38 追いかける
どうぞよろしくお願いします。
最初の曲が終わり、ヴェステラントとジルティア、ステファンとエスメラルダがホールの真ん中から戻って来た。
暗い表情でアーノルドも早足で戻ってくる。
「アーニー! マディは!?」
ヴェステラントの言葉に首を振るアーノルド。
「……すみません。
テラスまでは戻って来たのですが……。
ヴェステラント殿下とジルティア嬢の邪魔はしたくないと……」
ジルティアの顔色が悪くなる。
次のダンスでヴェステラント殿下とマデラインが踊って、理由があり最初はジルティアがお相手を務めたのだと周囲の心証を上書きすればいいと思っていたのだ。
マデラインがいないとなると、まるで、マデラインからヴェステラント殿下を奪ったような……。
「マデラインはどこに?」
ジルティアが必死にアーノルドに聞く。
「従兄のダミアンが……。
送って行くとエントランスへ……。
後を少し追ったのですが、マデラインがもう帰りたいと……」
「ダミアン?
シュベイク侯爵家の?」
ステファンが厳しい顔つきで言った。
カイルとライラベルがその言葉にエントランスの方へ走って行く。
「もう、間に合わないでしょう。
ダミアンは……、マディとふたりきりになるのを狙っていたのかもしれません」
「狙うって!?」
「前から、マディを嫁に欲しいとは言われていました。
マディが10歳の頃からです。
でも、父とも話していて……、従兄であるし、歳も離れ過ぎている。
何か起きない限りはありえないだろうとは……」
「何か?」
ジルティアが顔を強張らせる。
「ダミアンは……、マディがどこにも嫁げなくなるのを待っていたんだと思う。
どこにも嫁ぎ先がないとなれば、うちの父と母も折れるだろうと見越して。
でも、ヴェステラント殿下と婚約したし、もうあきらめているはず……」
「何かとは……、ヴェステラント殿下との婚約破棄ですか?」
ロザリーが淡々と言った。
「でも、なんで!?
遅れたことを詫びて、2曲目、3曲目と連続で踊れば、最初に間に合わなかったことなど、どうでもよくなるでしょう!?」
ジルティアが苦しそうに言って……。
カイルとライラベルが戻って来た。
「ダメだ、もうシュベイク侯爵家の馬車は出てしまったと……」
「アーニー! マディは?」
リンデンバウム辺境伯爵夫人が青い顔でアーノルドに話しかけてきた。
「お兄様とホールへ戻ると……。
でも、ダンスしていなかったみたいで……」
「セレイラ!
ダミアンはマディを送ると連れて行ってしまった。
きちんとシュナイダー伯爵家に送ってくれるだろうか?」
アーノルドの言葉にヴェステラントが走り出してしまう。
「おい! 闇雲に!!」
ステファンが声を掛けるが、ヴェステラントの後をついて走り出した青年がこちらを振り返り「殿下のことは任せろ!」と叫んだ。
「ライト!! 頼む!!」
アーノルドは叫び返し、セレイラに向かって言った。
「とりあえず、私はシュベイク侯爵家に乗り込んで、ダミアンがマディを隠していないか確認してくる!」
「私も行くわ!
リンデンバウムの馬車で行きましょう!
それなら、追い返されない!
お願い! あなた! 協力して!!」
セレイラが夫の辺境伯爵に頼んだ。
アーノルドはカイルとライラベルに頼む。
「すまん、シュナイダー伯爵家にマディが体調を崩してダミアンが送ると馬車で連れ出したことを伝えてくれないか!?」
カイルが力強く返事をする。
「わかりました!!
ライラベル、伯爵家の馬車を貸してくれないか?」
「はい、私も行きますわ!」
「ライラベル! 私も……」
ジルティアが声を声を掛けるがエスメラルダがその声を遮った。
「ジルティア、だめよ。
あなたはこのままこのホールに。
できたら、他の男性とダンスを踊るのね。
少しでもヴェステラントと踊ったという周囲の記憶を薄めるためにも」
「そんな……!」
読んで下さり、ありがとうございます。




