黒い獣
すみません!連勤中で中々書けませんでした。
~クリスタ女学院の共同生活用の屋敷~
トウカは自室に戻っていた。自室にはつい先程来たシェリーとエリサが椅子に腰を掛けベッドに倒れているトウカを見ていた。
自室はトウカ用に特別に作られていた。共同生活で正体を知られない為、風呂・トイレなど色々な機能を付けていた。トウカの出身はクリスタ王国の海を渡った遠い異国と言うことになっていた。それは宗教上、お風呂は1人で入らないといけないなど色々理屈を付けられるからであった。
「あらら、トウカ様はお疲れみたいですね~。」
エリサは笑いながらそう言った。
「それにしてもアノ女、私には内気な振りをしてお兄…トウカ様に手を出そうなんて…!」
シェリーはその可愛い顔を崩してトウカが仕える自分が居るのに堂々とトウカを誘ったエリカの事を言っていた。
「確かに大胆な行動ですよね。下手すると親睦どころの話じゃ無くなるのに。」
「はぁ!?親睦?あの女と?!」
シェリーの中ではエリカは敵になっている様だった。
トウカはそんなシェリーを宥める様に
「まあまあ結局、エリカは私の勧誘を諦めたんだしそう目の敵にしなくても。」
「ふ~ん、”エリカ”ね~。」
「あのシェリー様?」
「”シェリー”。」
「えっ?」
「なんでエリカは大丈夫で私は”様”を付けるの!?」
「だってトウカ・イザナはクリスタ王国に仕えているんだよ。」
「いいから様は付けないで命令よ!」
「………シェリー、これで良いですか?」
「うん!!」
シェリーは機嫌を治して笑顔で良い顔をしていた。
コンコン。
その時、トウカの部屋をノックする音が響き渡った。
部屋の扉を開けると其処にはいま話題になっていたエリカが一人で立っていたのである。
「…すみませんトウカお姉様、少しお話があるのですが宜しいですか?」
後ろからシェリーがエリカを睨んでいた。
そんなシェリーの視線を感じながらトウカは苦笑いをしながらエリカに
「まあ、こんな所じゃなんだから中に入って下さい。」
「ありがとうございます。」
トウカはエリカを自室に招きいれたのだった。
ゾクッ!!
エリカは部屋に入るとシェリーの視線に気付いた様子だった
「…シェリー様?なんで私を睨んでいるのですか?」
「自分の胸に聞きなさい!!」
シェリーは犬歯を剥き出しにしながらエリカに噛みついていたのである。
「なんの事ですか?シェリー様?」
「しらばくれるつもり!?この尻軽女!私のトウカ様を連れていこうとしたくせに!!」
「っ!?」
エリカは自分のした事を思いだし青くなっていた
「すみませんシェリー様、私あの時、どうしても自分の気持ちを抑えられなくってつい…。」
「ついで済むかー!!」
「まあまあシェリー様、エリカ様も謝っていることですし。
それにそれだけトウカ様が魅力的だったと言う事ですよ。そんなトウカ様を独り占めしているのはシェリー様だけですよ。シェリー様がここは大人になってエリカ様を許してあげたら良いと思いますよ。なにせ、トウカ様はシェリー様のモノなんですから。」
そうエリサはシェリーを宥めてくれたのだった。
「まっ、まあしょうがないわね!エリカ様、すみませんでした私も熱くなりすぎました。」
「すっすみませんでした。」
こうしてシェリーとエリカの初めての喧嘩?はトウカと言う火種を残しつつその火を小さくしていったのであった。
「ところでエリカ、なにか私にお話があると言われてましたが?」
「すみません、トウカお姉様お話というか相談になるのですが…。」
エリカはそう言うと険しい顔になって
「トウカお姉様はグレッド国に伝わる『召喚獣』はご存じですか?」
「たしか自分の魔力を使って色々な魔獣・精霊・天使・悪魔を呼び出す事が出来る魔法の事でしたよね?」
「はい、私の国では王宮に仕える者はほとんど使役できます。
『召喚』を使える者を『召喚師』と呼ぶのですが相談と言うのが実は『召喚獣』の事なのですが…。」
「エリカ、『召喚』の事は本で読んだ事が有るけど力になれるかはわからないですよ?」
トウカ(トウヤ)は王宮の図書館で召喚の事は知っていたがあくまで本の内容だった、グレッド国で進んだ知識に敵うはずがないのだ。
「トウカお姉様、とにかく私の『召喚獣』を見て下さい。」
エリカは真剣な目でトウカを見てきた。
「わかりました。それじゃエリカの『召喚獣』を見せて頂けますか?」
「ありがとうございます!トウカお姉様、ここで『召喚獣』を出すのは危ないので外にでませんか?」
こうしてトウカ達はエリカと一緒に屋敷の裏庭に移動したのである。
~裏庭~
(召喚獣ってアレだよな!バハムートとかイフリートとかゲームで出てきたアレだよな!!)
