パーティメンバー
「――ダンジョン救助ボランティアに絶対に必要になってくるのが、こちらの宝石です!」
柔らかな喧騒で賑わう町の中。ラルゼースの隣を歩くルリラーテが、身に着けているネックレスの赤紫色の宝石を手に取り、彼へと示してみせた。
「これは……通信石ですか」
「その通りですっ! 流石伯父さんですね! でもでも、普通の通信石とはちょっと違うんですよ?」
「そうなのですか……?」
「はい! 救助を目的としてるので、位置情報が座標として宝石に浮かぶようになってるんです。なので伯父さんもまずはダンジョンの地図と座標を頭に叩き込みましょう!」
「承知しました」
ラルゼースは首肯する。ルリラーテがぴたりと足を止めたので、ラルゼースもそれに倣った。彼女の視線の先には、綺麗な白い外壁が印象的な建物がある。
「ここがダンジョン救助ボランティアの本部です! まずは登録から済ませましょうっ」
ルリラーテは笑いながら言って、ラルゼースの手を掴むと走り出す。
「ちょ、ちょっとルリラーテ、急に走ると転んでしまいますよ……!」
「あははっ、伯父さん、わたしはもう大人ですよ?」
銀色の長髪をなびかせながら言うルリラーテに、ラルゼースは(……十八歳はまだまだ若いですよ)と思った。
ちょうど、彼女が亡くなったのも十八歳だった。まだ、高校三年生だったのに――
心の古傷が痛むのを感じながら、ラルゼースはルリラーテの長寿を願うように、繋がれた手に微かに力を込めた。
受付嬢に「ラルゼース、って……今は酒場に入り浸ってる〈流星の大魔導士〉の!?」と大声で驚かれるという一悶着はあったものの、むしろ実力がばれたことでスムーズに登録が進み、ラルゼースはめでたくダンジョン救助ボランティアの一員として認められた。
「ミレアちゃんとシュシュちゃんは広間にいるはずです!」
そう告げるルリラーテに案内されて、ラルゼースは広間へと到着する。
沢山の魔法使いがそれぞれ楽しそうに談笑していた。ラルゼースは視線を彷徨わせながら、(……確かに実力のある方が多そうですね)と思う。ラルゼースほどの魔法使いであれば、一目見れば相手の実力は殆ど理解できる。
(でも……ものすごい実力、というわけではない)
ダンジョンの魔物がひどく凶暴であることくらい、ラルゼースは知っている。それだけでなく、強大な力を持つということも――ラルゼースは魔法使いたちの今後を想像し、少し不安になる。ミイラ取りがミイラになる、という前世のことわざが頭の中に静かにのしかかった。
「あっ、いました! ミレアちゃんとシュシュちゃん!」
ルリラーテの嬉しそうな声で、ラルゼースの意識は現実に引き戻される。彼女の指さす方を見れば、近くで二人の少女がお喋りしていた。
――桜の花で色付いたようなストレートトングヘアと、炎を想わせる赤い瞳の少女。
――藍色の髪を編み込みを伴う二つのお団子に纏めた、澄んだ空のような瞳の少女。
どちらもルリラーテと同じくらい美しい少女だった。
(……ルリラーテは本気で、このパーティーにくたびれたおっさんである私を入れるつもりなのでしょうか)
どう考えてもミスマッチな気がする、今からでも酒場に帰ろうか――ラルゼースがそんなことを考えているとはつゆ知らず、ルリラーテが二人の少女に向けて「やあやあ、お待たせしましたっ!」と大声で話しかける。少女たちはルリラーテの方を向き、桜髪の少女がつり気味の目を嬉しそうに細めながら口を開いた。
「おかえり、ルリ! 待ってたのよ、私たちのパーティーに最高の助っ人を連れてくるって言ってたから!」
「ふっふっふ、よくぞ待っててくれました、ミレアちゃん! それではこちらが最高の助っ人の……わたしの伯父さんですっ!」
ルリラーテの後ろで状況を見守っていたラルゼースを、ルリラーテは、ばばん! と効果音でも鳴りそうな勢いで両腕を広げて示してみせる。
桜髪の少女――ミレアと、藍髪の少女――シュシュは、数秒沈黙して。
ミレアが、「えっ、えええええ!?」と驚きの声を漏らした。




