35 学院の庭で ①
どうぞよろしくお願いします。
ヴェステラントがエスメラルダとステファンと一緒にいることで、近づいて来て声を掛けてくる貴族や学生が多くなり、アーノルドはヴェステラントのそばを離れられなくなる。
カイルとライラベルは騎士団に入団する先輩の所に挨拶に行き、ジルティアとロザリーとマデラインはテラスの方に出た。
「はあ、けっこう人が……。
学生だけじゃなく、高位貴族の血縁の方も多いから、疲れる……」
マデラインの泣き言にジルティアが苦笑して「お疲れ様です」と言う。
「それにしても、もう少し、高位貴族の方々のこと知っておいた方がいいですわよ!」
ロザリーが心配そうにマデラインに言った。
「ううー、だって、私は騎士になるんだもん……」
「第一なら、なおさら!
王室や高位貴族の方を警護することが多いでしょう」
ジルティアにまで言われてしまう。
「ごもっとも……」
その時、ジルティアの所に急いだようにユージンがやって来て話し掛けた。
「こんなところにいたのか!
ほら、ガスパール公爵家騎士団の入団者を紹介するから来い!
マデライン嬢、少し妹を借ります」
「いえ、私こそ、ジルティアを独占してしまい、申し訳ありません!」
「少し待っていてね!」
ジルティアはユージンとホールへ戻って行った。
「ロザリーはご挨拶する人はいないの?」
「えっと、『創作作家』のアイラ女史と……」
「どうぞ気にせず行ってきて!
私、庭を少し歩いてから戻るから!」
「そう?
じゃあ、後で!」
ロザリーを見送ってから、マデラインはテラスから庭への階段をゆっくりと下りて行った。
いつもの学院の庭なのに、制服ではなくてドレス姿の自分がいることが、なんだか現実ではないようでマデラインはため息をついた。
「マディ……」
呼ばれて、マデラインは驚いて振り向く。
そこにはセレイラが立っていた。
艶のある栗色の髪を新妻らしくゆったりと結い上げていて、大人の女性の雰囲気を漂わせている。
「セレイラ姉様……」
セレイラは走り寄ってくるとマデラインを抱きしめた。
「やっぱり、マディよね!
すごくきれいになってて、見違えちゃった!
……ヴェステラント殿下と婚約したばかりなんですって?
おめでとう!」
「……はい、でも、それは一時的なものです」
「一時的?
あなた……。
まだ、システィナ様のことを気にしているの?」
マデラインは頷く。
「……あなたはシュベイクじゃないんだから!
縛られることないの!」
「いえ……、私はシスティナ様のことを上書きしたいの!
シュベイクの家訓を!
家訓と言っても、システィナ様から始まったものでしょ。
システィナ様は傷ついたけど、私は任務として、傷つかなきゃいい!」
「マディ、でも、あなたは……。
ヴィステラント殿下のことが、本当に好きでしょ!?
初恋じゃない!」
「システィナ様とお会いした時に、初恋は捨てたわ。
だから、システィナ様と約束した。
王家とは婚約しない。
でも、私から婚約破棄するのはいいの。
婚約破棄か解消して、私の心が傷つかなければ、それで、システィナ大叔母様の恨みは上書きしておしまいにできるでしょ?」
セレイラは笑った。
「恨みって……。
この家訓は私達を守るために、システィナ大叔母様が……」
「セレイラ姉様こそ……。
ステファン殿下に聞いたわ……。
姉様は、良かったの?
ステファン殿下と……」
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