15 作戦
どうぞよろしくお願いします。
「このっ! ちょこまかとっ!」
クライヴは大振りで剣を振り下ろした後、少し無理な姿勢のまま素早く剣を振り上げ、下す!
マデラインは一歩踏みこんだ。
体勢を崩しての振り上げ振り下ろしのため、その後、一瞬動作が遅くなることがわかっていたからだ。
慌てて剣を振り上げようとしたクライヴの胸当てにマデラインの木剣が当たり、もともと体勢を崩していたクライヴは堪えられず尻餅をついた。
審判の先生が手を挙げ「クライヴ、負け!」と宣言した。
エスメラルダとジルティアが手を取り合い「「キャー!!」」と喜んでいる。
応援の1~2年生の女子も「「マデライン様~!!」」と大喜びだ。
マデラインはすぐにカイルと対峙しているサーザの背中側に回り込んだ。
さすがのサーザも前後のふたりを気にして防戦一方になり、カイルに腕を打たれ、バランスを崩したところをさらに胸を打たれた。
「サーザ、負け! 勝者、カインとマデライン!!」
先生の声が響いて、カイルとマデラインはお互いの剣をカツンと合わせてお互いを称え合っている。
3年のペアの作戦勝ちだ。
ステファンは苦笑し「まあ、勝ちは勝ちだな」と言った。
ヴェステラントは「立派な勝ちでしょう?」と少し怒ったように言った。
「試合ならな。
ここが戦場なら、あんなにゆっくりとは時間はかけられないし、足場はもっと悪い」
正論である。
「でも、ここは試合場で、これは試合です」
ヴェステラントの言葉にステファンは「そうだな」と笑った。
そして、くじと対戦を管理している係に声を掛けた。
「後、何組残りだ?」
名前の紙を並べていた係が「残り4組です」と報告する。
「後2試合か。何年だ?」
「5年が2組、4年が1組、3年が1組です」
その言葉にステファンは紙が並べられたテーブルに近寄り、手を伸ばして紙を動かした。
「……そうだな、こうしよう」
5年のヴェステラントとアーノルドが4年生のペアと。
もう片方の5年生ペアがカイルとマデラインとの対戦になる。
「……わざと対戦しないように?」
ヴェステラントが聞くと「まあな。今日はヴェスも頑張っているようだが、婚約者に負けるわけにはいかないだろ」とステファンが笑う。
「しかし……」
3年と5年ではさすがに体格にかなりの差があり、しかもマデラインの対戦ペアのひとりは第一騎士団に内定している強者だ。すでに大人の騎士と言ってもいいだろう。
「もしお前達が4年生に勝ったら、決勝か私との対戦か選ばせてやる」
「決勝か、ステファン兄様との対決?」
「どうする?」
「勝ってから決めます」
ヴェステラントとアーノルドが試合場に入る。
マデラインとカイルももうひとつの試合場へと入った。
「5年生のマックス&ライト先輩か。
大会第2位。
マックス先輩は第一騎士団に内定してる実力者だ」
マデラインの言葉にカイルが応じる。
「ふたり離れずにお互いの隙を潰して、こちらに手出しをさせなくさせるというスタイルだな。
ふたりを引き離せるかが、鍵だな」
カイルの言葉にマデラインが頷く。
「さっきみたいにはうまくいかないね。
近づくのも……、怖いところがあるしな。
走って引っ掻き回してみる?」
「……警戒されてると思う。
さっきの試合もある。すぐには引っかからないだろうな。
様子を見て……。短時間で片が付くと追ってきそうなら走る」
「了解!」
読んで下さり、ありがとうございます。
カイルはとてもできる子です。優等生タイプ。
それもあり、困っていたマデラインにペアを申し込んでくれた……ということもあります。
身分差をひけらかしてくる高位貴族の同級生に利用されるよりは、マデラインの方が同等な関係でありながら自分より上位の貴族とお近づきになれるという計算は心の隅にあったと思います、が。
マデラインは女子としては突出していても、同学年男子の中ではままあ強いほう……なくらい。
カイル&マデラインのペアは同級生男子の中ではかなり強い方になりますが、上級生や上位ランカーペアとの戦いは……、作戦を立てないと厳しいです。




