36 学院の庭で ②
どうぞよろしくお願いします。
「……ステファンに聞いたの?」
セレイラが驚いたように言った。
マデラインが少し躊躇しながらも頷いた。
「そう……。
もう忘れてるかと。
いえ、そんなわけないか……。
そうね。
システィナ大叔母様のことで新たに作られた家訓のこともあったかもね。
でも、私も、怖かったの。
王子妃になって、王妃になるかもしれないことが。
だから、家訓だけのせいじゃないわ。
返事できなかったのは、私のせい。
……今はリンデンバウム辺境伯爵の妻として、幸せよ。
騎士団を夫と率いているの!
もし王子妃になっていたら、そんなこと、とてもできなかったでしょう……」
「じゃあ、お姉様は今は幸せで、もういいのね?」
「ええ……と言いたいところだけど……。
さっきステファンに会ったら、まだ胸が痛かった。
結局、なってもならなくても傷つくことには変わりないのかもよ。
それが、初恋というものなのかもしれないわ。
でも、もう、私のは昔の思い出なの」
「私だって、同じです」
「マデライン……、意地になるのはやめなさい。
もうシスティナ様はいない。
約束に意地になることない」
「いえ、ダミアンお兄様に家訓を取り下げてもらわないと」
「……あなたが気にすることじゃないわ」
「未来の子達のため?」
マデラインが難しい顔をして言うのでセレイラが笑った。
「セレイラ!? セレイラ!」
男性のセレイラを呼ぶ声が近づいて来る。
「はーい、ここです!」
セレイラが高い声で返事をし、マデラインににっこり笑った。
「旦那様を紹介するわ!」
背の高い、一目で力のある騎士であるとわかる立派な体格の男性が現れた。
「あなた!
従妹のマデラインよ」
「リンデンバウム辺境伯爵様。
シュナイダー伯爵家のマデラインです」
「ああ、君がマデライン!!
ヴェステラント殿下の婚約者だろう!
殿下の卒業と、君との婚約と、おめでたいこと続きだな」
「ありがとうございます」
「セレイラと昔話でも?」
「はい、子どもの頃のことを話していました。
懐かしくてたくさん話し込んでしまって……」
「ああ、もうダンスが始まるよ。
君も早く戻らないとね」
その時、ダミアンが現れて「私がマデラインを連れて戻りますので」と言った。
「お兄様!!
いつからそこに!?」
セレイラが驚いたように言った。
「さあ、少し前からね」
ダミアンはマデラインに微笑みかけた。
「さあ、参りましょうか。
マディ。お手をどうぞ」
ダミアンが優雅な仕草でマデラインに手を差し出す。
マデラインは緊張した表情をして、ダミアンの手を取った。
ダミアンとマデラインはリンデンバウム辺境伯爵夫妻に礼をして、ホールの方へ戻って行く。
「……家訓をひっくり返そうとしていたとはね。
でも、それでこそ、マディだ」
「私が上手く任務を遂行することができたら、シュベイク侯爵家家訓から『王家の男性との婚約は絶対に許さない』を抜いて下さい。
たぶん、システィナ大叔母様の本当の気持ちではないと思います」
「……そう、かもね。
まあ、王子と婚約破棄して、君がシュベイク侯爵家に入ってくれればね」
「そこまでセットなんですか?
私、誰とも結婚する気はないですけど」
「……王家とシュベイク侯爵家、どちらの方が手強いと思う?」
「それは、シュベイク侯爵家でしょうね……」
マデラインが苦笑した。
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