↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ばあちゃんの遺品が聖剣だった!  作者: 渓夏 酔月


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

98/109

98.むしり取られる翅

「廻目(まわりめ)が裏切りですって!!!」


 大神官執務室では、雅姫の報告を受けた菊姫が激怒していた。


「現在反乱軍は、防人様を総大将とし、初姫、廻目殿とともに北上中です。その数、およそ六千」


 もの凄い音を立てて、物が散らばる。


 菊姫が机の上の物をぶちまけたのだ。


 女官が報告に飛び込んでくる。


「伝令です! 反乱軍は塩屋関(しおやせき)を越えました。守備兵は無抵抗で関を明け渡したそうです」


「守備隊長を捕らえなさい! 捕えて首を刎ねてしまいなさい!」


 菊姫が怒鳴る。


「そ、それが守備隊も反乱軍に加わったそうです」


「う、う、う、裏切者め! 神都内にいる裏切り者の一族郎党を皆殺しになさい!」


「はっ!」


 そう言って出て行く女官と入れ替わり、次々と報告の女官達が入ってくる。


「坂巻ノ庄の鵺(ぬえ)姫が裏切りました!」


「ぬえ~!」


「梓(あずさ)の庄の萌(もえ)姫が挙兵しました!」


「もえ~!」


「元東ノ庄の侍大将朽木(くちき)孝明(たかあき)殿が砦作成の仕事はないかと来ております!」


「……それはどうでもいい」


「毬(まり)姫様が牢から出してくれ、申し開きがしたいとおっしゃっています!」


「まだ反省が足りないようね。百叩きにでもしておきなさい!」


「羽衣(はごろも)の関が民衆によって破壊されました!」


「何なのよもう!」


 菊姫は椅子から立ち上がり、怒鳴り散らした。


「裏切り者どもを殺しなさい! 反乱を起こした庄を焼き払うのです! 街道筋の庄に命令し、各関所に集まり、敵を絶対に撃破せよと伝えなさい! 成功した庄は、来年の年貢は無しにするわ!」


「はっ!」


 女官達が伝令を伝えに出て行く。


「菊姫様、恐れながら各関所にて敵を迎撃するのは各個撃破されるだけです。兵をすべて神都に集めるのです。そうすれば、我らと合わせ四千程にはなるでしょう」


 雅姫の言葉に、菊姫は鬼のような形相で振り向いた。


「それで勝てるの!」


「これだけでは勝てません。しかし勝負に持ち込むことは出来ます。四千で敵の勢いを抑え、愛姫様にお出ましいただくのです」


「愛姫様に!?」


「今や我らの有利は神都を抑えていることと、愛姫様がいらっしゃることのみ。さらに今は愛姫様の兄上、草安命(くさやすのみこと)様もいらっしゃいます。これに賭けるほかございません」


「雅姫! 神都まで敵を迎え入れると言うの!? それで負けたらどうするのよ!」


「兵力を集中させ、愛姫様のお出ましを頂けば、兵達はきっと奮い立つことでしょう」


「だからそれで負けたらどうなるのよ!」


「神都の城壁の外で戦えば、城壁の守りを生かして戦えます」


「何度も言わせないで頂戴! それで負けたらどうするのかって聞いているのよ! 神都の城壁で負けたらここまですぐじゃない! 嫌よ! そんなのわたしは嫌! 関所に伝えなさい! 絶対に反乱軍を押しとどめなさいって! 出来なければ死罪にするって!」


「……菊姫様……そのような御命令を出せば、関所の兵達が反乱軍に加わる一方です」


「雅姫! わたしの言うことが聞けないの! あんたは黙って言うとおりにしていればいいのよ! 関所の兵達の神都にいる親族を人質にしなさい! 裏切ったら殺すと言いなさい!」


 混迷を極める大神官執務室に、どかどかと波姫が入ってきた。


「菊乃姉さん! わたしにくれるって約束した、母上の領地をいつになったらくれるのよ!」


「波乃……わたしはそんなこと約束したつもりはないわ……」


「……そういうこと言うんだ。わたしを騙したのね!」


「いったい何の話なの……」


「わたし、彼に劇場をプレゼントするって言っちゃったじゃないの! どうするのよ! 嘘つき! 姉さんは噓つきよ! 自分が大神官になったものだから、領地が惜しくなったんでしょう! この、大噓つき!」


 そう言うと波姫は、もの凄い音を立てて執務室の扉を閉め、立ち去って行った。


 何のことだか分からないと混乱している菊姫を見ながら、何者かによって自分達の翅が、少しずつむしり取られていくような恐怖を雅姫は感じていた。


(何者かの手のひらの上で、我々は血塗られた死の舞を踊らされている……)


 自分達がどれだけ抗おうとしても、その何者かの計画通りに、確実に、着実に、滅ぼされようとしている。雅姫は、自分の遠く及ばないその相手に、死を覚悟した。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。