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〈流星の大魔導士〉さま

「お、伯父さんって……ルリ、幾ら日常会話に毎日伯父さんを登場させるくらい伯父さんが好きだからって、連れてくるのはなんか違うんじゃないの!?」


(私もそう思います……それと、毎日私の話をしているのですね……)


「えー、そんなこと言わないでくださいよミレアちゃん! 伯父さんはめちゃめちゃすごい魔法使いなんですよ!?」

「めちゃめちゃすごい魔法使い、って……このくたびれたおっさんが?」


(姪と同い年の女の子からくたびれたおっさん呼ばわりされた……自認してはいますが……)


「ちょっとミレアちゃん、わたしの愛しの伯父さんをくたびれたおっさん呼ばわりしないでくださいよ! よく見てください、この彫刻と見紛うような肉体美を!」

「だぼっとしたローブ着てるからわからないわよ!」


(おお、ルリラーテ、やめてくれ……)


「この神の最高傑作とも言える顔立ちを!」

「無精髭生えてるじゃない!」


(やめてくれ……)


 ルリラーテとミレアの会話を死んだ魚の目で聞きながら、ラルゼースは小さく溜め息をついた。

 ルリラーテは小悪魔っぽい笑顔を浮かべて、「……というか、いいんですか、ミレアちゃん?」と腕を組む。


「いいんですかって……何がよ」

「ミレアちゃん、〈流星の大魔導士(ステランディラ)〉の大ファンでしたよね?」


 ラルゼースは目を丸くする。ミレアは途端に目をきらきらと輝かせて、「その通りよ!」と勢いよく頷いた。


「〈流星の大魔導士(ステランディラ)〉さま……私は彼の大ファンなの。ああ、今頃彼は何をしてるのかしら……元気かな……幸せだといいな……もう一度だけでいいから、お会いしたいな……」


 頬に手を添えながらうっとりとした様子で言うミレアに、ラルゼースはめちゃめちゃむず痒い気持ちになる。


「あはは、何を言ってるんですかミレアちゃん。今会ってるじゃないですか」


 ルリラーテの爆弾発言に、ミレアは「えっ……?」と言って。

 それからラルゼースを一瞥すると、おかしそうにお腹を抱えて笑い出した。


「え、ルリ、まさか自分の伯父さんが〈流星の大魔導士(ステランディラ)〉さまだって言ってるの!? もー、変な冗談やめてよ!」

「いやほんとなんですけど……」

「――ルリ。私はあんたのことが大好きだけど、〈流星の大魔導士(ステランディラ)〉さまに関する嘘は許さないわよ」


 ミレアが急に暗い目になって、ルリラーテは「ぴゃあっ」と笑顔で仰け反った。


「全くもう……幾ら実の伯父をパーティーに捩じ込みたいからって、もっとましな嘘考えなさいよ」


 ミレアはやれやれ、といった様子で言う。ラルゼースとルリラーテの目が合った。普段は元気いっぱいで太陽のような姪っ子と、今だけは同じ感情でわかり合えているような気がした。


「まあ、いいわ。三人パーティーじゃなくて四人パーティーの方がバランスがいいのは事実だし……それで、えーと、ルリの伯父さん。あんた、名前なんて言うの?」

「私の名前はラルゼー……ではなく……ラゼ。ラゼです」

「ふーん、ラゼっていうのね。それでラゼは、何の魔法が使えるの?」

「使用可能な魔法は、治癒と――」

「治癒!? そこにいるシュシュも治癒魔法の使い手なんだけど!? 偏っちゃうわよ!」

「いえ、治癒だけではなく……」

「ふふ、嘘なんてつかなくて大丈夫よ。ゼンスディア魔法大学に通う私たちが一属性の魔法しか使えないのに、あんたが二属性の魔法を使えるわけないじゃない!」

「いえ、二属性ではなく……」

「ほらやっぱり一属性なんじゃない!」


 ふふんと胸を張るミレアに、ラルゼースは心の中で(……五属性、なのですけれど)と呟いた。けれど二属性でさえ信じてもらえない状況で五属性だなんて言っても笑われてしまうだろう。


「まあ、治癒魔法の強度が上がったと考えれば悪くはないかしら。せいぜい足を引っ張らないことね!」


 びしっと人さし指を向けてくるミレアへ、ラルゼースは「……わかりました」とこくりと頷いた。


「(ごめんなさい、伯父さんっ! ミレアちゃん、ほんとはいい子なんですけどちょっとこういうところがあって……)」


 ルリラーテが小声で話しかけてきたので、ラルゼースも小声で応答する。


「(別に大丈夫ですよ。前世でこういうタイプの女性、アニメでよく見かけましたので……)」

「(あにめ……? 何でしたっけ、それ)」

「(絵が動きます)」

「(なんと! ワンダフルですねっ!)」


「ちょっとそこの二人、何こそこそ会話してるのよ!?」

「あああごめんなさいミレアちゃん、ちょっと伯父さんと愛をささやき合っていただけですよ♡」

「実の伯父と愛をささやき合うのはやめた方がいいんじゃないかしら!?」


 至極真っ当なツッコみに、ラルゼースは心の中で爆速で頷いた。

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