19 友達として
どうぞよろしくお願いします。
試合が始まった。
アーノルドはマックスに宣言した。
「お前の相手はこの俺だ!」
マックスが「まあ、そうなるだろな」と言って、ゆっくりとステファンから離れる。
ペア戦なのだが、アーノルド 対 マックス、ステファン 対 ヴェステラントという対決になっている。
「兄様……!」
マデラインの囁きにカイルは「おいおい! ヴェステラント殿下を見ろよ」と突っ込み、ライラベルからシャツの背中をぐっと引かれて驚いた。
「黙って!」
「……はい」
アーノルドは大きく息を吐いた。
そして、ヴェステラントとのことを思い出していた。
自分の一番の長所は冷静さとわかっている。
ステファン王子がいずれ王太子となり、ヴェステラントは王弟という立場になり、最終的には自分と同じ臣下に封ぜられるかもしれない。
そうわかっていても、アーノルドはヴェステラントから離れることができなかった。
『この方は周りをよく見ていて、それに幼い頃より応えようとしてきた』
それがアーノルドがヴェステラントに見てきた彼の本質であり、寂しさだった。
知り合ったばかりの頃、まだ6歳だというのに『僕よりステファン兄様と親しくなった方がいいね』とアーノルドをステファンに紹介しようとしたヴェステラント。
「僕は、ヴェステラント殿下と……、親しくなりたいのです!」
そう言ったら、泣きそうな顔をされた。
「でも、僕は……政治で活躍することも、武功で国を救ったりすることもないだろう。
僕といたら、この国で活躍するということはできないよ……」
「いえ、僕はヴェステラント王子殿下が好きですよ。
その……、友達になりたいと思います。
従者や側近候補ではありますが、あなたとなら友達になれる気がします」
「……ありがとう、アーノルド!
僕はヴェス。よろしくね」
うれしさと不安が入り混じったようなヴェステラントの声。
あの不安は最初ヴェステラント自身が将来に感じている不安かと思ったが、親しくなると違うことがわかった。
アーノルドのことを、心配していたのだ。
自分と親しくすることで、周囲から軽く扱われてしまうのではないか、将来を狭めてしまうのではないか、と。
それは親しくなり、シュナイダー公爵家にヴェステラントを招待した時にわかった。
4歳のマデラインが挨拶をして『ベっ、ヴェステェラントーおうじさまはアーにいさまのおともだち?』と明るく聞いた時、本当にうれしそうに笑ったヴェステラント。
ヴェステラントは『ヴェス』と根気よくマデラインに教え、マデラインは懐いて『ヴェス、ヴェス!』とくっついて回るようになった。
そんな時、ヴェステラントが言っていたのだ。
『ああ、マディにアーニー。君達のことを考えたら、いずれは手を離さないといけないのに。
どんどん僕は君達の手を離せなくなる。すまない。こんな我儘な僕を許してくれ……』
ああ、この人は自分よりも周囲の人を大切にしてしまい、自分が傷つくことを選ぶ人なのだとあらためて気づいた。
悲しい思いばかりして欲しくない。王子としてだけじゃなく、友達としても支える。
そう決めたのだ。
「理由はどうあれ、ヴェスが本気で、初めて挑む気になったんだ!
邪魔はさせない!」
読んで下さり、ありがとうございます。
いつもしかめっ面をしてるアーノルドですが、けっこう熱い心も持っているお兄ちゃんなのですよ。




