6 婚約者への贈り物
どうぞよろしくお願いします。
「なるほど……、それは困ったわね……。
でも、面白いわね、マデライン嬢!
ステファン様には、お伝えするの?」
授業の前、そして授業を挟み、後の中休み。
ヴェステラントとアーノルドの話を聞いてエスメラルダは軽く笑ってしまってから「あら、ごめんなさい」と申し訳なさそうにした。
「ステファン兄様には内緒に!」
ヴェステラントが頼み込んでいる。
「ステファン様はけっこう頼りに……。
まあ、『何をやっている!』ってマデライン嬢に単刀直入に全部話してしまいそうではあるけれど」
「そうですよね!
でも、それは……。
私は、マディに、自分で、私と婚約することを決めて欲しい。
マディを……。自分で振り向かせたいのです」
エスメラルダはそんなヴェステラントの告白をやさしく微笑んで受け止めた。
「わかりました。
それで、プレゼントね。
婚約したのですもの!
身につけるものを贈るのが一番では。
特にご自分の色が入った物を。
ヴェステラント様なら、金の台に緑の宝石の物とかね」
「……身につける物。
マディが好きなのは……防具!?」
アーノルドが目を閉じてがっくりする。
「だから、マディの好みってよりは、一般的に婚約者が愛する彼女に贈る物にしろ!!」
「……防具。
ふふっ。
いいかもしれませんわ!」
エスメラルダの言葉にアーノルドが驚いてすごい勢いでエスメラルダを見た。
ヴェステラントも同じく。
ふたりの息の合ったシンクロ具合にエスメラルダが面白そうに口元に手を当てて「ふふふっ」と笑った。
「ステファン様に頂いたのだけど。
頂いた時に『これは防具にもなる』と言われた物があって……」
「それは何ですか!?」
ヴェステラントの言葉にエスメラルダが左手首を見せる。
「このバングルよ」
金でできたぱっと見はつるんとした腕輪だ。
重さ対策で内側が空洞になっているようだが、彫金で薄く模様が施され、青い宝石がアクセントに嵌め込まれている。ある程度の強度があることが見て取れる。
「ステファン様ったら真面目な顔で『これなら素手より安心。防ぐにしても攻撃するにしても』って。
「確かにそれで殴られたら痛そうだ」
ヴェステラントは感心しているが、アーノルドはドン引きしている。
ステファン第1王子殿下は……、容姿端麗、成績も良く、剣の腕も現在の第一騎士団長と互角ではと言われるほど文武両道であり、学院在学中から『完璧王子』と称えられていた。
しかし、ヴェステラントとアーノルドは知っている。
性格は豪快で少々脳筋なところがある。
「ステファン王子殿下……。
マディみたいなことを言っている……」
アーノルドの呟きにエスメラルダが笑う。
そして思い出したように言った。
「ああ、今日の剣の授業。
学院に来られるわ。
久しぶりに学生を指導しようって」
ヴェステラントがはっとする。
「えっ!?
私とマディの婚約のことはお聞きになっただろうから……。
マディと会う時は同席した方がいいかっ!!」
エスメラルダがにっこり笑う。
「では、マデライン嬢も一緒にランチをご一緒しましょう!
次の授業、私は地理の特別講義なのです。
昼休み、食堂でお会いしましょう。
奥の個室の方に!
お待ちしてますわ!」
エスメラルダは微笑んで会釈すると、廊下の方へ出て行った。
アーノルドがヴェステラントに言った。
「次の授業が終わったら、3年の教室に行き、マディを捕まえよう」
ヴェステラントはうれしそうに頷いた。
読んで下さり、ありがとうございます。
ステファンは金髪に青い瞳。ヴェステラントは金髪に緑の瞳、です。
基本的に午前中2コマ(1コマ90分。間、長めの中休み)、午後も2コマな時間割です。
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