47 純然たる未遂
どうぞよろしくお願いします。
長めになっちゃってます。
「えっ?」
「……我々、必要でしたかね?」
ヴェステラントとライトが馬を降りる間もなく、ダミアン達が制圧されるのをただ見ているだけだった……。
「はっ!
マディは!?」
ヴェステラントは馬を降り、ジェーンといるマデラインの方へ走った。
「マディ!」
「ヴェス! テラント殿下……。
御心配おかけしてしまい、申し訳ありません……」
一瞬、昔の子どもの頃のマデラインの雰囲気がふわっと出たのだが、すぐにまた他人行儀な感じに戻ってしまう。
ジェーンが周囲に気を配っている。
ダミアンと武装していた5人は拘束されて庭へ座らせられている。
屋敷から出てきた使用人達も何もできないようにエントランスに座らせられて見張られている。
ロザリンドがダミアンの前に立った。
「ダミアン!
マディとの婚約も結婚も許すことはできないと伝えていたでしょう!
幼いマディを見るあなたの目、心配だったわ。
なので、以前よりマディの身の回りは力のある者で固めていました」
「ロザリンド叔母様……、あなたならわかるはずだ!
マディはシュベイクの、そうシスティナのような力のある素晴らしい女性だ!
あんな何もできない、『完璧王子』の兄の陰に隠れて、それに満足しているような第2王子なぞ!
マディにはふさわしくないだろう!
だったら、まだ私の方がふさわしい!
シュベイク侯爵家の後継で、マディの才能もかわいらしさもよくわかっていて、理解している私が!!
わかったろ! マディ!
『穏やか王子』は何もしてない!
君を助けるために何もしていない!!
それだけ凡庸でつまらない弱い男だ!
マディにはふさわしくないんだ!!」
ライトがダミアンの方へ進もうとして、ヴェステラントは慌てて止めた。
「ヴェストラント殿下!
あんなに言われて、悔しくないんですかっ!?」
「いや、悔しいとか、そんな……」
その時、ダミアンの方へスーッと移動して行く人影。
その人物はジェーンを従えて、ダミアンの前に立ち、見下ろした。
「マディ!」
恍惚とした表情で見上げて名を呼ぶダミアン。
マデラインは無表情だ。
「な、マディ!
わかったろ!
第2王子殿下がいかに無能か!」
マディはダミアンに近寄り、左手を右側に大きく振り上げ、振り下ろした。
左手首の手甲のようなブレスレットがダミアンの顔の左側面にぶつかり、ダミアンが座った状態で転がった。
「ヴェスは!!
無能なんかじゃない!!
一番最初にここに駆けつけてくれた!
私のことを心配して、追いかけて来てくれた!
10歳の時から、私は……。
なのにずっと変わらずにいて、穏やかに、ずっと、私を大切にしてくれた!
ダミアン兄様、あなたとは大違いだ!!
剣の才能がないけれど、頭が良くて人に指示を出す能力が高いからシュベイクを率いていくことができるだろうと聞いていたけど……。
ダミアン兄様は気持ち悪い!!!
こういう……、システィナ大叔母様の、最期にしたこと。
私とセレイラ姉様にしたこと……。
他人を傷つけて思うように動かして……、さらに人の心を傷つけて……。
そういうことは許せないしっ!
許さないっ!」
騒ぎを聞きつけて駆けつけて来た第一騎士団の団長が状況を見て首を傾げる。
「えっと……、シュナイダー伯爵令嬢が卒業パーティーから帰宅する途中に行方がわからなくなり……。
でも、御親戚のシュベイク侯爵令息が送っていたんですよね?
これは……、一体何があったのですか!?」
シュナイダー伯爵夫人であるロザリンドがにこやかに微笑んだ。
「そうね!
私の甥のダミアンが、私の娘マデラインを送ろうと申し出て学院を出ましたの。
でも、何故かこちらの屋敷に立ち寄ろうとしたみたいで。
シュナイダー伯爵家としてはマデラインとダミアンは従兄妹同士ではありますけれど、マデラインはヴェステラント殿下と婚約中ですし。
そのような疑われるような行動は控えて頂きたいと、察知してみんなで伺いましたの!」
「みんなで!?
シュナイダー伯爵家とリンデンバウム辺境伯爵家とヴェステラント第2王子殿下……、で!?
……えーと、それでマデライン嬢は?」
「無事ですわ!
屋敷に入る前にヴェステラント殿下が駆け付けて!
マデラインを取り戻しましたから!!」
「ということは。
シュベイク侯爵令息ダミアンは……?
ん、マデライン嬢誘拐……未遂……?」
「まあ、そうですわね!
純然たる未遂ですわ!!」
読んで下さり、ありがとうございます。
ヴェステラントの見せ場、なし。
ロザリンドお母様が叫んだ『純然たる未遂』という言葉がとても面白いなあと思ったので、この話のタイトルにしちゃった。




