8 ステファン第1王子
どうぞよろしくお願いします。
食堂の奥の個室に4人は案内され、カイルは居心地が悪そうな顔をしている。
マデラインがそれに気づいて、カイルに囁いた。
「私もちょっと緊張している……。
まあ、当たり障りなく、だね」
カイルはこそっと笑った。
「第2王子殿下の婚約者だろ。
だらしないなー」
「ああ、任務だと思えば!」
「任務?」
「マディ、カイル! 私語はやめろ!」
アーノルドに注意され黙るふたり。
ヴェステラントはちらりとその様子を振り返り見てから、前へと視線を戻すと、開かれたドアの中の兄とエスメラルダを見て礼をした。
「おお!
ヴェスにアーニー!!
ああ、マデライン嬢、婚約おめでとう!
マデライン嬢が義妹になるとはうれしいよ!
いつでも城で手合わせ楽しめるな!」
金髪に青い瞳の美丈夫『完璧王子』ことステファン第1王子が張りのある声で呼びかけてきた。
マデラインはお礼の言葉の代わりに丁寧に礼をした。
「ホーソン子爵令息も一緒か!
マデライン嬢の相棒だったな。
ヴェステラントが悪いな。
君の相棒を奪ってしまったようで」
「いえ……、学院を卒業するまでの、シュナイダー伯爵令嬢は、オ、私の学友で剣のペアですので」
カイルが静かに言った。
ステファンはヴェステラントを見た。
「我が弟は寛容なのだな。
私なら愛しい婚約者のそばに、友人と言えども、若い男が張り付いているのは、気になるな」
「ステファン!
学院は男女の共学なのですから、そんなこと仰らないで」
エスメラルダが注意する様に言った。
マデラインも笑って答える。
「ステファン第1王子殿下もご存じでしょう。
私が全く女性らしくなくて、この学院では女扱いされていないことを!」
「ああ、女であることが惜しいくらいだ。
男だったら、第一騎士団に入団してもらうのに!」
マデラインがステファンに質問した。
「第一騎士団に女性騎士が入るのは、まだ無理ですか?」
「女性なら、第二騎士団内の女性騎士団がある」
ステファンの返答に黙り込むマデライン。
エスメラルダが「席にお付きになって!」と声を掛け「マデライン嬢は私のお隣に!」と誘う。
もうひとつのマデラインの隣の席の椅子にヴェステラントとカイルが同時に手を掛けてしまい、カイルは慌てて手を引いた。
「カイル、こっちへ!」
アーノルドが呼んで、カイルは少しほっとしたようにアーノルドの隣に行き、座った。
マデラインはカイルに微笑んで『気にしない』と口パクとジェスチャーで伝えた。
微笑んで頷くカイル。
「マディ、今日は私とアーニーも剣の授業に出るよ」
ヴェステラントがマデラインに話し掛けた。
「5年生はもう卒業のため、合同の剣の授業は出なくてもいいのですよね?」
「そうなんだが、マディもステファン兄様も出るなら、今回はね」
「無理なさらなくても……。
いざとなれば、私がお守りしますから!」
読んで下さり、ありがとうございます。
何だかカイルとヴェステラントには居心地悪いランチですね。
楽しんでいるのはステファンだけのような……。
エスメラルダも『あら?』と思っているかも。




