10 楽だったんだ
どうぞよろしくお願いします。
ランチが終わる頃にはマデラインとヴェステラントは言葉少なになっていた。
エスメラルダとステファンはそのまま、この個室を控室として利用するということで、4人はお礼を言って食堂を出た。
アーノルドがヴェステラントとマデラインの様子を気にしている。
カイルが恐る恐るという感じでマデラインに話し掛けた。
「練習の仕度をしに行こう」
「ああ!
ヴェステラント殿下、お兄様、それでは練習場で!」
3年生のふたりを見送ってから、ヴェステラントはアーノルドに言った。
「マディは……、カイルが好きなのだろうか?」
「いや、そんなことは!
友人としてでしょう!?
マディの学年はマディ以外に剣を選択した令嬢がいず、ペアのことで困っていた時に手を差し伸べてくれたカイルのことを大切な仲間と思っていますが、それ以上の感情はマディにはないですし、カイルもそうです」
「そうかな……」
ヴェステラントは沈んだ声で言った。そして少し考えてから、呟いた。
「……マディは強い男が好きなのか?」
「それは、まあ。
女だてらに第一騎士団に入りたいというくらいですからね。
強い騎士には尊敬の念と憧れを持っています」
「そうか……」
ヴェステラントは自分の手を見る。
「私はこれまで自分は前に出ないようにと……」
アーノルドが静かに言った。
「そろそろ本気出したらどうですか?」
「マディは、私が今まで本気を出してこなかったことを……、怒らないだろうか?」
「もう学院の大会は終わっちゃいましたからね。
殿下は優秀ではありますが、そこまでずば抜けてという成績を残していませんし。
でも、それは……」
「ああ、目立ちたくないし、それが私には楽だったんだ……。
『完璧王子』の穏やかな人畜無害の弟っていう立場がね。
競う気は全くないし。
でも、そんな私を、マディは、ただの兄の親友のひとりとしか思ってなかったんだな」
「そうですね。
あいつは自分の方が強いとすら思っていますね」
「ああ、今のマディには、相棒で仲間のカイルの方が、大切なのだろう……」
アーノルドが気を取り直したように言った。
「でも、エスメラルダ嬢の提案でマディは踏み止まったようで良かったです」
「ああ、あの場で、なら婚約を白紙にと言い出すかと……。
息の根が止まりそうになった」
「そんなことでご自分でご自分の息の根止めないで下さいよ!
ただ、ここでいきなり力を出せますか?
今までのこともありますし、精神的に切り替えが難しいのでは?」
ヴェステラントは苦笑した。
「そんなことはもう言っていられない。
できることをするだけだ」
読んで下さり、ありがとうございます。
うおお! ヴェステラント、頑張れ!




