの第一棟を任せられているのは、貴様のその【祝福】と古代魔法遺物アーティファクトの相性が良かったからに過ぎないんだ! 貴様のやり方だと『楽園』は成り立たない! ここは商売のための施設だ! 利益を生み出さない負債はさっさと処分しろ!」


「まぁ、スオウの言うことも、メディロンの言うことも、どっちも一理あるのぅ」


 ヒートアップする二人をのほほんと見ていた深緑髪の青年が口を開いた。


「確かに、スオウの育てた娘は高値が付くが、育てるまでに時間がかかり採算性は悪いのぅ。メディロンの育てた娘は値段は安いが、壊れやすいのでその手の嗜好のお方等……一定のリピーターがおるのぅ。」


 壊れやすいって……何気に物騒だな。

 赤髪の男を【鑑定】すると、


 【鑑定】

 名前:メディロン・ウラユス

 職業:性奴隷調教士

 称号:【サディスト】【処女百人斬り】【強姦魔】

 祝福:【炎魔法】階位レベル:5

    【雷魔法】階位レベル:1


 と、光る文字が教えてくれた。

 サディストで強姦魔かよ。つーか、普通、強姦って犯罪だからな!?

 魂の殺人とかって呼ばれてるんだぞ!! 怖いなぁ。コイツの棟に連れ込まれなかったのは、運が良かったのかもしれない。


「それゆえ、各棟の運営方法はおぬし達の采配にまかせておる。第一棟、第二棟、第三棟それぞれ不干渉がここのルールじゃ」


「それは……」


 赤髪の男が言いよどむ。


「良いな、メディロン」


「……ああ、わかってる」


 しぶしぶながらも頷く赤髪の調教士。


「スオウも、あまり時間をかけるでないぞ」


 同じく、何か言いかけたものの「……かしこまりました」と答えるスオウさん。


 どうやら、この深緑髪の青年が一番格上のようだ。


 【鑑定】

 氏名:ルゥルゥ・シヴァ

 職業:薬師・園芸家

 称号:【麻薬製造の匠】【栽培革命士】【人体実験愛好家】

 祝福:【回復魔法】階位レベル:4

   

 !?

 この人だけ毛色が違う?

 身にまとっている衣装や腰に差している鞭、装備品は他のみんなと同じなのに……

 でも「麻薬」と「人体実験」と「回復魔法」って……揃ってる単語が物騒すぎやしませんかね?

 つーか、その危険なアーファンの粉とやら……ホントは、この人が作ってんじゃねぇのか? 


 胡散臭くて、女好きで、チャラい感じで、ヤバい薬を使う最悪な野郎だと思っていたスオウさんが、相対的にすっごいマシな人に思えてきたよ……


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