トウカはワクワクしながら移動してきたのであった。
前世ではさまざまな戦闘技術を磨いていたが魔法や召喚などあり得ない力に憧れていたのである。
ただ広い裏庭は王宮と比べてみても大差がなかった。それは各国の王女達が集まるので出来るだけストレスを溜めない為の処置であった。
「トウカお姉様そろそろこの辺で大丈夫そうです。」
そうエリカが言うと
「来て、『ハクオウ』。」
魔力がエリカの前に集まり光出したと思ったらそこには4mはありそうな白い虎があらわれていた。
『ハクオウ』と呼ばれる白虎は冷気を放ちながらトウカを見つめるとその場にすぐに横になってしまった。
「トウカお姉様、実は見て欲しいと言うのはハクオウの事なんです。
私はハクオウ以外にも合計で12種類の召喚ができます。ハクオウはその中でも1~2本の中に入る強さを誇る召喚獣なのですが、御父様の護衛として同行させたら突然苦しみ出して力を失ってしまったのです。」
「エリカの御父様の護衛をしてからと言っていたけど、護衛中になにか無かったの?」
トウカがエリカに聞くと
「そうですね。魔獣の群れに襲われたらしいのですがハクオウがいたので問題はなかったらしいですし、ハクオウは魔獣に見えますが高位の精霊です。多少の攻撃を喰らっても直ぐに傷は治ります。だから魔獣の攻撃で力を失ったとは考えられないのです。」
エリカは今にも泣き出しそうだった。
精霊は魔力の塊であるが為、傷を負った場合でも自らの魔力で自己再生してしまうのだった。召喚の場合は例え魔力が無くなっても術者の魔力で自己再生出来るのであった。
トウカはエリカの頭を撫で宥めると。
「エリカ、とりあえず私が見てみるから泣かないで。」
「トウカお姉様…。」
エリカは熱い目でトウカを見つめていたのであった。
(何処まで出来るか解らないけどやってみるか!)
【森羅万象】
トウヤのSスキルの【森羅万象】は魔力の流れを感じてありとあらゆるものを知ることができるのだ。鑑定と一緒に使うと膨大な知識が流れ込みトウヤの知識としてあつかえる。
さらに、心眼と一緒に使うと例え暗闇だろうと距離がかなり離れていても誰が何処でなにをしようとしているかを死角もなしで把握出来るのであった。
今回はハクオウを診ると言う事で【森羅万象】のみの発動だった。
【森羅万象】でハクオウを診ると高位精霊だと頷ける魔力を感じた。
(うん?なんか違和感があるな?)
ハクオウの背中に白い魔力の中に黒紫の魔力が細かく全身に広がっているのがわかった。
「エリカ、ハクオウに触っても大丈夫ですか?」
「はいハクオウ、これからトウカお姉様が触りますのでそのままでいなさい。」
トウカが近付こうとするとハクオウは起き上がろうとしたがエリカの言葉に従い大人しく横になっていた。
トウカはハクオウの背中に魔力を纏った手をかざすとその黒紫の魔力に触れてみた。
バシュ!!
黒紫の魔力はまるでトウカの魔力に反発するように膨れあがりハクオウの身体から飛び出しトウカの目の前で黒い獣の形になった。それはハクオウの魔力を喰らっていた為か黒い虎の様にも見えた。
「グルルッ!!」
黒い獣はまるでトウカ以外は眼中にないかの様にトウカを睨みその魔力を膨れあがらせていた。
「なんという魔力なんでしょう!魔力で周辺が凍ってしまっているわ!」
「これはハクオウの魔力。でもなんで?こんなに禍々しいの!?」
シェリーとエリカが言った。
黒い獣は魔力を纏いながらトウカに襲いかかってきた。
「くっ!」
トウカは咄嗟に円の動きで黒い獣の攻撃を受け流し黒い獣は勢いをそのままに地面に激突した。
ゴグシャ!!
黒い獣は首が折れたようだが直ぐにホラー映画のように首が元通りになっていた。
(くそっ!物理攻撃は元に戻ってしまう!魔法だとシェリー達を巻き込んでしまう…!!)
トウカはどうしたものかと考えていると
「トウカ様、『紅時雨』です!受け取って下さい!」
エリサが息を乱しながらトウカの愛刀『紅時雨』をなげてくれた。
トウカは『紅時雨』を受け取り鞘から刀身を取り出すと
「物理攻撃が駄目ならこれならどうですか?」
刀身に魔力を込めると『紅時雨』は淡い光を放ち刀としては長い140cmの刀は重さがなくなった。
トウカは黒い獣の前足を勢いに任せて切った。
「グギャァ!」
黒い獣の前足には深い傷がついたが回復はしなかった。
「申し訳ないのですが雑魚はお引き取りください。」
トウカはそう言うと黒い獣の頭をまるで何事もないように落としたのである。
黒い獣はまるで蒸発するかのように魔力に戻りハクオウの身体に戻っていった。
ハクオウは魔力を取り戻しその瞳に光を宿していた。
「凄い!凄い‼トウカお姉様!あの黒い獣をあんなに簡単に倒すなんて‼」
「落ち着いてエリカ、これでハクオウはもう大丈夫だと思うわ。」
「ありがとうございます!トウカお姉様!」
むにゅ
エリカはそう言うとトウカに抱きついてきた。エリカは性格や身長の割には胸が大きくその膨らみがトウカに当たっていたのだった。
「チョッキン。」
振り返るとそこにはエリサが庭の枝切りハサミを持っていたのである。
(マジ笑えないな。)
こうして黒い獣との初遭遇は幕を閉じたのだった。




