31 家訓
どうぞよろしくお願いします。
「はー、楽しかったー!!」
夜、マデラインは自分の部屋でニコニコしていた。
机の上にはヴェステラントから贈られた2つの箱が並んでいる。
あの後、みんなで昼食を食べ、ロザリーが「秘蔵のコレクションですわ!」と重そうなカバンを手にこそこそエスメラルダに声を掛けて……。
マデラインもそっちに行きたかったのだけれど、ライラベルとカイルに強引に連行されて、ヴェステラントとアーノルドと庭の散策チームになってしまった。
途中でマデラインとアーノルドの母に出会い、挨拶して……。
ヴェステラントは伯爵夫人であるロザリンドに緊張して挨拶していた。
「シュベイク侯爵家にもご挨拶を……」なんて言っているのが聞こえたけれども……。
シュベイク侯爵家。
『王家の盾』と呼ばれる古い家門だ。
昔は辺境を守備していたが、今は国際情勢が落ち着いたこともあって、武力は誇りながらも、現在は諜報や警護などで有力な力を持っていると言われている。
ロザリンドも見た目はおっとりとした伯爵夫人だが、実はかなりの剣の使い手である。
ロザリンドとヴェステラントの会話が気になりつつも、マデラインはカイルとライラベルに庭の説明を始めたのだ。なので、マデラインは、母とヴェステラントの話の内容は知らない。
「シュベイク侯爵家か……。
セレイラ姉様、シュベイク侯爵家の家訓をお守りになったのだわ。
私は……、うん、最終的にヴェステラント殿下から離れれば、その時に私が傷つかなければ、システィナ様との約束は破っていないってことになるわよね……。
うん、大丈夫。
私はヴェステラント殿下を……、好きではない。だから、傷つかない!
これは任務!!」
マデラインはそう呟きながらも目は机の上の箱に吸い寄せられ……。せつなそうな表情をした。
「もう、ヴェステラント殿下、私に気のある演技をしないでっ!
嘘だとわかっていても苦しくなる……。
いや、そんなことはない! 私は大丈夫!!」
部屋には直しが終わり華やかになったドレスがトルソーに飾られている。
「一週間後。
そうすればヴェステラント殿下は卒業して……。
私達は春休みに入って……。
でも、王子妃教育とかで王城に行くんだっけ……。
ジルティアにうまく引き継ぐまでは、私も、か。
それで4月下旬にステファン殿下とエスメラルダ様の結婚式……。
うーん、5月ぐらいまで頑張れば、バトンタッチして……。
そうしたら、あれは返すべき!?
でも、ジルティアだって、お下がりは嫌よね。
好きな人からなら新しい物を貰った方がいい。
んんん、貰っておいてもいいのかしら?
それまで頑張ったご褒美というか……」
そう呟くマデラインの瞳は寂しそうに沈んでいった。
「セレイラ姉様。
リンデンバウム辺境伯爵家へ嫁いだけど、ステファン殿下にも求婚されていたんだ……。
家訓とはいえ、セレイラ姉様は……、ステファン殿下のこと、本当はどう思っていたんだろう……」
読んで下さり、ありがとうございます。




